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持ち寄り会

川の床
風に吹かれて
酒、話
旨い、旨いと
喜こび、ころこぶ
酒徒七福神


「愉しさ発見」(1986年作品)より

 ある日、ある晩。飲んで、一気に話しがまとまる。次の日曜日、全員集合。各自、一品持ち寄り、料理を一品つくる宴会。熊さん、八さんの世界に入りたがる人、多し。
 当日、三三五五、いつもの上戸達が、いつもの飲み屋の台所に集まる。
 それぞれ、手に、何だ、かんだと一品ぶら下げ、喜々とした顔、顔、七つ。
何だ、かんだの持ち寄りものは、かくのごとし。豆腐三丁。生湿菜。剣先いか、ピンピン、三ばい、マッシュルーム、二ケース。ツナ缶、サケ缶、各二。六月、旬のまっただ中、明石の桜鯛、目の下、〇・七尺。ゴボ天、エビ天、揚げたて、ホカホカ。日本酒三本。缶ビール、二ケース。スルメイカ五、六枚。日野菜のヌカ漬。白菜のキムチ、鉢に山盛。等々。皆んな、示し合わせたように、重なるもの無し。
 いよいよ、料理。きれいに洗い流がされた、台所は、間もなく、見るかげも無くするであろう、と予想される、面々が、キャキャと喜こびの声を叫びながら、はしゃぎ回る。
 「何にする」         
 「包丁はどこ」
 「家の包丁とえらいちがいや」
 「ガスはどれ使うの」
 「まな板は」
 「先ず、ビール飲もか」
 「そや、料理は、酒飲みながらせんと、旨いもんは、つくれへん」
 「そこの漬もん切って、早よう」
 「もうそろそろ、そこの鍋の火、消して」
 「まだ—」
 見る人。つくる人。飲む人。ボウーとしてる人。何んだ、かんだと、云ってる間に、鴨川べりの床に立派な宴。素人と思える料理も、思えない料理も呉越同舟。宴は、エンエン。熊八達、ワイワイ、オウオウ。その夜は、時間が止まってた。

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