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おかしい話

豆を肴に
うま酒を
おもわず
知らず
飲んだ
赤鬼


「愉しさ発見」(1986年作品)より

 世の中、いろいろとおかしく、愉しい事があるものです。笑いをこらえるのに苦労する程おかしい話かどうか、先ず読んで下さい。
 よく行く飲み屋の女将から聞いた話から。
 彼女の知り合いのお茶屋の老女将は、毎月、一日に、必ず、床の中で、ある儀式をしてからでないと起きないらしい。
 朝、目が覚めるとすぐに枕をかかえ、「枕や思ったら千両箱やった」、と大声で叫び、その枕をほうり投げ、受けとめるやいなや、寝卷姿のまま、玄関まで出て行き、「お福さん、お入りやす」、とちょっと戸を開け、小声でささやく。ささやくやいなや、素早く戸を閉め、一目散で寝床に戻る。この儀式を三回繰り返すと、その月は、幸せになれると信じ込んで、続けているらしい。
 その老女の叫び声に驚いて、様子がおかしいと、救急車を呼んだ近所の人がいたそうだ。
 * * *
 我が親戚のおかしな人の話
 酒を飲んで、ふらふら家に帰る途中。ある家の前につながれた小さなスピッツが、彼を見るや吠えだした。なにげなく通り過ぎようと思ったけれど、あまり真剣に吠える犬に、「何故だ」と思い、彼は立ち止まり、犬を見る。尚さら、犬は大きく吠えだした。彼は威嚇しなければ、と身構え、犬を睨みつける。犬も負けじと、睨み返し、増々激しく吠える。彼もいよいよ引き下がれず、対決!とばかり、犬の鼻先に自分の顔を近づけ、「ウッー!」と一声、歯を喰い縛って唸ったとたん、奥歯が一本、ボロッと欠けて落ちた。
 犬と対決して、歯が欠けた人の話は、人が犬を嚙んだ話しぐらい珍らしい。スピッツを見ると、それを思い出し笑いを堪えるのに苦労する。

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