扶桑化学(4368)についてのメモ(2)
扶桑化学の有価証券報告書の「対処すべき課題」を読んでみる。IR業者に有報作成を丸投げしていないであろう企業の「対処すべき課題」がどんなに雄弁にその企業の課題を物語るものなのか知っておいたほうが何かと他社の有価証券報告書を読み比べる時に良いことがあると思う。どの企業のIRもベンチマークすべきは同社の有報である。
まずは基本方針が述べられている。
当社グループ記の社是、経営信条に則り、収益力・人財(材)力・技術力のレベルを高め、継続的発展を遂げる企業を目指すために、「企業価値」および「企業品質」をより高める企業経営をしていきます。
続いて社是として
「限りなき進歩と創造」
経営信条はというと
一. 信用を重んじ確実を旨とする 一. 技術を通じて国家社会に貢献し 一. 社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く
そのために、ニッチな市場のニーズをとらえ、スピード、コスト、クオリティのバランスが高次元で調和している「金メダル製品」の開発を目指し、顧客満足の最大化を目指していきます。
とまあ、こうである。「社業の繁栄によって従業員の豊かさを築く」というのが特によい。そして、ニッチな市場での「金メダル製品」の志向しているのもよい。要は、ニッチな市場でトップシェアで利益率が高い製品を出していこうとしている会社ということ。
同社には「ライフサイエンス事業」、「電子材料および機能性化学品事業」の2つのセグメントがあるのだが「ライフサイエンス事業については」
ライフサイエンス事業においては、リンゴ酸は、世界市場で年率数%、アジア市場では、さらに大きな成長を見込むことができます。高品質で安全・安心な製品を競争力のある価格で提供し続けていくことを武器に、世界市場、特にアジア地域での当社製品のプレゼンスを高めていくことが重要です。
フマル酸はライバルメーカーの撤退により日本市場はタイトになりシェア拡大のチャンスであると認識しています。その他の果実酸につきましても、用途は拡大しており、当社も各市場において着実にシェアアップを目指します。
加えて、医薬品向け・電子材料向けのより高純度・高品質の果実酸、有機酸を油脂でコーティングしたコート有機酸、一次産業向け製品であるストレスフリー製剤、海外でも採用が進んでいる食品添加物製剤等の高付加価値製品の各市場も非常に有望で、既存品のシェアアップ、新製品の早期の開発・製品化を目指します
電子材料および機能性化学品事業については
半導体市場は非常に高い成長率で拡大してきたものの、スマートフォン市場の成長鈍化、米中貿易摩擦等の影響によって、一時調整局面となり、当社製品も影響を受けました。しかし、最先端技術が採用された半導体の生産においては、当社製品の使用量は増加傾向にあり
中長期的には、5G、IoT、AI、自動運転技術などの実用化も近づいてきており、半導体需要はますます増加すると予想されます。この拡大する需要に応えるためには、供給量を増加させるだけでなく、微細化、高平坦化等の高度化する品質面の要求へも対応する必要があります。感染収束後には、半導体市場のさらなる伸びが期待でき、こうした対応策を施すことで、半導体市場の拡大に合わせて、当社業績の伸張を目指します。
なんというか、ここまで読んだだけで、通り一遍の紋切り型文章の羅列でないことは瞭然であろう。そして、この先、また、上記の2セグメントについての重点的テーマが具体的に記されていくのである。興味を持たれた方はリンク先を当たられたい。
こういう有価証券報告書だとその会社に張ってみたいと思うものである。
同社の「対処すべき課題」の締めくくりはこう。
将来の成長に向けた設備投資は不可欠であると考えて、設備投資の採算性を慎重に検討した上で「償却前営業利益」(営業利益に減価償却実施額を加えた金額)を最重要経営指標としています。併せて、総資産回転率等の資産効率、自己資本利益率等の収益性、自己資本比率等の安全性等、複数の指標のバランスを考慮して経営を進めています。
やっぱり、EBITDA(償却前営業利益)なんだ。そう、製造業を分析するときはこれを理解しておかなくちゃ。
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