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M&A事業者は玉石混交【前編】ー実例から学ぶM&Aノウハウ⑤

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M&Aの現場では実際にどんなトラブルが起こるのか、その乗り切り方、経験者の後悔や反省は―――過去の事例から得られた教訓を、これからM&Aにのぞむ皆様へお届けする連載です。
貴重な事例と支援ノウハウを教えてくださるのは、売り手支援歴20年のプロ・ブルームキャピタル社の宮崎代表です。

宮崎淳平 株式会社ブルームキャピタル 代表取締役社長
ライブドアグループ、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社社楽にてM&Aアドバイザリー業に従事。その他にもプライベートエクイティ投資案件、資金調達案件、及びファンド組成・運営を多数経験。2012年にブルームキャピタルを創業。同社は会社売却に特化した日本随一のファームとして知られている。『会社売却とバイアウト実務のすべて』著者。
▶M&A BANK出演動画 ①「売り手専門アドバイザー登場」②「新体制!M&A BANKに「あの方」が顧問として帰ってきてくれました」③「売り手の味方!あの名アドバイザーに聞くM&Aノウハウ」④「成立したばかりのM&Aを振り返るZOOM座談会



プロに頼んだはずが、不利な契約内容に?


ー譲渡契約書の締結内容に関するトラブル事例はありますか?

ありがちな話ですが、ある売り手社長がかなりひどい条件で株式譲渡契約をしそうになっていたのを、間一髪のところで防いだことがありました。

その社長さんは1年ほどかけて売却準備を進めていたのですが、最後の最後で不安になったそうで、契約直前に私のところへ相談に来られました。

その社長はあるM&A仲介会社にきちんと依頼をしていて、弁護士にも相談していたはずなのですが、私が契約書案を確認したところ、売り手にとってかなり重要な条項が漏れていること、重要な情報を知らされないまま契約を結びそうになっていたことが発覚したんです。


ー具体的にはどのような契約内容になっていたのでしょうか。

どうひどかったかというと、まず一つ目に、その契約には通常盛り込まれるはずの「補償条項」の記載が一切ありませんでした。

補償条項:万が一売り手が契約違反をして、買い手側に損害を補償することになった場合に備え、その補償範囲を限定しておくもの

売り手の立場を守るためには必須の契約条項なのですが、それがまったく盛り込まれていなかった。


二つ目に、売り手社長は税務的にかなり重要な「あること」を知らされないまま契約しそうになっていました。
この契約では、アーンアウト条項と合わせて最低保証条項が定められていたことがポイントです。

アーンアウト条項:対価の一部の支払いに条件を定めるもの
 例)譲渡対価の〇%は、△年後に売上××億円を達成してから支払う

最低保証条項がつくと、「△年後に売上xx億円を達成しなくても、買り手は売い手に最低●億円は支払う」と予め定めることになります。


ー売り手にとっては有利な内容に思えますが。

実は、

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