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笑顔で言われた言葉



比較的近いところに住んであるのでちょっと知っている人、こんにちはと挨拶はする、共通の話題はないので立ち話などはしない。


そんな女性とスーパーのレジに前後で並んだ時の出来事。

『がん』になって免疫が落ちているからなるべく人混みを避けるため閉店近くの時間帯のお客さんが少ない時間に買い物に行っていた。
禿げ頭隠しのニット帽を目深にかぶりマスクをしなるべく人と目を合わさないようにうつむき、わたしは『さぶ』ではありませんよオーラを出していたつもりだったのに・・・、

ソーシャルディスタンスをとって並んでいると前の女性はその知っている人だった。なにかいやな予感がしたからアッチを向いていたのに気づかれていた。

えっ?なに?覗き込んでる????アッチ向いてるけど目の端に動きが見えている。

人違いじゃないの?わたしはあなたを知らないわ みたいな死んだ目をしてみた。が、演技でしか見たことない二度見、三度見をして

笑顔で『あらぁ さぶさんじゃない』って覗きながら言われた。それでもチョット抵抗して死んだ目を続けた。がバレちゃぁしょうがない。


『あらぁ さぶさんじゃない』って今まで言われたことないし、名前で呼ばれたこともない。『え?なんで?なまえで?いつもこんにちはだけじゃない。なんで?』って思ってたら私と共通のことがあったからだと分かった。

まだレジに並んでいるのにその女性が自分の右胸をポンポンとおさえながら『私も取ったのよ、乳がん全摘』って、おーーーーい周りに人がいるからやめてよ。


で、なに?『私も』って言い方
私が『がん』って知ってるの?どうして?なんで?どういう反応したらいいのか数秒思考停止した。それこそ死んだ目になっていたと思う。

だからなに?とは言えるはずもなく、こういうことを自ら言ってくるということは自分の話を聞いてほしいのだなと思い『そうなんですか。いつ?とったの?抗がん剤は?』マイバックに荷物を詰めながら私に話を振られないように矢継ぎ早に質問をしてお互い頑張りましょうね、とお決まりの文句を言いさっさと去った。



私の『がん』をなぜあなたが知っているのか

『がん』になりました。そう伝えたのは家族と親友2人で誰にも言わないでねと伝えた。でも、私は自営業でお客様、関係者には伝えないと休業できない。そうなると人の口はふせげない。私が伝えた人の知人であれば耳にすることもあるかもしれないし、誰かが『がん』という言葉を言えばそういえばあそこのさぶさんって人も『がん』だってよ・・・なんて永遠につながっていきそうだ。

最近『あの人どうしてあるんだろうか?見かけないけれど何か知ってる?』って聞かれた。あらそう?見かけない?あなたが知らないのに私が知っているはずないじゃない(知ってるけど)知ってもどうしようもないのだからさどうでもいいんじゃないの?って言ったら『だけどさぁ・・・』って食い下がってきた『死んだ』って言えばよかったかな(生きてるけど)

自分の事を面白おかしく人にしゃべるのは広まるということを前提にしているのであればいいけれど、他人のことは他人にベラベラしゃべっちゃだめだな。たとえ小さな事でも。



自分も『がん』だから一緒ねという感情はわからない

その知っている人が、ササっと近づいてきて小さな声で『がん』って聞いたんだけど・・・から話に持っていかれたらちょっとは対応は違っていたかもしれない。いきなりちょっと笑顔で『あらぁ~・・・』だからな。ガンひとくくりにしないでくれ。あなたとは共感はできない。



人前で聞こえるように言うことじゃない

びっくりするよね。がん患者がたくさんいそうな病院でもそんな話は大っぴらにしないのに。スーパーのレジで・・・レジ打ってる彼女は私のお客様だから当然知っているのだけどびっくりした顔でその人と私の顔を交互に見ていた。『いやぁあれはないわ』って言ってた。



さぶと分かられるのが嫌なんじゃない

健康体の時は何も思わなかったけれど、がんになって禿げ茶瓶になって・・・自分だけがわかる変化。でも今はマスクをしているからみんなが普通じゃないし余計に帽子をかぶっていると私とはわからないような気がする。どこかで『がん』を小耳にはさんでいたとしてもなんで『こんにちは』で終わろうとしないのかい?気遣いをしない人は嫌いだ。


なんかずーっと心の中でモヤモヤしてたことやっと書けた。

彼女の友達に『がん』の人はいないのかもしれない。やっと見つけた『がん知人』がわたしだったのかもしれない。わかりあえる人が私だったかもしれない。頑張ろうねって言える仲間になれると思ったかもしれない・・・・

ごめんね そこまでまだ心の余裕がなかったのその頃は。今だったら死んだ目だけはしない。




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