新年は新しい器で
木本硝子の器の美しさに酔いしれる
まだまだ寒い日が続きますが皆さんいかがお過ごしですか?
2月2日は節分でしたね。なんと今年は124年ぶりだとか。あやうく忘れて通り過ぎるところでした。皆さん、豆まきや恵方巻きはされましたか?
節分は、文字通り季節を分け春となる「立春」の前日のこと。立春は運気の変わり目といわれており、2021年が本格的にスタートする日なのです。
2月3日から始まる、本格的な年がスタートする新年にオススメなのが、「新しいタオルを使い始める」「新しい下着を身に着ける」、そして「新しい食器を揃える」です。
木本硝子 3代目 木本 誠一さんに聞く
今回ご紹介したいのが、木本硝子。
まさにその「新しい食器を揃える」=「新しい酒器を揃える」ということで、東京台東区に昭和6年から続く下町の由緒正しき硝子の問屋さんです。
日本酒が大好きで、日本酒に合う器を創られた、3代目 木本 誠一さんと対談する機会をいただきました。
高岡 お久しぶりです!今日はお忙しいところ有難うございます! そしてあけましておめでとうございます。
木本 おめでとうございます、今年も色々ありそうだけれど、楽しく日本酒盛り上げて、器を楽しんでいただいて、というようなこと頑張っていきたいですね。
高岡 お願いします〜!
本当に素敵なグラスがズラーッと目の前に並んでいますが、木本さんが日本酒の酒器を作ろうと思ったきっかけはどういうところにあるんですか?
木本 日本酒の専用グラス、もちろんワインにも使ってもいいんですけれども、やっぱりワインだったら、赤ワイン、白ワインとかワインの種類によって、グラスが変わりますよね。お料理も変わるじゃないですか。それから、ワイングラスなんか、素敵な女性が持っているとさらに素敵に見えるというところがあるんだけれど(笑)
高岡 大事ですね〜。
木本 お酒のグラスって陶器とか、升だとか、いわゆるぐい呑みっていう形。どんなお酒を飲んでも香りも味もあんまり変わらない。ワインの種類によってワイングラスの形とか大きさとか変わるということは、味わいや香りが変わるということだと思うんです。ふと思った時があって、日本酒も同じようにできたら面白いんじゃないかって。
高岡 なるほどですね!本当ですよね、ワインもグラスを変えて風味や香りを楽しむのと同様、日本酒も同じような形でいただいてもいいですよね。そういえば最初の自己紹介まだでしたね(汗)木本さんお願いします。
木本 東京の下町なんですけれども、私で3代目の硝子の問屋なんですよ。自分のところで物を作ったり加工はしていないけれど、都内のこの工場だったらこういうのが作れる、こっちの職人だったら江戸切子ができる、という風に。リーデルやバカラのようなグラスも作れるんだけれども、やっぱりちょっとそれとは違うグラスを自分でプロデュースしたいなと思って。言葉でいうと「ファブレス企業」というんですけど、工場を持たないメーカーという形でオリジナルの器をお作りしているんです。
日本酒もグラスで味は変わる
高岡 本当に大小様々、形も婉曲していたりと面白い形のグラスがたくさんありますね。目の前に並んでいるこちらのグラス。以前、木本グラスで楽しむイベントを実施させていただいて、木本さんとはそこからなんですよね。
木本 本当にね、綺麗な方に声かけていただいて、ドキドキしながら(笑) 特に若い方も多かったですよね。
高岡 恐縮です(笑) そうですね、女性も結構来てくださっていて。
木本 そういう方に使ってもらいたいですよね。私が心がけているのは、お酒って選ぶ時に試飲するじゃないですか。食べ物も試食するでしょう? でも器って使って選ぶってことないじゃないですか。見た目だとか、ご予算だとかになっちゃう。それを私は、まず体験していただくと美味しいとか使い勝手がいいとか、五感で感じていただくことが大事だなと。それが感動になるんですよね。
高岡 そうですよね、イベントの時も、実際にグラスをお持ちいただいて、体験していただきましたね。皆さん、同じお酒でも香りが違う!味が違う!って感動されていましたね。そういえば、この間ISETANに出店されていましたよね。
木本 そうなんですよ。他の百貨店さんとか、実はセレクトショップとかもね。もちろん海外も。今はなかなか行けないですが、年間だいたい50日くらい海外へ行って、酒器を海外の皆さんにも使って欲しいなと思って。今はおかげさまで、12カ国ほどうちのグラスを使ってくれているんですよ。今年に入って、ドバイから注文をいただいたり。
高岡 本当ですか!すごいですね。ちなみに海外では日本酒の器はどういう風な引きがありますか?
木本 基本的にはワイングラスがベースにあるんですけれども、酒蔵さんと一緒に行って、お酒の説明をするのはもちろんなんですが、よく言われるのが、「お料理何に合わせますか?」なんですよね。「グラスはどのように使いますか?」という質問が多いんですよ。今回目の前に5種類の器をご用意して、もちろんチェーサー用のグラスもご用意したんですが(笑)お酒のタイプ別にご提案しているんですよ。
グラスによる違いとは?
高岡 では実際にこちらの酒器で実際にいただいてみようかなと思います……!
今回は京都の佐々木酒造さんの「聚楽第」をお持ちさせていただきました。
木本 同じお酒をグラス2種類で飲み比べていただいて、感想を聞いて、なぜそんな風になったかというのを説明しようかなと思います。
試したグラス 左)爽 右)雅
高岡 まず、「爽」のグラスから。香りがお米の深い甘さが感じられて、スッキリ美味しいですね。次に「雅」の広い口のグラスに変えると、香りがより爽やかに、口の中にまろやかに広がる感じがします…!面白いです!!
木本 最初のグラスは飲み口が細くて、高さがあるんでお持ちになって、召し上がる時に、唇の先に当たって、顎を上げて呑むわけです。ということは、舌の真ん中をお酒が早いスピードでスッと入るんですよね。割とスッキリ爽やかな感じが出てくる。
高岡 なるほどですね!
木本 こちらの二つ目のグラスは逆に口が広がっている。ゆっくりと召し上がるんで、あごは上がらないですよね。
高岡 上がらないです。
木本 ということはお酒が舌全体にふわっと広がるんですよ。となると、舌の上っていうのは、塩味だとか、苦味だとか、酸味だとかを感じる部分全体に広がる形。だから、先ほどコメントいただいたみたいに非常にまろやかな感じになるということなんですね。
香りの部分は、グラスの中に溜まっているわけです。鼻にダイレクトにくるので、近くに持って来た時に優しい香りがして、呑むことでスッキリする。器が広がっている方は、香りはほんわりほのかに香って来て、どちらかというと味わいに感覚が行く形。
高岡 皆さん体験してほしいんですけども! グラスによって全然違うのが、こう伝わらないのがなんとももどかしいのですが……
木本 (笑)ありがとうございます。是非是非体験してみてほしいですね。
高岡 ほんっとうに面白いくらい違いますね!五感を刺激するグラス!
木本 海外行くと、それをイリュージョンかっていう風に言われたりしますよ。実はマジシャンじゃないのって……(笑)
せっかくだからワインも試してみよう
高岡 実は私、今日、白ワイン「ムートン・カデ」も持って来てしまいました!
木本 またいいですねぇ。このグラスは日本酒でお作りしてますけれども、ワインも召し上がっていただいても同じことで。楽しんでいただけたらと思います。
試したグラス 左)和 右)華
高岡 では「和」のグラスでいただいてみたいと思います。乾杯。
木本・高岡 おぉーーーーー!
高岡 思わず声が漏れてしまいましたが(笑)香りの広がり方が面白いですし、果実味がすごく感じられます!
木本 ワイングラスと比べて、高さが低いので、香りが立つのがダイレクトにより一層感じられるので、二人で声が揃ったのもわかりますね(笑)なるほどなぁと。
高岡 次のグラスは可愛い、「華」ですね。先ほどのグラスと香りの感じ方が違いますね。酸味を感じますね。
木本 本当に面白いですね。なかなかワインでやらないですけども、ワインも面白いなと。ワインのポテンシャルを引き出しているのは、同じロジックなのかなと。
高岡 こういう可愛いグラスでワインをいただくのもいいですね。日本酒ももちろん変わりましたが、ワインも変わったのが面白いですし、お料理によって、グラスを変えるところがいいですよね。世界が広がるというか。
木本 素材の良さ、ワインの良さを器で組み合わせるというのは、会話が弾んだり、うんちく話したくなったりしますよね。
高岡 楽しいですね(笑)最後に読者の皆さんへメッセージいただけますか。
木本 今はコロナもあってリアルでなかなか皆さんとお会いできなかったりするんですが、硝子屋としてね、器を通して、飲食店、酒蔵さん、そして楽しんでいただける方がもっと喜んでいただけるように、もっと笑顔で召し上がれるように、一生懸命頑張っています。是非、みなさんと一緒に我々が持っている力でさらにこれからの日本を楽しく作って行きたいですね。
高岡 ぜひ!頑張ってまいりましょう!今日は本当に有難うございました。
お酒を愛すということはグラスを愛すということ。器が変わることで、食卓が華やかになり、お酒の香りや風味も一層味わい深いものになります。日本酒を愉しむ際に、器は切っては切れないもの。日本酒の文化を守り、伝えて行くために、酒器と共に楽しみ方の選択肢が広がって行けば良いなと思います。
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