金髪にしたこと③
いざ、美容室。
入学式のあった4月にぼんやりと思い始めてからだいぶ月日が経った、7月も末のこと。
長男の不登校やら、次男の不登校やら、学校の付き添いやら通院やら面談やら色々あって、ようやく行けた美容室。
結婚してこの街に住み始めてからずっと、気が付けば10年も通い続けている馴染みの美容室。
私はこんな性格だから、人と仲良くなったり深い関係を継続していくことを避けてきた。
だから美容師さんとも深くなり過ぎない距離感を保ちながらも、気付けば10年。
たわいもない話を楽しんでいたつもりだったが、なんだかんだで自分の性格にちょっと生き辛さを感じていることとか、子どもがちょっと風変わりなこととかを10年かけて話していた。
だから私が唐突に「金髪にしたいんです」と言ったところで、さほど驚く様子も無く、色々を悟ってくれた様子だった。
「いいね。やろう!」
この店だったら、きっとヘンな金髪にはなるまい。私は美容師さんのセンスを信頼していた。
なにしろ私は金髪についての解像度が低い。理想の髪色も特にない。
だから「金髪にしたい」ただそれだけを伝えた。
「あとはお任せで」なんていう小慣れたセリフは、ちょっと恥ずかしく思えて言えなかった。
でも美容師さんも、そんな私のことを分かってくれているのだろう。金髪についての細かなオーダーは聞いて来なかった。
それがなんだか心地良かった。
そして、ちゃんとお洒落な今どきの「ハイトーン」な感じの色に仕上げてくれた。ありがとう。
似合っているのかは自信がなかったけれど、それでも大満足だった。
鏡に映る見慣れない自分。
リカちゃん人形のような質感になった自分の髪。
美容師さんは、「バービー人形みたいだね」と言ったけど、明らかに日本人な自分の顔面からは、どうしてもバービー味が感じられなかった。
そして、リカちゃんというよりはジェニーちゃんの髪色に近い、私の好きな色だった。
幼い頃、友達が持っていたジェニーちゃんの髪色が綺麗でいいなと思っていたことを思い出した。
因みに私が幼少期持っていたのは、セーラーヴィーナスの人形だった。そう言えば、彼女も金髪だ。大好きだった。セーラーヴィーナス。
そんなことを考えていたら、初めての彼氏も金髪だったことを思い出した。
私、昔から金髪願望あったのかもね。
いい気分で帰宅した。夫はたぶん、「いいじゃん」くらい言ってくれてたかな?覚えていないくらい、夫の反応は正直どうでも良かった。
ただ無事に金髪になれたことが満足だった。
金髪になったよ。私!
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