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大正花暦と、藤の花のこと

これは、大正の片隅に咲いていた花のこと、そしていくつかの断片について。


花野木あやさん主催、「大正浪漫」×「花」をテーマにしたアンソロジー『大正花暦』に参加させていただきました。

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こちらは、2021年9月26日(日)開催の文学フリマ大阪にて頒布され、現在はBOOTHで通販が行われています。通販の残数も少なくなってきているようですので、この機会にぜひよろしくお願いします。

 →通販ですが、10/6で一旦閉めるそうです(2021.10.5追記)


装丁のとても美しい本で、個人的には一部色の変わったロゴがかわいいのと触り心地が良いのが好きです。



わたしは、藤の花をテーマに浅草オペラに身を投じる少女の話を書きました。

藤の花と言えば浅草寺の藤棚がとても綺麗だったなあとぼんやりと思っていたこと、そして『レヴュースタァライト』や『かげきしょうじょ!!』にハマっていたわたしは舞台少女たちの話を書きたいなあと思っていたこと、調べてゆくうちに刹那きらめいた浅草オペラの流行を知ったこと、それらが組み合わさってできたのが、「夜の底に、紫が咲く」でした。

当時の浅草や浅草オペラについては、熱心に通っていた作家の作品のなかや資料のなかで見ることができ、平安時代の史料集めに苦労したことのあるわたしには「大正時代、良いなあ」とほのかに思ったのでした。

なるべく、当時の文化やエピソードに沿いつつ(当時は「オペラ座の怪人」を「オペラの怪人」と呼ばれていたとか、ブロマイドが販売されていたとか)、花澤ハルや白金香子はできあがりました。ふたりには、人気のあった女優のエピソードを散りばめています。

文中では明記していないのですが、冒頭の白金香子が踊っている演目は「サロメ」です。実際に、浅草オペラでかかっていた演目から選びました。七枚の布の踊りは創作ですが、サロメらしいかなと。


その反面、いくつか目を瞑ったこともあります。

それがあとがきでも記載しましたが、当時の浅草の治安です。。実際のところ、夜の藤棚の下のベンチには宿を持たない人々が寝ていたとか。

ハルちゃんは気にせず夜中にべにばら館を抜け出しますが、どうぞ夜のひとり歩きにはお気をつけください。


浅草オペラは関東大震災での被害により打撃を受け、先細りとなり流行に幕を閉じたと言われています。当時、浅草オペラから流行した曲がいくつか残っており、『政略結婚』(高殿円)の「華族女優」にも出てきます。

こちらは昭和の新宿を舞台にした小説なのですが、文化圏がひどく似ているおり、わたしも読んだことのある作品なので、「夜の底に、紫が咲く」を書くときに切り離すのにとても苦労しました。読み返していないので細部が曖昧なのですが、多少なりとも影響は受けていると思います。


この小説を書いているとき、私生活の方がばたばたとする出来事がいくつか重なり、正直、書き終わらないかもしれないと思うこともありましたが、無事に提出することができ、素敵な扉絵もつけていただいて、大変感謝しています。様々なことと結びついて、忘れられない一作になりました。

ありがとうございました。




余談ですが、藤の花と言えば武蔵野ワークスさんが藤の花の香水を出していると知ったので、落ち着いたらお迎えしたいなあと狙っています。(鬼滅ブームで有名になったらしいと後々知りました)




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