モノノケ踊りて、絵師が狩る。

『モノノケ踊りて、絵師が狩る。―月下鴨川奇譚―』水守糸子(集英社オレンジ文庫,2020)を読みましたという話。
http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086803070

感想を書こうと思ったのですが、ネタばれを含んでしまうので、noteに投稿してみることにしました。
※未読の方はご注意ください。

(あらすじ)
舞台は現代、京都。美大に通う詩子と幼馴染の七森は、江戸時代末期の絵師・月舟の描いた妖怪画に封じ込められている妖怪の憑きもの落としをする顔を持っていた。妖怪画に纏わる事件を解決してゆくが、その一方で七森と因縁のある人物の影がちらついてゆき……

詩子ちゃんは天才肌の画家で、芯の強さを持っている女の子なんですけど、強い女の子!というようなタイプでもなくて、どろどろとした執念を内に隠している子だなあとおもいました。
前作の『ナイトメアはもう見ない 夢視捜査官と顔のない男』の硝子ちゃんも、カラッとした空気を纏って執念を孕んでいたことを思い出しました。
幼少のころから思い続けている執念というか、べっとりした感情の残滓というか、そういうものをとても感じる物語でした。

執念に絡めとられそうになる物語なのに、読了感が晴れやかで、二人の距離感が近づいてゆくのがいいなあと思います。

七森が目となり妖怪を見て、それを詩子が描くことで憑きものを落とす。そういう風に憑きものを落としてきたのに、最後の最後で詩子が実は見ることができたことが発覚するのがすごく好きで。
憑きものの生きる世界と人間の世界を行き来することができた幼少の詩子が「あなたがいる方の世界で、生きていくと決めた」のが刺さって、その棘をまだ抜くことができてません。。
幼少の詩子が見つけた「うつくしい」ものが七森の瞳だったというのが、ここに繋がるんだ…!と感動しました。
この箇所、本当に好きです。

個人的に、錺屋さんの物語の外側から指を伸ばし、時々彼らを正しい位置についと戻してゆくような立ち位置が最高だとおもいました。
こういうキャラ好きなんです…!

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