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ValueActからSeven&iへの株主提案

ValueActとは

ValueAct Capital Management, L.P.(以下、ValueAct)は、アクティビスト投資家として知られるアメリカの投資ファンドです。ValueActは、企業の経営に積極的に関与し、株主価値の最大化を目指す戦略を取っています。特に、企業のガバナンスや戦略に対する提案を行い、企業価値の向上を図ることを目的としています。

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基本情報

  • 設立年: 2000年

  • 創業者: ジェフリー・ウッベン

  • 本社所在地: サンフランシスコ、カリフォルニア州

  • CEO: メイソン・モーフィット

  • AUM(運用資産総額): 約132億ドル(2023年時点)

投資戦略

ValueAct Capitalは、長期的な価値創造を目指して、集中投資とアクティブな関与を行う戦略を採用しています。特に、以下のような特徴があります。

  • 集中投資: 少数の企業に対して大規模な投資を行い、これらの企業の経営陣や取締役会と協力して戦略的および運営上の変更を実施します。

  • アクティブな関与: 投資先企業の経営陣と協力し、企業価値の最大化を目指します。これには、取締役会への参加や経営戦略の提案が含まれます。

  • 長期保有: 通常の保有期間は3〜5年ですが、10年以上にわたる投資も行います。

主要な投資先と活動

ValueAct Capitalは、以下のような著名な企業に対して投資を行い、影響を与えてきました。

  • Microsoft: 2013年に20億ドル相当の株式を購入し、CEOのスティーブ・バルマーの退任に影響を与えたとされています。メイソン・モーフィットは2014年から2017年までMicrosoftの取締役を務めました。

  • The New York Times: 2022年に7%の株式を取得し、デジタルバンドルの販売促進を提案しました。

  • Salesforce: 2022年に複数の取締役を任命し、メイソン・モーフィットが取締役に就任しました。

  • Disney: 2023年に大規模な株式を取得し、経営陣と対話を続けています。

最近の動向

  • 2023年のパフォーマンス: ValueAct Capitalは2023年に39%のリターンを記録し、特にSalesforceやKKR、Insight Enterprisesへの投資が成功しました。

  • 日本市場への投資: 2017年以降、日本市場に約35億ドルを投資し、Seven & i Holdingsなどの企業に対してアクティビスト活動を行っています。

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ValueActの具体的な提案内容

ValueActは、2022年2月に「Transforming Seven & i Holdings into Global Champion 7-Eleven」というプレゼンテーションを発表し、セブン&アイ・ホールディングス(以下、Seven & i)に対して具体的な提案を行いました。この提案の主な内容は以下の通りです:

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  • コーポレートガバナンスの改善:取締役会を外部取締役が過半数を占める構成に変更し、戦略を客観的に評価できるようにする。複雑な持株会社の管理構造から、7-Elevenに焦点を当てたグローバルに調整された管理構造に移行する。

  • 取締役会を外部取締役が過半数を占める構成に変更し、戦略を客観的に評価できるようにする。

  • 複雑な持株会社の管理構造から、7-Elevenに焦点を当てたグローバルに調整された管理構造に移行する。

  • 戦略的変革の実施:7-Elevenに真に焦点を当てる大胆な戦略を発表し、非中核事業を制限なく再構築する。Sogo & Seibuの売却を完了し、Ito-Yokadoの分離を発表する。残りの非中核事業から撤退し、コンビニエンスストア事業に専念する。日本国外の7-Elevenの運営を見直し、新たな目標とロードマップを策定する。

  • 7-Elevenに真に焦点を当てる大胆な戦略を発表し、非中核事業を制限なく再構築する。

  • Sogo & Seibuの売却を完了し、Ito-Yokadoの分離を発表する。

  • 残りの非中核事業から撤退し、コンビニエンスストア事業に専念する。

  • 日本国外の7-Elevenの運営を見直し、新たな目標とロードマップを策定する。

  • 株主価値の向上:株価を倍増させ、長期的な企業価値を大幅に向上させる。

  • 株価を倍増させ、長期的な企業価値を大幅に向上させる。

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株主提案後の各当事者の動き

ValueActの動き

ValueActは、Seven & iの取締役会に対して、外部取締役が株主から直接意見を聞くことを許可するよう求めましたが、Seven & iの取締役会はこれを拒否しました。その後、ValueActは他の株主からの支持を得るために活動を続け、2023年には取締役の交代を求める株主提案を行いましたが、これも否決されました。

Seven & iの動き

Seven & iは、ValueActの提案に対して一部の改革を実施しました。例えば、Sogo & Seibuの売却を完了し、取締役会の構成を見直して外部取締役を増やしました。また、2023年には戦略委員会を設置し、グループのポートフォリオ構造と戦略的代替案を検討することを発表しました。

株価への影響

ValueActの提案やSeven & iの対応により、株価には一定の影響が見られました。例えば、2024年4月には、Seven & iがIto-Yokadoの売却を検討しているとの報道を受けて、株価が一時的に上昇しました。しかし、株主提案が否決された際には、株価が下落する場面もありました。

Seven & iのイトーヨーカドー売却の動き

Seven & iは、Ito-Yokadoの売却や分離を検討しており、2027年までにスピンオフを行う計画を発表しました。この動きは、ValueActの提案に応じたものであり、Seven & iがコンビニエンスストア事業に専念するための一環とされています。Ito-Yokadoの売却により、Seven & iは外部資本を活用してスーパー事業の成長を図ることが期待されています。

まとめ

ValueActは、Seven & iに対してコーポレートガバナンスの改善や戦略的変革を提案し、株主価値の向上を目指しました。これに対してSeven & iは一部の改革を実施し、Sogo & Seibuの売却や取締役会の見直しを行いましたが、ValueActの提案の全てを受け入れることはありませんでした。これにより、株価には一時的な変動が見られましたが、長期的な影響はまだ不明です。さらに、Seven & iはIto-Yokadoの売却を検討しており、これが実現すれば、コンビニエンスストア事業に専念するための重要なステップとなるでしょう。

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