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『山田孝之の東京都北区赤羽』がめちゃくちゃ面白い

Amazonプライム・ビデオで気になっていた『山田孝之の東京都北区赤羽』を見ました。見る前は「モヤさま」的な町歩き番組だと思っていたので、非常に軽い気持ちで見始めたのですが、これが大間違い。
今まで見たことない、ガチなドキュメンタリー作品でした。

冒頭は山田孝之の時代劇撮影シーン。クライマックスで首に刀をあて、自害するという芝居でした。しかし、山田孝之はその芝居をするにあたり、「本物の刀じゃないとできない」「死ねない」と言いだすのです。

結局、芝居が出来ず撮影中止。なんと映画はお蔵入りとなりました。

後日。山田孝之はその映画を撮影していた山下敦弘監督を呼び出します。そして、芝居が出来なくなった理由を「今まで自分の軸をもたなかったために、役と自分の境が分からなくなってしまったから」と述べるのです。

そして、清野とおるの『東京都北区赤羽』の登場人物たちが自由に生きていることに感銘を受けたことを山下監督に語り、「自分の軸をつくるために赤羽に住む。それを撮って欲しい」と告げます。

もう、この段階でめちゃくちゃ面白い。私の中学、高校時代は山田孝之主演の「ウォーターボーイズ」「世界の中心で愛を叫ぶ」「白夜行」がクラスの話題の中心でした。
さらに近年、「勇者ヨシヒコシリーズ」を家族で年末年始に一気見しています。もちろん山田孝之が出ている映画も多数見ているわけです。

ファンというほどではありませんが、好きな役者さんであることは間違いありません。そんなら山田孝之の演技ではない部分を見ることができるとあって、2話目も見はじめたのです。

2話目で赤羽にやってきた山田孝之と山下監督。しかし、山田孝之のマネージャーは納得していない様子でものすごい形相で睨んできます。この時点ではまだ本気で怒っているのか、ネタ的に怒っているのか私にはわかりませんでした。

その後は『東京都北区赤羽』の作者、清野さんと合流し赤羽探訪へ。漫画の登場人物たちに会い話をしていく山田孝之。私は「あ、なんか『モヤさま』ぽくなってきた」と思いダラダラ見始めていました。

2話目のラスト、赤羽で知り合った人たちとの飲み会で、山田孝之が締めの挨拶をします。

「みなさんのように素直に生きて、自分の軸を見つけたいと思う」

みんな、拍手。しかし、ひとりのオジさんは手を叩きません。山田孝之が握手を求めようとしたとき、そのオジさんは言います。

「ちょっと漫画読んで感動して赤羽に住んでみるって、お前、赤羽の人たちなめてんのか。赤羽でずっと暮らしたくてもダメで赤羽から出て行った人もいるんだぞ」

「俺たちはたしかに自分に素直に生きてるよ。それでもお前が俺たちと付き合ったからって、お前が素直になるわけじゃねえだろ。お前にその気がありゃ、どこでも普通に生活すりゃ素直になれんだよ」

山田孝之に対し、おじさんは本気で怒ります。そして山田孝之は言い返せません。そこで2話目が終わるのです。

このシーンを見たとき、私はようやくガチなドキュメンタリーであることに気づき、同時に「自分の軸をいかに山田孝之が見つけるのか」を知りたくて最後まで見ようと決めました。

そして夕方から今まで、結局一気見をしてしまったのです。

その後はざっくり

「山田孝之が芝居を10年辞める宣言をする」
「綾野剛と赤羽で遊ぶ」
「おじさんに2回目のガチギレをされる」
「ラストは大団円」

という感じです。
結局、山田孝之は自分の軸を見つけることができたのか。それははっきりとは描かれず、山田孝之自身も語りません。しかし山田孝之は赤羽で様々な人々と出会い、話をし、行動していきました。通しで作品を見ると、表情や言動が2ヶ月弱で大きく変わっていることに気づきます。

そして、今も山田孝之は俳優として大活躍しているのです。

悩み苦しんだ人間が再び歩き出すまで。ドキュメンタリーとしてめちゃくちゃ面白かったです。

同じ山下監督で撮影されたドキュメンタリー『山田孝之のカンヌ映画祭』も今週見ようと思います。



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