見出し画像

【憲法04】経済的自由権

 伊藤塾の授業、2024/4/27で78コマ目(第10章 経済的自由権)まで終えました。学習内容を振り返ります。

今回の範囲

  1. 職業選択の自由(22条1項)

  2. 居住・移転の自由(22条)

  3. 財産権(29条)

 ※ ()内は憲法の条文番号です。

職業選択の自由(22条1項)

 文字通りの職業選択の自由と、職業する上で欠かせない営業の自由が含まれます。なお、営業には「セールス」の意味もありますが、ここでいう「営業」は「営業中」の営業ですね。

 しかし、お仕事の世界では色々な人との関わりを持ちます。完全に自由とはいきません。

目的二分論

 最高裁は、「…個人の経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく…」と、基本は立法側の裁量としつつも、「立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って...」違憲とするとしてます(小売市場事件 百選①No.91)。

 合憲であることを前提とする(合憲性推定の原則)が、一般人の視点で筋が通らないような話であれば、口を挟むよ!って所ですね。その判断の目安は2つ。

(1) 消極目的規制(警察的規制)
 国民の生命・健康に対する危険を防止するためには最小限度の規制が必要という視点です。規制の例は、届出制のクリーニング店、許可制の風俗営業、資格制の医業など。違憲判断の基準は、一般人から見て「合理性」があること(厳格な合理性の基準

 判例は、銭湯(昭和時代)の距離規制と医療類似行為の禁止(それぞれ、百選① No.89、最大判昭35.1.27)。一方で、薬局の距離規制は、他の規制方法があり得ると、この消極目的規制には該当せず、違憲判定(百選① No.92)。

(2) 積極目的規制
 社会的・経済的な弱者保護、環境保護・文化財保護の視点で行われる規制です。規制の実例は、大規模小売店立地法、電気・水道の公益事業、旧郵便事業など。違憲判断の基準は、当該規制措置が著しく不合理であることが明白な場合(明白性の原則)。

 銭湯(平成時代)の距離制限、酒類販売の免許制が合憲とされてます(それぞれ、最判平元.1.20、百選① No.94)。他にもタクシー事業の免許制、タバコ小売り販売業の許可制も同じ積極目的規制で合憲。

銭湯の規制は、消極目的(衛生環境)から積極目的(廃業防止)に変化

(3) 但し…
 消極目的・積極目的で、スパッとは割り切れない規制も出てきているそうです。具体例はまだイメージつかないです。しかし、過去問を読む限りは、とりあえずは、目的二分論をベースに考えておけば良さそうではあります。

居住・移転の自由(22条)

 コロナ禍で「移動自粛要請」(不要不急の外出を控えろ!)なんてのがありました。日本は、諸外国ほど厳しい制約は課されていなかったものの、中々に辛かった記憶が残ってます。

 自由に移動できる。日頃は、その恩恵を意識することは少ないのですが、大変ありがたい権利であります。

Q. 海外渡航は?

 憲法22条の文言は、「居住・移転の自由」ですが、海外も含むのでしょうか?22条1項で国内外を問わない旅行の自由を保障するとする説と、同条2項で保障とする説があります。

 主流は、後述の2項説。が、2項にあるのは移住と国籍離脱で、「海外旅行」も含まれるの?という疑問が残る。ですが、帆足計事件(百選① No.105)にて、2項は海外旅行も含む!と判示されてます。

財産権(29条)

 不可侵と言いながら(29条1項)、公共の福祉!と留保があったり(同条 2項)、公共のために用いることがある(同条 3項)と必要あれば召し上げるよ!とも書いてあるのが憲法の29条、財産権。

 どう理解すると良いでしょうか?

私有財産と財産権

 木を切り出して販売する林業を営む場合を考えてみます。自分が所有する山林であれば、自由に木を切り出して売ることができる。他所様の考えに従う必要はありません(1項:不可侵)。

 しかし、例えば自分の土地に家を建てようと思ったら、地滑り防止地区に設定(地すべり等防止法 第3条)されてて制限されるかもしれません(2項:公共の福祉)。ダムの下に沈められてしまうかもしれません(3項:公共のために用いる)。

 私有財産とその行使についての権利(財産権)は認めらるものの、制限がある。但し、憲法に2項、3項の記載があることで、例えば、財産権について法律ではなく、政令や条例で定めたり、補償なしで召し上げたりはできない権力側への縛りにもなる。

 そう理解することにしました。

判断基準

 上の職業の自由にて「目的二分論」を紹介していますが、財産権については、消極/積極目的では説明できない判例があります。

森林法共有林事件(百選① No.96)

 森林法186条(森林の共有者は、持分の過半数を有しない場合、分割請求できない)は、憲法29条に違反すると違憲判決された事例。

 判旨を読むと、目的二分論は使われず(規制には…積極的なものから…消極的なもの…という記述はあるが)、「規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考慮して決すべき…」とし、行政の「比較考慮」に基づく判断を尊重すべきとしつつも、規制目的と規制手段の「合理性」と「必要性」で、そのいずれも肯定できないことは明らかとありました。

まとめ

 今回は、「経済的自由権」で職業選択の自由(22条1項)、居住・移転の自由(22条)、財産権(29条)を学びました。

 以前、学んだ表現の自由(21条)に比べ、今回の判断基準は緩めです。大きな違いは、経済的自由は、表現の自由に比べ、万一の場合も挽回は可能、かつ、司法側での判断が難しいというロジックでした(二重の基準)。

 経済的自由には、更に目的二分論で「消極目的規制」(死なないようにする)、「積極目的規制」(公平な社会を実現する)に分かれる判断基準が出てきました。だが、そうきれいサッパリに分けられるとも限らない。財産権では、森林法共有林事件のように、「比較考慮」からの「合理性」と「必要性」で違憲判定された判例も。

 今回は、割とすんなり理解できたような気がします。過去問正答率は、テキスト見ながら解いて6割位でしたけれど😅

 次は「人身の自由」です。

この記事が参加している募集

お金について考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?