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【読書ノート】『ハンチバック』市川沙央
書籍情報
出版社:文藝春秋
刊行日:2023/6/22
ページ数:92ページ
あらすじ
第169回 芥川賞 受賞作
「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」
圧倒的迫力&ユーモアで選考会に衝撃を与えた、第128回文學界新人賞受賞作。
井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす――。
感想
2023/7/24(月)読了。
市川沙央さんの処女作。
彼女の定義する「健常者」とは、身体が「健康」なことに加えて、紙の本を読むことができて、セックス・妊娠・中絶ができる人のことだそう。
何ができたら幸せかというのは、十人十色。例えば一般的に「美味しいものを食べている」ときが幸せだと言われるけれど、私が一番幸せなのは読書をしているときだ。
100ページに満たない本だったのでさらっと読めるかなと思っていたが、文章に思い切り殴られた。重度障害者は、「障害者」の枠にすら当てはまらないと言う。彼女は、この物語を書くことで「健常者」になれたのだろうか。
選べることは大切だ。本を紙で読むかkindleで読むか。何の仕事をするか。どんな社会的地位に立つか。
それができないのが彼女の言う「障害」だ。
あの結末は、この物語をノンフィクションにしたくない彼女が、無理やりフィクションとして私たち読者に認めさせるためのものなのだろうか。
印象的だったのは、田中に憐みの目を向けられたシーンだ。
「生きるために、身体を壊していく」――「生きたい」彼女が等身大で書いた渾身のエッセイに見える(彼女はそう思われることを望まないかもしれないが)。生々しい物語だった。自然に「健常者」として生まれてきて、のうのうと生きている私たちには理解できない苦しみ、諦め、怒り、焦り。
この作品が芥川賞をを取るなんて、日本はオワコンだと思った。
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