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灯台のピンスポットライト

リビングから廊下へ出ると“夏”の香りが漂い、拒食症だった一夏と永遠と腹痛に見舞われた一夏を思い出す。切ない気持ちが蘇り、「SUMMER NUDE」のサビが頭の中を駆け巡り、泣きそうになる。







夏と言えば、ドラマ「SUMMER NUDE」 に限る。当時まだ小学生で恋愛なんか何も分からなかったはずなのに、胸がキュッと絞めつけられるような感覚を初めて味わった。だからものすごく記憶に残っている。


あれほど青春が詰め込まれた作品は他にあるだろうか。どんな恋愛リアリティショーよりも染みている。小さな町に海があって、海の家があって、幼馴染みがいて、溜まり場がある。親よりも長く一緒の時を過ごした幼馴染みでお酒を飲み明かして、何でもないようなことをしゃべる。ただただ憧れる。羨ましい。切実に。


全てのキャラクターに芯があって、恋多き甘酸っぱさがあるのに、なぜか今の恋愛ドラマよりも生々しくないあの感じ。“あの感じ”と表現してしまうほど「SUMMER NUDE」は唯一無二なのだ。


前半の恋愛模様が特に好きで、全員の想いが思い通りにいかないむず痒さと、ひとりひとりの強い意志が少しずつ分かっていき、お互いがお互いを理解し始めるところの融合具合がさらに魅力的だ。夏希役の香里奈の髪をおでこからグッと髪をかきあげて魅せるアンニュイな表情がとても良い。


波奈江が残酷なまでに全てが思い通りにいかず、苦しい描かれ方をしているのが、幼馴染みだからこそいっそう苦しさを感じる。朝日香澄への想いにピリオドを打ち、波奈江へ気持ちが移るものの、波奈江朝日香澄への未練を感じてしまい朝日を諦めた後、朝日香澄の時のような深追いをしなかったところが、さらに波奈江の苦しさを感じざるを得ない。でもそれは、まず、香澄がそれほど朝日にとって唯一無二の存在であったから。それよりも波奈江自身にそこまで苦しさが描写されていないのは、波奈江の人柄が素晴らしいからだろう。波奈江を見ると本当に切なくなる。特に朝日から傘を受けとる場面は涙が止まらない。


常にbe coolに振る舞う朝日と、恋愛のことになると目が泳ぎ、動揺を隠せない夏希の対比も儚さがある。あの青春感は表そうとしても表し難いほど愛おしい。山Pと香里奈の表情も込みで素晴らしい。


最終回、砂浜でロマンチックな雰囲気になって愛を誓った後、すぐに場面転換されて車に乗り、いつも通りの言い合いをする感じもさっぱりしていて良い。そして、最後もドロドロとした恋愛ではなく、さっぱりと終わる雰囲気が夏の終わりらしくいい。


月9らしからぬ、恋愛よりも絆ありきで展開されていて、全員が相互扶助的に「幸せになって欲しい」と思い合っている。絆の中にある淡い恋心。絆があることが前提だからこそ美しさがより際立っている。







あの青春感は表そうとしても表し難いほど愛おしい。あんな青春を誰もがしたいと思っただろう。









PS.
港区の賢二さんの人柄も良い。全てを包み込んでくれるお父さん感があって、一見、ポンコツな雰囲気がある描き方をされているが、実は一番地に足がついていて影の立役者だった。











いつだって SUMMER NUDE みたいな恋をしたい。


                                                                          written by F

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