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「坂口恭平日記」日記(1)

熊本市現代美術館で開催された、坂口恭平さんの個展「坂口恭平日記」を観る為に、茨城から熊本へ行ってきた。こんなに長い距離を一人で旅するのは初めてだった。帰宅してから体調を崩してしまって、大分日が経ってしまったが、忘れないうちに書いておきたい。

「坂口恭平日記」が開催されたとき、観に行くのは無理だろうなと思っていた。自分は茨城に住んでいて、気軽に行ける距離ではないし、熊本どころか九州にも行ったことがない。
ところがある日、国内線の航空チケットの格安セール情報を目にして、思わず熊本行きを検索した。これは行けるかもしれない。何度も同じ画面を表示したり戻ったりしながら、こわごわとチケット購入ボタンを押した。

旅行は好きだが、準備が苦手だ。出発前は不安と自己嫌悪で逃げ出したくなる。ギリギリまで支度に追われながら、家を出た。
まずは特急列車に乗って東京へ。品川駅で昼食のおにぎりを買い、京急に乗り換えて羽田空港に到着。空港の雰囲気はどこか懐かしく感じた。
保安検査場を通って、カフェねんりん家へ。ホットバームクーヘンがおいしくて、少しだけ心が和んだ。

この日は風が強くて、離陸が遅れたり飛行中揺れたりした。目的地に近づいて高度が低くなると、一帯に山が連なってるのが見えた。
無事、阿蘇くまもと空港に到着。そこからまたバスに揺られて街中へ。ようやくホテルにたどり着いた頃には、家を出てから八時間以上経っていた。
窓から熊本城が見える。一人でこんなところまで来てしまった——なんて感慨深くなるより疲労の方が、それからこの先二日間に対する期待と気負いの方が上回っていた。荷物を置き、夕飯を食べに街へ繰り出した。

「坂口恭平 生活地図」で目星をつけていた、Pizzeria da Roccoでマルゲリータをいただく。
女一人だったからか、店に入ったとき少し驚かれてしまった。

チーズが惜しみなく乗っていて、生地はもちふわっとした感じでおいしかった。
店内はカップルや家族連れ、会社の集まりのような人たちがいて賑かだった。
ピッツァは誰かと一緒に食べるものだよなと思った。

熊本の街は、新しいものと古いものが同じように息をしているような感じがした。
お城の周りにビルが建っていて、車と路面電車が並んで走っている光景を、当たり前のように人々が歩いている。
ここが、坂口さんが暮らしている街なんだ。
マップを表示したスマホ片手に、夜の商店街を抜けてホテルに戻った。

二日目に続く。


2024/04/12  一部加筆修正

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