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建築(建物)と都市(街)を繋ぐ1階の重要性を説いた本「1階革命」

本(1階革命)

建物における1階の重要性を解説した本です。筆者の田中元子さんは株式会社グランドレベルの代表取締役で、「1階づくりはまちづくり」をモットーに、都市空間や建築のコンサルティングやプロデュースを行っています。

筆者が最初に建築に関わるようになったのは、建築メディアの仕事に従事したことですが、そのことがベースとなり、建築と都市(街)をつなぐ存在としての1階部分に注目し、建物と同時に街の顔にもなる1階(グランドレベル)の重要性を認識するようになりました。

そうした関心から筆者が最初に行った仕事は、コペンハーゲンの先例を参考にした日本初の私的公民館である喫茶ランドリー(喫茶店とコインランドリーの複合店舗)の開設でした。
ランドリーだけではない喫茶店を併設することで、コミュニティースペースを確保して街の新たな交流の場とすることを目指しました。そのためには街路から最も目立つ1階の店舗は、閉鎖的ではなく開放的にする必要があるとガラス張りにして、奥のランドリースペースまで見渡せるようにしました。 

それはハードだけに留まらないソフトの他に、コミュニティーを加味した3要素のデザイン手法による融合であり、そうした結果、地域の人々が交流するコミュニティーのアイコンになったと記されています。

筆者の一貫したポリシーは1階を活用することによる街の活性化であり、店舗はその手段であって決して営利目的ではないということです。さらに利用する住民が、店側からのアプローチではなく自主的に参加することで、筆者が表現する「能動性の発露」が可能となってきます。

最終章で紹介されているベンチプロジェクトでは、街路や公開空地などのパブリックスペースにベンチを設置する際の問題点が起されています。
パブリックスペースゆえの公共性を担保する困難さがあり、「排除アート」と称されるものは公共の場所に設置されたベンチが、浮浪者などのベッド代わりに使われないよう寝転がれないように、途中に手摺などを取付けて防止する策をとっています。
こうした排除は交流する場所の概念とは、対極に位置するものであり、街の再生や活性化への現実的な問題を突き付けています。

こうした課題は、このプロジェクトに限定されず、常に負の側面を含む2面性を内包している現実があります。ただ「排除」側に立てば、街の再生や活性化とは相反するスタンスとなるため、筆者が提唱するのは、こうした負の側面をも包括してしまうような明確なコンセプトとそれに基づく実践が、グランドレベルからスタートして、広範な街の活性化に不可欠であると結論づけています。

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