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ありがとう八重洲ブックセンター

八重洲ブックセンターが好きだ。東京駅から徒歩3分ほどという立地や、窓から見える景色や、最上階のフロアの階段にあるフランシスベーコンのパネルなど、好きなところを挙げればきりがないけれど、何より他の書店では出会えないような本と出会える、個性的な陳列のセンスが好きだ。

そんな八重洲ブックセンターが3月末でなくなってしまうという。近くに用事かあったら寄り、文庫本を1、2冊買ったりする程度で特に売り上げに貢献できていたわけではないのだけど、それを知ったときは喪失感でいっぱいになった。

初めて行ったのは、確か何かの小説で「読書家が集まる場所」だとかで紹介されていて、気になって行ったのが最初だったと思う。(記憶が定かではない)何の小説だったかは思い出せない。大人になるとこういうことが多いなと思う。「何かで読んだ素敵な言葉」や、「誰かが言っていて印象に残ったこと」ばかり積み重なり、記憶を取り出すときにどこから持ってきたのかわからなくなる。

ともあれ、それ以来数年細々と行っていた大好きな本屋がなくなってしまうので、お別れと感謝を伝える気持ちで本を買いに行った。

とても楽しかった。店内は少しずつ店じまいの準備をすすめていて寂しい雰囲気があったし、お気に入りのフランシスベーコンのパネルも全て撤去されていたが、それでも独自の魅力的な陳列は健在だったし、最後だと思うとついあれもこれもと手に取ってしまい、普段では考えられないくらいたくさん本を買った。

最上階からじっくりまわる。美術書、哲学入門書、恋愛小説、専門書、知らない海外作家の美しい装丁の小説、ピアノの楽譜まで。最近弾いていないけど、ピアノが好きだったなぁとふと思う。迷ったものは全部買うことに決めて、お会計をしてもらい、満ち足りた気持ちになった。

お客さんからのメッセージボードのようなものに、「陳列のセンスが大好きでした」というようなメッセージがあって、勝手に固い握手を交わしたい気持ちになった。本当に、私も大好きだった。

新しい本に出会う楽しさをくれただけではなく、そうだ、自分はこういうのが好きだったんだと思い出させてくれるような、そんな場所でした。
ありがとう八重洲ブックセンター。


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