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かわぐちかいじ先生の講演会レポ

NPO市民フェスティバル主催「かわぐちかいじ講演会〜未来につながるマンガ文化を語る〜」に参加させて頂きました。

講演会撮影、SNS投稿許可がありましたのでそちらも投稿させて頂きます。

※天性の方向オンチ力を最大限発揮した結果、道に迷い、15分遅れるという社会人の風上にも置けぬ醜態を晒した為、途中からのレポとなります。

前回はこちら⤵

①マンガを描くきっかけとなった作品。

前回と同じく「完全なる答案用紙」について。

一頭の蝶々の目線で描かれた複雑な親子関係、阻害された子供の気持ちについて、たった五コマで簡潔に説明されている。
小説や映画ではなかなか出来ない静寂、奥ゆかしさ、リズム転換がマンガなら出来ると思った。

実際に描きながら解説して下さいました。
描くスピード速すぎます。
最後の「お父さん……」から伝わる静寂さ。

前回も同じものを描いて頂きましたが、今回はプロジェクターのおかげで大変見やすくなっていました。

②マンガのプロットについて

※コピー用紙の裏にプロットを書いていらっしゃるそう。紙質云々ではなく、コピー用紙を捨てるのが勿体ないから再利用するそうです。

私「地球に優しい漫画作家先生だ……」

ものすごく細かいプロット。

最初にプロットにするのは絵ではなく台詞。
キャラクターの台詞を軸にした脚本を作る。
漫画家さんによっては脚本なしでラフ画を描き起こすけど、自分の作品は登場人物が多く、そこで、間違いがあってはいけないので必ず脚本を作る。
特に連載作品では前後のストーリに矛盾が出てこないように注意している。

そのキャラクターがどういう感情を抱いてるか、どういう立場にいるかを考えないと、お芝居にならないばかりか、お話が続かない。
そのキャラクターの感情によって、周りのキャラクター達がどう影響を受けていくかも考えて台詞を的確に書き起こしていく。

とにかく間違えがないように。
設計図を書いていくようなイメージ。
それでいて面白みのあるお話にしていく。

※ラフ画は自分さえ分かれば良い。
門外不出ですから(笑)
に、ホッコリしました。

私「茶目っ気ある漫画作家先生だ……」

③編集社さんとの打ち合わせ

編集社と打ち合わせをする際は、しっかりめの下描きを見せるようにしてる。

ラフ画と原本比較
ラフ画
ラフ画と原本比較

しっかりめの下描きにするのは、マンガのストーリー展開等を言葉で話したくないから。
しっかりめの下描きの方が編集社さんに伝えやすい。
どの場面に思い込み(かわぐち先生的には間違いやミス)で描いてしまったかどうか、しっかりめの下描きがあれば確認しやすい。
 
編集社さんとの話し合いで特に苦労するのは、コマの割り振りについて。
編集社さんは「分かりやすいように」マンガを描いて欲しいのでコマを増やすべき。
対して自分は「面白くなるように」マンガを描きたいのでコマを増やしたくない。テンポが悪くなってしまう。
その帳尻合わせの結果、やっぱりコマが増えてしまい、一から考え直す事もしばしば……。
そういう時は夜も寝られなくなるほど考え込む。何なら夢に出てくる。
それでも編集社に聞くようにしてる。

※物語を客観的に見る努力、凄まじいです🙏

特に気に入っているコマは、兵馬の旗4巻。 

※興奮のあまりこの直後にスマホを落とした。

建物にいるキャラクター達を上から見るコマは、映画や小説で演出するのは難しく、マンガならではの技法。
 
私「読ませて頂きます……」

④実際に描いてみる。

かわぐちかいじ本人である事の証明として、今から皆さんの前で描きます。
本当は見せたくないんだけど😌💦

私「何て優しい漫画作家先生だろう……」

およそ6分間の実演タイム。
描きながらかわぐち先生の雑談。

眉毛キリッ

色紙にサッと描く作家さんもいる。
自分には下描きが必要なのでちょっと遅いです。

私「そう言いつつ1分と経たず輪郭できとる……」

目キリッ
ササササッ
完成!

人前で描くのは苦手。
プロ根性でスピード重視してしまう。
いつもはもっと遅い。

私「いやいやいや……(見事なプロ技に語彙力消える)」

他の作家さんに絵を描いて頂く時がある。
どんな風に描くからとても気になるから。
例えば浦沢直樹さんは目や眉毛から描く。浦沢さん的に目が一番大事だからとか。
自分は輪郭から描いてバランスを整えていく。バランス重視。

作家によって描き方は全く違う。

⑤質疑応答

3人の方がかわぐち先生へ質問。
作品に関わる質問、政治的な質問。

※どれも考えられたご質問かと思いますが、政治的なご質問とご回答は少しぼかします。
 
質問①
「原作とテレビの映画化について問題が上がっていますが、かわぐち先生原作の映画改変等についてどう思いますか。映画の結末に驚いた」

回答
「極力原作通りになるよう希望したが、国際情勢の問題をそのまま取り入れるのは難しいので、改変を余儀なくされた。改変には無理があったのは分かります。今後は改めてたいと思ったので、実写版沈黙の艦隊は無理な改変をしないように監修をした。監督さん、主演俳優さんが原作をリスペクトしてくれたおかげで、とても良い出来栄えになりました」

質問②
「昨今の国際情勢における核兵器と漫画作品の関連性について」

回答
「政治的な話は極力したくない。ただ一つ言いたいのは民主主義と権威主義のぶつかり合いに感じる。日本は民主主義を選んだ国。民主主義を信じていると言うべきかも。インターネット、SNSによって世界は縮小しているように感じる。世界連邦のような社会が出来上がりつつあるように見えるが、フランス革命のように、民主主義と権威主義を行ったり来たりしている。価値観がせめぎ合っている。私たちはその狭間にいる。どうにか乗り切って欲しい」

質問③
「緊迫感ある場面を表現するお話とても面白かった。このような演出をどうしやって思い付かれるのか。どういったところに着想を得ているのか」

回答
「読者の期待を自分なりに考える。自分もマンガの大ファンだから。フランスで原画展がある。そちらでの原画の飾り方はユニークでコマ割りの良さを最大限発揮するようにしてくれる。フランスはマンガの良さを理解しようとする心遣いが良い。日本以外のマンガはコマ演出はさほど細かくない。フランスでは新鮮だったのかな」

⑥最後に。

マンガを描く際、なぜその話を描くのかをきちんと言語化する。
編集社さんに説明はおろか相談も出来ないから。
分かるでしょ?は相手には分からない。
逆に編集社さんが分かってるよ!と勘違いしてしまうと事もある。
だからプロット、ラフ画、言語化は必ずする。
その過程の果てに真実が見えてくる。
キャラクターが自分に語りかけてくる。
そこまで考えてようやくマンガが描ける。

以上。
今回も非常に濃い、勉強になる講演会でした。
本当に楽しかったです。

これは余談ですが、かわぐち先生の沈黙の艦隊、ジパング、空母いぶきをきっかけに、放射線に関する資格取得しようと思い、試験を受けています。
難しい勉強に挑もうと思えたのはかわぐち先生のキャラクター達に感動したからです。
今回は政治的がメインでしたが、私のように作品の面白や、キャラクターの生き様に感動し、実生活の励みにしている方もいると思います。

まとまりのない最後になりましたが、かわぐち先生のマンガ制作活動を、今後も応援してます🙏

空母いぶき買いましたよ!!!!!





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