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マーケティング部門と営業部門は仲が悪い?

BtoB(法人向け)マーケティングにて「営業との関係がよくない」と聞くことがあります。「BtoBマーケティングあるある」です。

マーケティング部門と営業部門の役割と立場を整理

回答を先に言えば、
BtoBにおいてはマーケティング部門は営業部門の一部機能もしくは補完する目的で作られ、比較的新しい部門である、ということです。

理由は先に営業部門から説明するとわかりやすいです。

営業部門

法人向けサービスを提供している会社組織では営業部門は”主役”です。

営業部門は、新規顧客獲得や既存顧客のフォローを行い、売上や利益を生むことがメインの活動です。
業績に直接貢献する部門のため、一般的に他の部門よりも”立場”が強いです。

マーケティング部門

マーケティング部門は、お客様候補に対しての認知施策や見込み顧客の創出がメインの活動です。
今まで営業部門がやっていた仕事の一部であったりします。ゆえにマーケティング部門は「あればいいけど、絶対必要ではない組織」という認識が一般的です。

実際に独立した組織として「マーケティング部」がある企業は少なく、営業部や営業推進部、営業企画部などの部内に課やチームとして存在していることが多いです。(部として独立していることが機能的かつ効率的であるかは別として)

特に必須ではなかったマーケティング部門ですが、コロナ禍において注目されるようになりました。営業マンが顧客に訪問できなくなったために「デジタルを活用した営業ができないか。だったらマーケティング部門を設置してみよう」となったのです。(「Webを介した営業はマーケティングだ」のようなイメージですね)

それ以外にもお客様のサービス導入プロセスにおいて「Webで検索し比較検討、ある程度候補を絞る」ことが当たり前になってきており、それに対応するために専門のマーケティング部門を設置する企業が増えています。
(インサイドセールス部門については複雑になるので割愛します)

マーケティング部門と営業部門は対立することが多い

マーケティング部門は新しい部門であること、営業部門に従属している場合があるため組織的立場が弱い、というのが前提にあります。

そんな新参者であるマーケティング部門が営業部門にあれやこれや言い始めると、軋轢が生まれることがままあります。

軋轢を生む理由は、その他にも・・・

  • 意味がわかならい言葉を使う

  • 見込み顧への認識が違う

  • 部門の目的や目標が違う

などが挙げられます。
(ほかにもあると思いますがこのあたりでしょうか)
ひとつずつ説明します。

意味がわからない言葉を使う

SEO、ランディングページ、EFO、CVR、CTR、カスタマージャーニー、エンゲージメント、MA、GA4・・・・

営業部門から見ると、これらの言葉がどう自分たちの役に立ち、売上に貢献してくれるのか全くわかりません。

アクセスが月間10,000件に増えても「それおいしいの?」です。
同じ視点、同じ言語で話ができないマーケティング部門は「直接営業もしないのに訳わからんことばかり言って、カッコつけな部門」となってしまうのです。

見込み顧客への認識が違う

マーケティング部門が考える良い見込み顧客(リード)は必ずしも営業部門が考える良いリードではありません。

例えば以下のような違いです。

マーケティング部門:”今すぐ客”ではなくても将来的に大型案件になりそうな顧客、有名企業
営業部門:月内に契約が取れる(もしくは売上が立つ)顧客

マーケティング部門は、「優良なリードをパスしたのに営業が追わない」と思い、一方、営業部門は、「マーケからくるリードは情報収集レベルが多く売上につながらない」と思っています。

日々、月の売上目標達成のために忙しい営業にとっては半年後に案件化する問合せには注力できないのはもっともな話です。
このような状況が続くと関係がどんどん悪化してしまいます。

そもそもマーケ経由の問合せは、営業へ全パスしているケースもあり、こうなってくるとマーケからの問合せは、営業にとっては邪魔な案件と認定され、すべて無視されてしまう事態にもなりかねません。

部門の目的や目標が違う

2つ目の理由にも関連することです。
なぜリードへの考えが違うのか。それは、それぞれの部門の活動目的や数値的目標が違うからです。
この違いの認識を合わせ、調整をしないために対立が生まれます。

マーケティング部門は見込み顧客の創出を目的として、「Webサイトへのアクセス数」「資料ダウンロード数」「セミナー参加数」「問合せ数」が目標となることが多いです。

一方、営業部門の目的および目標は、純粋に売上と利益を生むことです。

会社組織を俯瞰して考えれば、営業部門同様にマーケティング部門も売上と利益貢献が目的となるべきですが、直接受注までの活動ができないために見込み顧客のパスや商談創出までが目的となりがちです。

縦割り組織であればあるほど、それぞれの都合で活動し、それぞれの目的と目標をもとに主張するので、「自分たちの活動を邪魔する」と感じることがあれば”拒否する””対立する”という、結果「あるある」話になるわけです。

結局は相互理解

では、対立はどうしたら回避できるのでしょうか。

結局のところ「相互理解」です。
模範解答です。
それぞれの役割の整理し補完しあう仲であることが対立を解消する一歩です。

顧客の購買プロセスと担当

BtoBの営業プロセスでは、マーケティング部門が上流工程(商談機会創出)、営業部門が下流工程(クロージング)という体制が作れることが理想です。

例えば、自社を知らないお客様に気づいてもらう広告やSEO施策の実行、情報収集レベルの見込み顧客との定期的な関係構築、失注や解約したお客様の呼び戻しなど、直接受注につながらない活動をマーケティング部門が対応することで得手不得手を補完しあえる営業体制を構築することが可能になります。

マーケティング部門は未来の顧客の創出、営業部門は具体的に導入検討に入った顧客に対して契約締結に向けた活動という役割です。


マーケと営業が協力し合う体制を取るメリットは他にもあります。

それはマーケティングと営業の各視点でお客様のことを考えることができることです。

営業マンは、自分が担当顧客を一番理解していると考えがちです。
(顧客を誰かに奪われる恐れがあるかもしれませんが)自分よりも理解していない他人にとやかく言われたくないものです。

残念ながらそれは幻想で、営業マンが理解している”顧客”は、提供するサービスの視界内であることが多く、顧客の本当の課題を理解していることは多くありません。

例えば、面接辞退が頻発している会社の採用担当者に、面接辞退を未然に防げる機能がある採用管理システムを導入したとします。
たしかに課題のひとつを解決できたかもしれませんが、担当営業はお客様採用担当者の課題やお客様会社自体の課題をどこまで理解したうえで採用管理システムを導入できていたでしょうか。

窓口である採用担当者は採用以外にも研修担当も兼任していたらどうでしょう。採用以外の課題を把握しているでしょうか。
そもそも導入先企業が採用を進めている目的や事業を推進するうえでの課題までを理解しているでしょうか。
導入先企業の先のお客様まで考えた提案ができていると自信をもっていえるでしょうか。

逆もしかりでマーケティング部門はデジタル上や数値を介して顧客を見ているため、施策にどうしてもリアリティが出ません。いつも顧客と接してリアルな声を聞いている営業の意見は非常に学びが多いものになります。

このように顧客のことを多方面から考えることで、新しい提案やクロスセルの糸口になりますし、なによりも顧客側から見れば、「親身に考えてくれる会社」と認知され、信頼感を得られることも期待できます。

モノやサービスが溢れ、テクノロジーの進化も早い世の中においても、お客様の信頼を得られることは、他社より一歩先に行くことになります。

マーケットや競合、代替サービスを鑑みて見込み顧客の創出をするマーケティング部門との連携は、営業部門にとっても大きなメリットがあります。

対立しないための具体的なコツ

相互理解を進め対立しない体制を構築するためのコツを3つ挙げます。

お互い理解できる表現を使う

特にマーケティング部門は気をつけるべきでしょう。
マーケティングに携わる身としても、社内の営業マンが理解できない表現を使って情報伝達している、ということはお客様にもそういう”姿勢”になっている恐れがあります。専門用語を使うと”できる人”ぽく見えますが、マーケター失格です。

「誰でもわかる言葉に変換する」
「レポートする数値や情報が何を意味するかを伝える」
「マーケティング施策が売上にどう貢献するか。いつ貢献するかを伝える」

この心がけは営業部門だけではなく経営層へのレポートでも重要です!

お互いの課題を言い合う

営業だから、マーケだから、ではなく「腹を割ってお互い思っていることを言い合う 」べきです。悪口を言い合うのではなく、顧客の信頼を得るにはどうしたらよいか、契約をいただくためにはどうしたらよいか、を建設的に話し合ってみましょう。

基本的なことですが、意外にできていない企業が多いです。
話し合う機会は作ろうとしない限りないありません。(幹部ミーティングや営業報告書会ではお互いの立場を守る話になりがちです)

話し合うことで、敵ではなく味方同士であることを理解できるとよいです!

情報連携し巻き込む

些細なことでも情報連携し、双方を巻き込んでいきましょう。「話しづらいから」「言ってもわらかないから」という理由で情報共有は控えることはやめましょう。共有することで新しいアイディアが生まれることもよくあります。

・イベントやセミナー企画を協力して行う
・営業同行をする
・競合情報や商談情報を共有し次に何ができるか考える
などなど・・・

お互い巻き込むことで「1+1」が3にも4にもなります。

情報連携の留意点

ところで情報連携で気をつけることがあります。

情報自体はメールやチャットで簡単に共有できますが、
部門が違うとどうしても縦割り状態、サイロ化しやすく、気をつけていても情報は分断されがちです。

会社にとっても情報が分断され断片的になっていることは大きなリスクになります。(各部門でA社と取引があるが、会社全体でA社にいくら売上があるのか誰も把握していない、なんてケースは普通にあります)

情報連携の不備で、顧客の課題をしっかりとらえることができずに失注、具体的な検討段階に入っているにも関わらず商談化できずに失注、などの事態が発生することはよくあります。

これらは見えずらい損失です。特に新規顧客については減収減益などの実害がないため、さらっと見逃してしまいます。
(ちなみに受失注分析をきちんとやっている企業はあまり見かけません)

このような損失を生まないためにも情報連携をシステム化することが重要です。

さらにシステム化できても、実運用でマーケティング部門と営業部門が対立していては意味がありません。お客様の課題を解決し、そのうえで対価(売上)をいただくことが目的です。

「営業がーーーー」「マーケがーーーー」と言っていては、目的を達成することは非常に難しいです。

結局は人同士のことなので、会社として目的が同じであるがゆえに
相互理解という模範解答になりますね。実際は非常に難しんですよね。

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