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『マグマ大使』OPバリエーション小考

『マグマ大使』オープニングバリエーション②

『マグマ大使』DVD最終巻には、各巻各話の特典映像に収録しきれなかった、パイロットフィルムやノンテロップオープニング、未使用フィルム(ラッシュ?)などを収録した特典映像コーナーが設けられています。

 その中の「オープニングバリエーション②(未放送版・モノクロ)」というのがありまして。その内容は初期オープニングにスタッフクレジットのテロップが入っているもの。
 脚本:高久進、監督:船床定男、特撮演出:堺武夫/特撮美術:入江義夫というクレジットですから、これは第37~40話のサソギラス&グラニア篇のオープニングであることがわかります。同じ高久脚本、船床監督でもダコーダ篇は特技監督が小嶋伸介ですし、キンドラ篇なら「山形市/蔵王エコーホテル」がクレジットされるはず。またゴアゴンゴン篇では特撮班の照明と造形の担当者が違います。
 怪獣が2話ずつとなる第37話から変更となるプロデューサーも、変更前の瀬戸口智昭ではなく変更後の奥平晃己(それ以前の役職は“演技担当”)がクレジットされています。

 しかしDVD資料によると、初期オープニングは第35話までで、第36話から後期オープニングとなる、とされています。実際に収録されている第36話も、後期オープニングでなおかつプロデューサーに瀬戸口智昭がクレジットされているので、ほかの回のものが紛れ込んでいるわけではなさそうです。そうするとこの第37~40話用初期オープニングはなにこれ!? ということになります。

勝手な仮定(妄想)

 前回の「『マグマ大使』OP、ED小考」でも

>>なんでそんな半端な時期から変わったんだろう?
>>あと1ヶ月待って第4クールからだったらそこで時間帯も変更になるし、
>>わかりやすかったはずなのに。

『マグマ大使』OP、ED小考

という疑問を呈しました。

 本放送終了後に続けて行なわれた1967年7~9月期の再放送でセレクトされた第17~20話のガレオン&ドロックス篇は再放送用の後期オープニングのみが残っており、この本放送直後の再放送では初期オープニング作品も後期オープニングを作り直して放送されていることがわかります。
 したがって、もし第37、38話のサソギラス篇も現在残っているのは後期オープニングですが、これも本放送では初期オープニングで、やはり再放送のために後期オープニングを作り直して放送されたとしたら、さきほどの「サソギラス、グラニア篇初期オープニング」も「未使用」ではない可能性もあるのでは、と考えます。

 でもそうすると「第36話後期オープニング」の存在だけが謎で。前述のプロデューサークレジットから、この後期オープニングは第36話以前のものに間違いありません。「第36話から変更」=「1967年3月放送分から変更」ということで、まぁ納得できないこともなくはない。
 しかしやはりグラニア後篇の第40話、1967年4月放送分から放送時間枠が月曜日夜7時半から同曜日夜7時の“時報時”に昇格してその際にオープニングも一新、というほうが、オープニング変更のタイミングとしてはスッキリするような気がするんですよね。

「月曜日夜7時」という時間帯と同枠再放送

 ちなみにこの1967年4月期の月曜日夜7時は、前年12月からNETで『魔法使いサリー』がはじまっていて、この4月3日第18話放送分から待望のカラー化! というところにわざわざ『マグマ大使』を移動してぶつけているわけです。うーん意地が悪い。
 そして『怪獣王子』制作の遅れを埋めるべく『マグマ大使』は1967年6月26日の本放送終了後も、同年9月まで計12本の再放送を続けます。だから今度は『魔法使いサリー』がますます好評になり、その影響で同年10月からの『マグマ大使』の後番組『ちびっこ怪獣ヤダモン』も苦戦することになったんじゃないのかなあ。

 しかし月曜日夜7時のゴールデンタイムを、たとえそのあとの番組制作が遅れたからといって3ヶ月も再放送を続けるもんかなぁ。でもこの手も子ども向け番組でも、同じピー・プロの『スペクトルマン』もラスト近くでネズバートンの再放送を入れたり、『電人ザボーガー』は1975年1~3月と同年7~9月の計2クールがまるまる再放送だったり、『ゲッターロボ!』なども1975年1月下旬から2月一杯までが再放送だったりと、CXはそこそこの人気番組だと平気でこういうことをやってます。もちろん他局でも『ゴレンジャー』が1年目後半あたりに月一ペース、2年目の夏や番組終了間際に月2本ペースで再放送を入れたりしてますね。
 それどころかよく考えたら、CXというところは火曜日夜7時という時間枠で1975年から20年以上も再放送をし続けていた放送局なのでした。

 しかし当時の民放の雄・天下のTBSは意地でもこういう同枠再放送をやらなかったんですね。制作ペースが追いつかなくて終了した『ウルトラマン』が、もし本放送中に1回でも2回でも再放送で時間を稼げていたら、1967年一杯くらいまで続けられたんじゃないのかなあ。 

第36話オープニング仮定(妄想)

 話を戻して、しかしもし第40話からオープニングが変更になっていたとしたら、DVD収録の第37、38話は再放送オープニング、第39話は第40話のものを流用しておけばDVD特典映像とのつじつまはあいますが、そうなってくると問題なのは第36話の後期オープニング。この存在理由を説明できないかぎり、上記の「時間枠変更の第40話からオープニング変更」妄想は成立しないわけですが。
 もしかして再放送は第17~20話、第21~24話以外に、第33~36話も予定されていて、それを見越して第33~36話用字幕素材で後期オープニングのものも作っておいてあったとか……? うーん妄想がすぎる。
 そもそも再放送されたのはほんとうに第17~20話、第21~24話、第37、38話、第51、52話なんだろうか? じつはストップゴンじゃなくてピドラだったんじゃないか? とか。いやでもストップゴンも後期オープニングだけが残ってるからなあ。
 なにより自分は確認したわけじゃなくてデータが載ってる本を見ただけだからな。せめて新聞の縮刷版ぐらい確認しないと「調べた」とは言えないもんなあ。

DVD未収録の初期オープニング

 逆に、1983年秋からのテレビ静岡17:00~や1984年末からのCX06:00~など、一時期以降の『マグマ大使』再放送で死ぬほど見たオープニングが、じつはDVDに収録されていません。1986年開局直後のテレビ大阪もこの全話変わらない初期オープニングだったと思います。
 DVDに収録されているいちばん古いオープニングは第3話。そのあと第6、7話のあとは、第25話以降のオープニングしか見ることができません。まぁ第17~24話の再放送オープニングもクレジットの中味は信頼できると考えられるので(ガムの役者がちゃんと代役でクレジットされている)、それらを基準に考えてみましょう。
 本篇撮影は第24話までが須藤登、第25話以降が中町(仲町)武となります。つまり監督が土屋啓之助から船床定男に替わったのにともなっての変更でしょうね。本篇照明も同じタイミングで初期の猪原一郎から榑松(くれまつ)良司に交代しています。「死ぬほど見たオープニング」は撮影:須藤登ですから、少なくとも土屋啓之助監督時代のものとなります。
 また第3、6、7話のオープニングでは主題歌の次には7人、そしてその次も5人ものクレジットが一度に表示されますが、さすがに字が小さくて見にくかったのでしょう、第17話以降は主題歌の次は4~5人のクレジットが3枚にわけて表示されています。「死ぬほど(略)」も主題歌の次のクレジットは4~6人×3枚ですから、これは最初期のものではない、と判断できます。

 そして第17話以降のクレジットの出方でいちばんおどろくのは、「プロデューサー(制作):上島一男」とともに最初期オープニングのトップにクレジットされる「特技監修:大橋史典」が、もう第17話以降では完全にはずされてしまっている、ということ。「原作:手塚治虫」よりも前にクレジットされるくらい重要なポストの人じゃなかったんかい。怪獣造形は番組全般にわたってずっとクレジットされ続ける開米栄三ががんばったんだろうなあ。
 ということで、「死ぬほど(略)」にはトップタイトルにまだ「特技監修」が出てくるので、第16話以前のものであるということでしょう。
 あと、「死ぬほど(略)」以外では「編集」のクレジットに“神谷信武”と出る回が見あたりません。ほかの回はすべて“田賀 保”の単独クレジットです。

 ということで、このオープニングは第9~12話のフレニックス篇か第13~16話のアロン篇のどちらか、あるいはその両方のときのものであると推測できます。どこかに保存されているであろう台本のスタッフ欄が確認できたりすれば、DVD特典で欠落しているフレニックス篇かアロン篇の本放送オープニングとして補完できるかもしれませんね。

オープニングバリエーション①と③

 なお、DVD特典映像に収録されているそのほかのオープニングバリエーションですが、①は「改訂版」とか書いてあるけど、これ単なるノンテロップ初期オープニングで、ラストのタイトルと「ロッテ」だけ後期オープニングのものをつないであるだけですよね? こんな形で使われたことなんてあるのかな?
 そして③も単なる後期オープニングの冒頭「わはははは」が欠けているだけのものですよね? 後期オープニングのノンテロップはこの冒頭が欠けたものしか残ってないのかな。ほかのフィルムからいちばん状態のいいものを持ってきて補完すればいいんだろうけど。

おわりに

 数年前の『マグマ』OP、ED妄想を無料記事にしたら、みなさまからの「スキ!」をたくさんいただけましたので、勢いだけで数年ぶりに続きの記事を書いてみました。またハートマークをポチッていただけましたら幸いです。
 なおこれらの考察(妄想)はすべてDVD箱のものを題材としていますので、もし現在のBlu-ray箱にもっと新しい資料がたくさん収録されていたりしたらすみません。でもそんな話もあんまり聞かないしなあ。

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