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『マグマ大使』OP、ED小考

『マグマ大使』という番組

『ウルトラマン』第1話に先んじること13日、“日本初のカラー特撮テレビ番組”として語られる、というよりは、そのこと以外には「手塚治虫原作」ということでしか語られることがないと言ってもいいほどの扱いを受けている特撮テレビ番組『マグマ大使』。
 自分も子どものころに見た記憶があるので、昭和40年代前半にはCX系のなかった地元でも放送したことがあると思われます。自分自身は1983年秋の地元再放送で、当時高価だったビデオにも録画(βII)して全話じっくり観ました。
 自分は基本的に「特撮技術ずき」(ただし昭和にかぎる)というこで「等身大ヒーロー」よりは「巨大ヒーロー」を優先しますので、どちらかといえば「好きな番組」です。

 しかしこの『マグマ大使』という番組は、昔から詳細なデータがよくわからないことで有名で、昔から出た数少ない書籍でも全52話の監督、脚本担当者すらさっぱりわからない状態でした(現在ではDVDやBDに収録された古いフィルムによってだいたい判明しています)。
 なにより昭和50年代後半以降の再放送では、オープニングはスタッフテロップが入らない、あるいはごく一部のスタッフのみの字幕だけが出ているフィルムが毎回繰り返される、という状態でした。

ピー・プロ作品のクレジットタイトルはよくわかんない

 これは『マグマ大使』にかぎらず、ピー・プロダクションのさまざまな番組も似たような感じらしく、やはり1982年春から地元で再放送された『スペクトルマン』は、初期の『宇宙猿人ゴリ』『宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン』のオープニングがすべて『スペクトルマン』に差し替えられていました。
 まあこれは番組タイトルが変わることの方が例外中の例外で仕方のないことでしょうが、オープニングに含まれる出演者の怪獣Gメンの女の子の部分が、わざわざ初期のGメンのころのメンバーに差し替えられているフィルムがあったりして、しかもそれも登場話数がまったく合ってないぐらいランダムに差し替えられたような状態になっていました。
 またエンディングは初期分についてはちゃんと「宇宙猿人ゴリなのだ」が流れましたが、そこに表示されるゲストは該当話数とぜんぜん違っていたりと、かなりカオスな状態だったことを憶えています。
 なにかの都合でオープニングを差し替えたり(『スペクトルマン』の場合は改題)、エンディングは時間の都合でカットされて再放送したあとでまたそれをつなぐときにバラバラになっちゃった、という状態なのでしょうか。
 それでも古いフィルムを使って放送された地元の再放送はスタッフ、キャストのクレジットがあるだけまだマシでした。その後ニュープリントを使った再放送が行なわれた地域では、エンディングはスタッフやキャストがまったく表示されないノンテロップの画像で、なぜか音も「宇宙猿人ゴリなのだ」のメロオケがただ流れるだけというものでした。

『マグマ大使』のエンディングってどんなんだったの?

『マグマ大使』はさらに古い作品ということもあり、自分の記憶ではオープニングが2種類あるなんて本放送当時の記憶がある方にお伺いするまでまったく知りませんでした。そして『マグマ大使』に予告篇を兼ねたエンディングが存在することなど、DVDの特典映像ではじめて知りました。
 いや、そりゃ当時しか見られない予告篇があったんだろうなあ、ぐらいのことは同時期の『ウルトラマン』などの例からも想像はできました。

 しかしスタッフやキャストのクレジットについては、再放送でもなぜか第1話だけ(そしてもしカットされなければなぜか第8話でも)、マグマとガムのロケットがただ飛び回るだけの絵に主題歌が2コーラス流れる部分がありました。
 きっとあれが毎回のエンドタイトルで、そこにスタッフやキャストがズラズラと表示されるんだろうなあ、と勝手に想像していた、本放送に間に合っていない後追い世代のガキんちょでございます。
【2023.9.18追記】
『マグマ大使』DVDには、この主題歌2コーラス部分の映像が「第1話本放送エンディング」として収録されています。しかしたぶんこれは間違いだと思います。理由は後述。

『マグマ大使』DVDの特典映像

  現在『マグマ大使』のDVDやBlu-rayには、ボロボロになった当時の放送用フィルム(でもあらためて見るとそこまでボロボロでもないな)が発見されたものを特典映像として収録されています。そしてDVDは普通にレンタルもできます。なんとありがたい。
 あるときそれを借りてきて特典映像ばっかりガン見していたら、なかなかおもしろいことがいくつも見つかりましたので、それをここでかんたんに整理してみます。

『マグマ大使』の監督、脚本クレジット

『マグマ大使』各回の脚本や監督、特技監督は、DVDの映像特典として収録された、当時の放送用フィルムのクレジットではじめて確認されることとなりました。監督についてはそれまでの「マグマ大使パーフェクトブック」などの書籍で定説とされていた、第1話のみ加戸敏、第2話以降ストップゴン篇までが土屋啓之助(バドラ篇のみ中尾守)、ダコーダ篇以降が船床定男、でほぼ間違いありませんでした。
 ただしピドラと海坊主&カニックス篇では、ダコーダ篇以降の助監督を務めた菊池奛(あきら?)が船床定男と連名で「監督」としてクレジットされています。実績のある方の名前を借りて実際にはほかの人が演出をするケースはよくあることですから、実際にはこの8本は菊池奛が演出を任されているのかも知れません。

 脚本についてはきっとピープロ保存、あるいはマニア所有の台本で担当者が知られている回も多かったようですが、これも現在ではDVD特典でほぼ確定となっています。ただしフレニックス篇の脚本は「高久進/梅木しげる」とクレジットされており、ストップゴン篇の「梅樹しげる」とどちらが正しいのかはわかりません。
 そもそもこの「梅樹(梅木)しげる」というのも、「マグマ大使パーフェクトブック」高久進インタビューに出てくる国際放映プロデューサー梅村幹比古(『忍者部隊月光』『コメットさん』など)の筆名だそうで、そうするとどちらが正しいもなにもないのかも知れませんが。

『マグマ大使』の特技監督クレジット

 いちばん重要な「特技監督」(“特撮もの”なんですから当然です)としてクレジットされているのは、前半が小嶋伸介。それが第33話からのピドラ篇では「特技監督 小嶋伸介/特撮演出 堺武夫」となり、第37話からのサソギラス、グラニア篇以降の回は「特撮演出 堺武夫/特撮美術 入江善夫」というクレジットで固定になります。
 初期はエンディングに監督と連名で特技監督がクレジットされますが、やっぱり第27~32話のオープニングでの「1枚タイトル」がかっこいいですね。しかしどういうわけかテラバーテン篇だけは「特技監督」ではなく「特撮監督」と表記されています。なんでや。

 これは自分の感想ですが、特撮演出が堺武夫になってから『マグマ大使』は特撮のクオリティがちょこっと上がったように感じます。編集のテンポがグッとよくなり、線画合成もバンバン使うようになった印象があります。京都に引き抜かれた小嶋伸介がどんな特撮を撮っていたのかは『怪獣王子』を一度も見たことがない自分はわからないので、両方見てるどなたか、小嶋演出と堺演出の違いをぜひレクチャーしてくださいな。

「予告篇を兼ねたエンディング」のフォーマット

 さて、前述の『マグマ大使』の「予告篇を兼ねたエンディング」は、冒頭に次回のサブタイトルが出て、そのあとは次回の映像をバックにナレーションで次回予告を語り(音楽は決まっていない)、「来週のマグマ大使にご期待ください!」のあたりから音楽も主題歌のコーダ部分(あるいは別テイクの主題歌アレンジ曲)に変わり、まずはその回のキャストが主要6人、続いてゲスト6~10人くらいの2枚タイトルで出ます。スタア順位は基本的には岡田眞澄、江木俊夫、大平透の順のようですが、しょっちゅう入れかわったりしてます。
 続いて監督と特技監督、脚本、録音所&現像所と協力企業、そして最後に「企画 東急エージェンシー」「制作 ピー・プロダクション フジテレビ」「協力 日本特撮株式会社」のクレジットが出て終わります。よく考えてみれば、いままでの再放送では監督、脚本担当者はもとより、制作の「ピープロ」の文字すらどこにも出なかったんだから、ひどいもんです。

 その予告篇の長さはいろいろ。現存する中でいちばん短いのは第39話ENDの40秒足らず、逆に第33~36話ENDなどは予告篇が2分半近くもあります。『トムとジェリー』かっ!(最近の『トムとジェリー』の放送形態はよく知らない)
 ちなみに監督と特技監督、脚本がエンドクレジットに出るのは第2クールまで。第27話ENDからはキャスト2枚、録音所&現像所と協力企業、企画&制作&協力のタイトルのみになります。つまり第3クールからは、監督と特技監督、脚本がオープニングにクレジットされることになります。

『マグマ大使』オープニングのクレジットタイトル

 第3クール途中までのオープニングは、「プロデューサー(制作) 上村一男」、「原作 手塚治虫」とプロデューサー、「音楽 山本直純」、あとは本編、特撮の主要スタッフが2~3枚でクレジットされます。
 このうち1枚目のクレジットに「特技監修 大橋史典」があり、主要スタッフクレジットの文字がかなり小さい(1枚に出る人数が多い)のが最初期オープニングの特徴です。ただし初期は現存する放送プリントが少ない(特にフレニックス、アロン篇は当時のオープニングがまったく残っていない)ので、どのあたりでクレジットのパターンが変わったのかまではわかりません。
 じつはテレビの再放送で流れているのにDVD特典未収録という初期オープニングのパターンもあったりするので、もっと研究が進めばその未収録オープニングの話数特定もできる日が来るかもしれません。

『マグマ大使』後期オープニング

 再放送で死ぬほど見たオープニングは前期版で、後期の怪獣ぞくぞくオープニングを自分がはじめて見たのは渋谷で行なわれた“ウルトラ・マグマ放映20周年イベント”「円谷プロ/ピープロ オールナイト」だったでしょうか。
 そのときのものはノンテロップだったと思うんですが、アロン、モグネス、ガレオン、ドロックス、ストップゴン、テラバーテンという前半怪獣が続々登場、最後にゴアとマグマの光線がぶつかり合ったところに色とりどりの丸がたくさん飛んできて「マグマ大使」のタイトル、続いて「提供 ロッテ」というタイトルが出て「おお、これがうわさの後期オープニングか!」と感動した記憶があります。
 このオープニングの変更時期は、DVD特典映像によると1967年3月放送分(第36話)からとなっているのですが、なんでそんな半端な時期から変わったんだろう? あと1ヶ月待って第4クールからだったらそこで時間帯も変更になるし、わかりやすかったはずなのに。

「再放送版オープニング」の謎

 そしてこの後期オープニングは、最終回のあと『怪獣王子』の制作が遅れた分を埋めるための1クール分の再放送(1967年7月3日~9月25日)にも引き続きオープニングとして使用されています。したがって再放送された第17~24話は本放送と再放送で違うオープニングがついていたと考えられます。DVD映像特典にはそのうち再放送のときのオープニングのみが収録されています。
 そのうち第17~20話の再放送オープニングは脚本や監督、特技監督、そしてキャストや制作までのすべてのクレジットがオープニングに出るめずらしいパターンになっています。これはほかでは最終回のみに見られるクレジットのパターンです。
 しかし第21~24話の再放送オープニングは本放送終盤と同じく、脚本、監督、特技監督、キャスト、制作のクレジットがありません。第2クールまでは前述の「予告篇を兼ねたエンディング」に脚本、監督、特技監督がクレジットされますので、第21~24話は再放送のときも本放送と同じような「予告篇を兼ねたエンディング」が付随していたのかもしれません。
 ではなぜ第17~20話(再放送)と最終回のみキャストまでがオープニングに出るのか。このあたりはなにか特殊な事情で「予告篇を兼ねたエンディング」が付随せず、その分のクレジットをオープニングで出す必要があったのかもしれません。ちなみに第17~20話はガムの演者が違いますが、それがちゃんとクレジットに反映されているので、違う回のオープニングが紛れ込んでいるわけではない、ということがわかります。助監督の名前も船床組の菊池奛ではなく土屋組の五十嵐貞昭がクレジットされている、という点でも裏付けがとれますね。

 なお1967年7月からの再放送は前述の第17~24話のほかに、第37、38話、第51、52話も行なわれているとのことです。なので残りの4本のオープニングについては本放送版か再放送版かの判別はつきません。もしかしたら現在発見されている該当話数については、再放送版オープニングが混在している可能性もゼロではないわけです。
 DVD特典映像の第37、38、51話のオープニングは通常の後期オープニングですが、第52話(最終回)のみ再放送第17~20話と同じように脚本、監督、特技監督だけでなくキャスト、制作までのすべてのクレジットがオープニングに集約されています。はたしてこの最終回のオープニングは本放送版か再放送版か、しかし同じ後期オープニングなのに本放送と再放送でわざわざ作り直すのか……? そしてはたしてその謎を解く鍵は現在まで残されているのか否か……?

「予告篇を兼ねたエンディング」の長さ(尺)の謎

 また、前述の「予告篇を兼ねたエンディング」で当時のフィルム映像が残されているものは約半分(うち数本はモノクロ)、そして音声だけが残されている者が約20本ぐらいあるという状況です。
『ウルトラQ』や『ウルトラマン』は予告篇の映像がほとんど遺っていない(完全な形で遺されているのは『ウルトラ作戦第一号』予告篇のみ)、予告篇の残存状況としては上出来です。しかし視点を変えて、これをスタッフクレジットとしてとらえた場合、それらが残っていない回があるというだけで著作物として失格、とも言えますからそのへんどうなんだ。
 この、短いものは50秒足らず、長いものは2分半にもおよぶこの「予告篇を兼ねたエンディング」。ここからはまだまだおもしろいことが見て取れます。個人誌「TORIさんの特撮放談」を読んでくださっている方からすれば「ああ、またいつものアレか」というやつですが。

『マグマ大使』のオープニングは「私の名はゴア」、後期は「わははははは」からはじまって主題歌1コーラス、ラストの「提供 ロッテ」までで計1分45秒。これは初期も後期も同じ尺です。後年の再放送では「ロッテ」の部分がブチッと切れたりしますが、1980年代のCX早朝再放送ではそこの黒味部分にサブタイトルを表示していました。

『マグマ大使』本篇の長さと予告篇の長さの関係

 そして『マグマ大使』ドラマ部分の尺は……まぁコレがみごとにバラバラ。話数ごとに長さがぜんぜん違う。第39話なんかドラマ部分だけで25分半もあるぞ。それに対して第33話なんか23分半しかない。同じ番組で本篇尺が2分も違うってどんな番組だよ。おおらかにしてもほどがある。『ウルトラQ』『ウルトラマン』なんかどの作品を見ても(ごく一部の例外を除いて)統一フォーマットだぞ。……ん? さっきも第39話とか第33話とかが話題に出てきたよな?

 ということで、DVD収録の各話の本篇タイムと予告篇&エンディングのタイムを調べて並べて見ると、こりゃまたみごとに「本篇が短い回は予告が長く、本篇が長い回は予告が短く」なっています。本篇の長さが違ってもそれを予告篇で帳尻あわせをしています。いいのかそんな作り方で。昔のテレビ番組ってそんなもんなの?

 その合計タイムは、第2クール第26話まではほぼすべて計25分35秒、そして第3クール以降は計26分05秒、となっています(誤差あり)。なので予告篇が発見されていない回も、その長さはだいたい推測することができます。

 つまり『マグマ大使』の第3クール第27話以降は、本篇が30秒長くなった=CMタイムが30秒短くなった、というわけです。このことからも『マグマ大使』の本放送は(ロッテが途中からCMを減らしてもかまわない、と思ったほどの)大人気番組だった、ということがわかります。さらに第4クールからはそれまでの月曜日夜7時半から、同曜日の夜7時という「時報時」に“昇格”するわけですから、これはたいしたものですね。

エンディング?主題歌2コーラスPV(みたいなやつ)

 ここで一度前半の話題に戻ります。第1話の本篇尺はじつは異様に短く、オープニング+ABパート合計で計21分しかありません。せめて23分ぐらいはないとどうにもならないんじゃないの?
 ……ということで、例の「主題歌2コーラス」の2分間って、あれはエンディングのクレジットが乗る背景ではなく、単に尺の足りない分の穴埋めなんじゃないのかな。

 DVD特典映像に収録されている、当時の放送用プリントについていたとおぼしきその2分間には、クレジットではなく単に「マグマ大使のうた」の歌詞が延々と表示されるだけなんですね。それでも第1話は合計23分00秒。たぶん予告篇&エンディングが、この回は2分35秒ぐらいあったのではないでしょうか。
 また第8話にもこの主題歌2分がありますが、第8話はオープニング+ABパートで計22分15秒、「うた」が2分00秒、そして遺されている予告篇音声が1分20秒。ちょうど25分35秒になります。うーんおもしろい。

再放送時の尺など、まだまだ謎がいっぱい

 しかしそうすると、第2クールで本篇が30秒短い第17~24話は、再放送のときにはどうしたんだろう? 直後に第3クール以降の第37、38、51、52話も再放送しているわけだから、なんとか尺を同じ長さに調整しないといけないはずなんだけどな。
 このあたりが前述の再放送オープニングや、再放送のときのエンディングがどうだったか、などの謎につながっていくわけです。しかしその謎が解き明かされる日は、はたして訪れるのでしょうか……?

 そしてもしこのへんの話が、自分が持っていないDVD-BOXやBD-BOXの解説書ですべて語られていたらごめんなさい!

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