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言い放ちたかった言葉

ショーコ「う、うーん。」
リョウタ「はあー。」
 
彼の腕が、後ろからくびすじにまわってくる。
ふふ、幸せな気持ち。
 
そうだ、一応、聞いとこ。
もう、何回、この部屋に泊まったかわからないし。
 

「ねえ、リョウター。」
「うーん? なにー?」


 

「あのさあ、わたしたち、付き合ってるんだよね?」

「え? 違うよ?」



 
は? 今なんて言ったの?
 

「え? 違うってどういうこと!」


 
 わたしの怒りに、ヤバいと思ったのか、リョウタが慌てて言いだす。
 

「だってさ、オレの周りの女で、いちばん女っぽいのが君でさ……。」


 

「な、な、な。な? な!」


 
口をつくのは「な」のみで、正しい日本語が出てこない。
 

無言で服を着る。そして彼の部屋を出る。
もちろん、追っては来ない。
暗い夜道。歩きながら、頭の中は、まだ「な」がいっぱいだ。
 

「好きだったのにな。」


 
こんなみじめな夜、耐えられない。
だからわたしは、タクシーを止めて、行くことにした。
 
 

それから3年後。
私の部屋で、今の彼がシャワーを浴びている。


結婚が決まって、挙式まであと1か月。

今の彼は、リョウタと付き合っているつもりで、サブとしてキープしていた男だ。あの日、タクシーを乗り付けて、女の涙で完全に落とした。最初からとっても優しい彼だ。

 
そんな話も懐かしい。
今は、彼だけが好き。リョウタなんかにしなくてよかったわ。
 

ぷるるると電話が鳴る。
あら、誰かしら? こんな夜に。


 

「はいもしもし?」
「リョウタですけど。」
「間違ってますよ。」
がちゃん。


 
何を今さら。彼がシャワーでよかったあ!
さあ、結婚に向けて、幸せなことだけ考えましょ。
ちょうどここも、来週引き払うしね。
 
 
あのとき、言ってやればよかった。
 

このわたしを、セ〇レ扱いるすんじゃねえ!


 
(このお話はフィクションです)

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