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彼とわたしと秋葉原

大学で、同じクラスなのに、名前を知っている程度の男の子だった。

クラス飲み会で、たまたま隣の席になった。
大人しそうな子、というイメージだったけど、話してみたらおもしろくて、好きなものも同じで、気づけば二人だけで話してた。


飲み会、お開き。
「終電が間に合わないー!」
と、3分の2くらいが駅に走っていった。

残りの3分の1は、朝までコース。
「さあ、二次会行くか―!」
と、ぞろぞろ同じ方向へ歩いて行った。


わたしたちは、そのどちらにも行かなかった。


「まだ話したいな。」
「そうだね。」


どちらからとなく、わたしたちは渋谷から新宿方面に歩き始めていた。
話していて、楽しい。もっともっと話していたい。


新宿方面から、なんとなく市谷に向かい、とうとう秋葉原にたどり着いた。


もう、朝だ。
早朝の秋葉原はカラスがいっぱいいて、ゴミも散らかってて、お世辞にもきれいとは言えない。


あ、朝焼けだ。秋葉原の朝焼けなんて。でも、なんかとってもきれいだ。


足もつかれた。もうここで、楽しい夜のお散歩は終わりだな。
電車が走り始めた音がする。



あれ、手をつないでる。いつからつないでいたんだろう。


「あのさ。」
「うん?」
「今度、ふたりで飲みに行かない?」
「……うん。」



わたしのこころにも、小さな朝焼けが生まれた気がした。

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