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気になる口癖~小説家・勅使河原の苦悩

「うーん。書けない。」

小説家の勅使河原は、パソコンの前で、悩んでいた。困っていた。焦っていた。

原稿が、書けない。アイデアが、浮かばない。
仕方ない。あの若い新担当の編集者に相談するか。

ぷるるる。

「ああ、勅使河原先生、お世話になっております。え。アイデアが浮かばない? じゃあ、noteでも見てみてくださいよ。」

「いや、それは盗作になるのでは……。」

「インスパイアされたところだけチョイスして~。ま、見てくださいよ!ガチャ。」


この編集者は、小池という。アイデアが出ないなど、相談すると、すぐに、

「noteを見ればいい。」


というのだ。嫌な口癖だ。


他の皆さんが一生懸命書いた小説やエッセイなどから、インスパイア? チョイス?

それはパクれということじゃないか?


わたしはそんなことはしない。仮にも小説家を生業にしているのだ。
しないぞ、しない。しかし、アイデアが出ない。
もう一度、電話しよう。

「勅使河原先生? お世話になっております。小説投稿サイトに載せてる素人さんなんかは、よくやってるみたいですよ~。じゃ、noteを見てください。ガチャ。」


やってるみたい、だとう? やってる、じゃないんだな。
適当なことを言いやがって。


「noteを見ろ。」「noteを見ろ。」って、イヤな口癖だ。しかし気になる口癖だ。



小池が担当している、ほかのA先生やB先生も、見ているのだろうか。
小池なら、同じように言っていそうだ。「noteを見ろ」って。
ああああ気になる。先生たちに聞くか? いや、そんな恥ずかしいことはできない。



しかし、何もわいてこない。締め切りは迫ってきている。
ちょっとだけ、note、見てみるか。タイトルだけ、タイトルだけ。
中身は読まなければいい! そうだ、ちょっとのぞくだけだ。


おおおー! タ、タイトルだけでも、まずいかもしれない。
ぱっと見つけた、ひとつのタイトルから、目が離れない。
「ジュリーになれなかった男」か……。


〇〇になれなかった男。うおおー発想が、イメージが広がっていくぅー!
これだ、今だ、今なら書ける、書けるぞー!

勅使河原は、一気に原稿を仕上げてしまった。
――タイトルを見ただけだ。そう、これがインスパイアされたというやつだ。盗作じゃない、盗作じゃない……。

勅使河原は気にしすぎなところがある。他の作品のタイトルだけを見て、自分でひらめいて書いたのだから、盗作とか気にすることは全くないのだが。


「先生~、今回ものすごくいいじゃないですか。特に××が〇〇なんてところが。先生の最高傑作になるかもしれませんね~。」


「そ、そうか。最後まで悩みぬいた甲斐があるな。」


「で、先生、note見たんですか?」



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