映画『ライトハウス』感想(ネタバレ)

ロバート・エガース監督『ライトハウス』を鑑賞しました。うかうかしていたら公開期間が思った以上に短くて焦った……。
元々こちらの映画を観ようとしたきっかけは『ミッドサマー』製作のA24によるスリラーということで……アリ・アスター監督もコメントを寄せていたためこれは凄い映画なのでは……と思い劇場で観ることにしました。
監督は『ウィッチ』という映画も手掛けているということなのですが、私はそちらの方はまだ未見のため近い内に履修したいです。
以下ネタバレだらけのとりとめのない感想。


◆ 異形を蹂躙したいという狂気
年齢差はあるとはいえ言ってしまえばおじさん二人が灯台でしばらく二人で仕事している、ということですけど終始ウィンズローがすごく性的に飢えているというかその性的な狂気を孕んでいる感じがしましたね……。
美しい人魚の幻想をずっと犯したいと考えていると同時に、寝ているトーマスのことも一瞬屋根裏からねっとりした感じで覗き見ていたり。
酔っているときに女性に触るような手つきで撫でたり、あんたを信じてるって言いながら抱えてたりしたところを見て性的な征服欲があったのだろうか……と感じたりしました。そりの合わない上司だったし、鼻をあかしてやりたいとか黙らせたいとかそういう感情があったのは間違いないだろうけど。
終盤で一瞬トーマスが異形(トリトン?)の姿に変わったり人魚に見えていたりしたので、『あんたはもう人間じゃない』的な台詞の通り、ずっとウィンズローにしてみたらトーマスは穢してみたい異形にしか見えていなかったのかもしれない。
最後犬の姿で首繋いで引っ張っていってるの笑ってしまった。いきなり欲望そんな形でぶつけるな。

◆ 狂気と現実の境目
実際トーマスって本当に人間だったのだろうか……?っていうか実在する存在だったのか……?とさえ思っています。
もしあの映画の中で本当に事実だと言えるものがあるとするならば最後にカモメくん達に啄まれてるウィンズローの肉体それだけだと思っていて、オープニングからここまでの話はずっとカナダから罪悪感由来の狂気を引きずり続けていたウィンズローの妄想でもおかしくない、それくらい現実と狂気の境目が分からなかった。
人魚の木彫り人形を見せてお前の秘密を暴いてやった!とトーマスに噛み付くシーンがありますが、あれがトーマスが仕掛けたものには見えないなと思ってて、ウィンズローの妄想でしかなかったのではと……。
終盤、酒を飲んだり物置的なところでダイナミック自慰を敢行したり必要以上に残虐なやり方でカモメを殺めたりしていたので思考的にもうまともでないのは圧倒的にウィンズローだし(トーマスがまともなのかはさておき、あの灯台で生き残る程度の平静さはあったはず)。


◆ 見世物小屋の正方形の覗き穴
上記の通り『ミッドサマー』きっかけでA24を知りこの映画を観た訳ですが、『ミッドサマー』とは本当に対極にある感じというか。
『ミッドサマー』は柔らかな昼の光の中で起こった極彩色の御伽噺を見ているような感覚でしたが、『ライトハウス』は終始淡々と灯台の中で二人の人間が狂っていくという過程を、モノクロでほぼ正方形のアスペクト比という視界の覗き穴から無理矢理見させられている、または大昔の古びたフィルムのドキュメンタリーを独りで暗室で見ているようなじっとりとした気味の悪さがありました。
あとはつげ義春の『ねじ式』とか今振り返ると何となく似た雰囲気があるな~と思わされる。海の話だから?
現実と狂気が美しく混濁している丸尾末広のようなエログロナンセンス的な不気味さも近しいような気がする。こういうジャンルって海外だとどういう位置づけなんだ?

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