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「武術太極拳」と「太極拳」と「WUSHU」

今回は言葉の違いについてです。

この記事を読んで頂いてる方なら今更不要な紹介とは思いますが、僕は「武術太極拳」というスポーツのアスリートとして活動しています。
この「武術太極拳」という言葉は少々長いので僕たち武術太極拳アスリートの間では「武術」と略して話します。
一方で、「武術太極拳」を初めて知る方とお話しするときは「太極拳」と覚えて頂くことが多いです。
特にどちらでも構わないのですが、どうしてそのような違いが生じるか、以下に持論も交えて述べさせて頂きます。

「武術太極拳」とは

そもそも「武術太極拳」とは日本特有の呼称であり、概念的には中国武術全般の総称のようなもの、と思って頂くとわかりやすいです。
その中で特にオリンピック化を目指すための国際競技種目としての「武術太極拳」の種目は主に「長拳」「南拳」「太極拳」の3つがあります。
そして自分はその内の「太極拳」種目の選手です。
その為、自分について厳密に紹介するならば、
「『武術太極拳』の『太極拳』種目のアスリート」
となります。
太極拳という言葉が2回出てくるので少しややこしいですね。

この「武術太極拳」、発祥国である中国では「武術」と呼ばれています。
そして世界へは、「武術」の中国語の発音「WUSHU(ウーシュウ)」の名称で普及しています。
自分たち武術太極拳アスリートの間で「武術」と呼んでいるのはそのためです。

ではなぜ日本だけ「武術太極拳」となったのか。
日本では「武術」という中国武術全般の中でも特に太極拳の愛好者が圧倒的に多いことから「武術太極拳」という名称で普及が進んでいるようです。
加えて中国から伝わってきた「武術」という言葉を日本では「ウーシュウ」ではなく「ぶじゅつ」と読むことができたり、日本での「武道」と呼ばれるものとの差別化の意図もあったのではないかと推測します。

結局なんと呼ぶ?

自分が「武術太極拳の村上僚」と紹介したときに、「太極拳の村上僚」と理解されることが多いのは、おそらく、「武術太極拳」という単語の中で「武術」という比較的意味が広い言葉よりも、「太極拳」という比較的特徴的で限定的な言葉の方が印象に残るため「太極拳の〜」というように理解されやすいのだと思います。
先にも述べたように自分は「武術太極拳」の中でも「太極拳」種目の選手なので、「太極拳の村上僚」となっても全く問題はありません。
しかしこれも先に述べたように「武術太極拳」の国際競技種目には、「長拳」「南拳」「太極拳」の3つの種目があり、むしろこの中では「長拳」が一番選手層が厚く、メジャーです。
そこで僕がもし「長拳」の選手だった場合には、「武術太極拳の村上僚」と紹介した時に「太極拳の村上僚」と理解されてしまったらそこには多少の誤解が生じてしまいます。
そのときは「武術太極拳の村上僚」もしくは「長拳の村上僚」が正確です。

結論、僕のことを覚えて頂く際には「武術太極拳の村上僚」、「太極拳の村上僚」のどちらでも構いません。
しかし「武術太極拳」がよりメジャーになっていくためには「太極拳」だけでなく、「長拳」「南拳」との発展が不可欠になります。
「武術太極拳」の普及のためには言葉の上での認知も必要だと思い、今回このような記事を書かせて頂きました。

「WUSHU」について

ところで個人的には「WUSHU」という言葉も広めたいと思っています。
先に述べたように「WUSHU」が世界で普及している名称になっています。
この「WUSHU」という言葉は、「武術(ぶじゅつ)」よりも他の武道との区別が付き、「武術太極拳」よりも短くて言い易く、「長拳」「南拳」「太極拳」の3つの種目を内包している言葉なので便利だと思っています。

しかし問題はその言葉の知名度です。
「武術太極拳」の知名度が決してまだ高くない中で更に「WUSHU」という現在知名度がほぼ無いような言葉を用いるのは、このスポーツの普及の観点から厳しいでしょう。
したがって「WUSHU」という言葉の普及はもっと先になると思います。

さいごに

言語学者のソシュールは、
「人は世界を言葉によって切り分けて認知している」
と考えています。
単なる名称の多少の違いですが、言葉の上で正しく概念を分けることが「武術太極拳」をより理解してもらうことに繋がり、それが「武術太極拳」の普及への近道になるのではないかと思っています。

この記事を読んで頂いた後に、新たにその方から「武術太極拳の〜」と僕たちのスポーツのことを認識して頂ければこの記事を書いた自分としては嬉しいです。
そして将来的には「あのWUSHUの〜」と紹介されることも夢見ています。

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