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おいしいの不思議

「おいしい」と感じたとき、
私の口角は上がり、思わず天を見上げてしまう

あぁ、神様ありがとう…!
今日という日を生きられて幸せです…!

さすがにそんな大それたことは思わないのだが、
目の前のおいしいに出会えたしあわせを噛み締めながら
なぜだか視線は天井と壁の交点を見つめている

「おいしい」に出会ったときは決まってそうなのである

目の前に置かれたうつわの上のあまぁいお菓子、
あるいは湯気の立つあたたかいごはんを目の前に、
自宅ならば両手を合わせて、外食の場合は小さな声で
「いただきます」
と唱えてからひとくち食べる(あるいはかぶりつく)

そう唱える前にすでに目で味わっているものだから、
私は「おいしい」と分かっているものを目の前にして
「待て」ができる聡明なお犬さまよりもできた人間ではない

「いただきます」を唱えた後はすぐに「おいしい」を口に運ぶ
そう、必ずすぐに

写真を撮るときもたくさんは撮らない
多くとも2、3枚のうちに納得がいくものを撮る
「おいしい」が冷めてしまわないうちに
「いただきます」の前に

そして、この時ばかりは淑女としての振る舞いを忘れて
目の前の「おいしい」に最大の敬意を表して
思い切りよく口を広げて食べる

だからどうか、目の前にいるあなたには
あなたの「おいしい」に集中していてほしい

ひとくち食べた途端に鼻腔を擽る香りも、
舌が感じるうまいも私の口角をきゅっと釣り上げる

ついでに言うと、そういったものを食べるときは
安心して心地よくいられる空間、あるいは人とともにいる

なぜだかこれは必ずセットになっているのだから不思議である

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