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サブスク長女

いつでもどこでも家族の様子が確認できます!!

ト云うパーソナルサブスクチャンネルのサービスが出来てから何年経つだろう?

波野波夫にはまったく関係がないコトだと思っていたが、長女の誕生を機に入会するコトにした。

サラリーマンの彼にはいささか痛い出費だったが、可愛い娘の成長を見守るためだと思えば月々五万円は安いモンだった。

イヤ、やっぱり高いか?

そう思った波野は妻の波江に内緒で契約した。月々の契約更新も波野自らの手で行っていた。

面倒臭いけど仕方がない…。

パーソナルサブスクチャンネル。通称、PSC、パスコは、ほとんど目に見えないマイクロドローンが、見守る本人の気にならない距離で、終始、ト云っても契約時間内だが、撮影した映像を契約者に送るシステムである。契約者は、その映像を専用のパッドで見るコトが出来る。契約によっては双方向で会話も出来る。

娘の波子がしゃべれるようになってからはコチラの契約に切り替えた。さらに料金はかさんだが、可愛い娘のためである。

波夫は今では古いタイプのサラリーマンらしく兎にも角にも日本中を飛び回っている。

そんな人間は今どき珍しいのだろう、社内では重宝がられて、ますます忙しく日本中、時には世界中を飛び回る羽目に陥っている。最近は娘の波子にもほとんど会っていない。

光陰矢のごとし。

波子が結婚するコトになった。

が、波夫はサハラ砂漠に居る。もちろん、仕事だ。どうしても断れなかったのである。娘の結婚式だと云うのに。お前は昭和のサラリーマンか?

が、波夫には、パスコがある。コレさえあれば、世界中のどこからでもおめでとうが云える。

波夫はパッドの画面に向かって何度も練習した。

おめでとう波子…。

そして、遂にその瞬間が来た。

司会者が波夫を紹介する。

では、お父様。遠きサハラ砂漠から愛する波子さんのために一言どうぞ!!

おめ…。

画面が不意にブラックアウトした。

えッ!?

波夫が、今月の料金を支払っていないコトに気づくのはもう少し後のことである。

取り敢えず、波夫はサハラ砂漠で叫んだ!!

おめでとう〜!!

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