うつ病持ち設備設計が設備について熱く語るぞ:1.空調設備とはいったい?
どうも、沖やんです。
この章では、空調設備とはどんなものかを説明します。
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暑い日に建物が涼しい理由
夏の暑い日、屋外は当然のように日差しがたっぷりで暑くなっているが、ひとたび建物内に入ると、とても涼しくて快適でホッとすることがあるでしょう。
それは建物内が適切に空調されているから、というのが簡単な理由ですが、それを詳しく説明すると、熱の原理から話すことになります。
熱の原理
建物は、屋外や地面に接する屋根、壁、床、窓などを介して常に熱の移動が起こっている。その熱の移動によって、室内が暑かったり寒かったりするのですが、熱(エネルギー)の移動は温度の高い方から低い方へ移動する性質があります。
熱は、熱伝達→熱伝導→熱伝達の3過程を経て移動します。これを熱貫流と呼びます。
熱伝達とは、熱が空気から壁体(固体)の表面へ、また壁体(固体)から空気へと伝わっていくことをいいます。
熱伝導とは、熱が壁体(固体)の内部を伝わっていくことをいいます。
熱貫流は壁体(固体)を挟んだ一方の空気から反対側の空気へと熱が伝わることをいいます。
熱の伝わり方は、固体(材料)によって変化します。固体(材料)の種類による熱の伝わりやすさを数値で表したのが熱伝導率(W/m・K)※1 といいます。一般的に、金属は熱伝導率が高く、非金属(木材やプラスチックなど)は熱伝導率が低いです。また空気を含んだ素材(グラスウールなど)は熱伝導率がより低くなります。固体(材料)の種類や厚さによる複合的な状態での熱の伝わりやすさを数値で表したものを熱貫流率(U値、W/㎡・K)といいます。
空気調和について
建物は基本的に屋根、壁、床、窓などで構成されていますが、それらで囲うだけでは快適な空間を生み出すことはできません。もちろん屋外の暑い(寒い)空気をそれらで囲ってシャットアウトすることは必要ですが、それ以上に室内の空気をちょうどいい具合に調整しないと快適な空間は作れません。そこで空気調和設備の出番です。
空気調和とは、温度を調整すること、湿度を調整すること、新鮮な空気を導入して汚れた空気を排出することを総称したものであり、それらを行う設備を空気調和設備といいます。
空気調和設備と一言で言ってもその方式は多種多様です。大きく分けると「対流式」「伝導式」「放射(輻射)式」の3つに分かれます。
対流式はエアコンやファンヒーターなどのように、最も一般的に使われる方式で、温風・冷風を直接室内に放出し、強制的に空気を対流させて室温を調節します。急速に冷暖房が効きますが、熱だまりが生じやすい方式で、暖房時は天井付近に熱がたまるので足元に冷えを感じたり頭がぼーっとする感じがしたりなど、不快感を与える短所があります。また室内のホコリやアレルギー成分を一緒に巻き上げてしまう問題もあります。施工性やコスト面から最も採用されやすい方式です。
伝導式は床暖房やホットカーペットのように、部分的ではあるが、直接熱媒体が身体に触れることで暖かさが感じられる方式です。この方式では、小型の暖房機器であれば、イニシャルコスト(機器代)・ランニングコスト(電気代)を抑えることができるほか、部屋面積の7割以上に放熱体を敷設して放射効果を利用すれば、空間を温める主暖房にもなります。
放射(輻射)式は、空気を介さず、温度の高い方から低い方へ熱が伝わる、放射現象を利用して、室内に暖かい面や冷たい面を設けることによって、温風や冷風が直接体に当たることなく、心地よい暖かさや涼しさを体感させる方式です。ただし、部屋全体の冷暖房として利用すると、イニシャルコストが割高になり、快適な温度になるまで時間がかかるなどの弱点があるため、通常はエアコンを補助的に併用することが多いです。
それぞれの空調方式を用いて、各居室やエリアごとに空調機器を設けるのが個別方式、建物全体を1つの機器(システム)で空調するのがセントラル(中央)方式です。セントラル方式は、廊下・トイレなどでも温度ムラが少ないため、高齢者の健康に配慮するような建物に向いてますが、大型空調機や大口径のダクトが必要になるので、設置場所、納まりの検討をより要します。また、マルチエアコンのように、1台の室外機に対して複数台のエアコン室内機を接続する方式もあります。
空調(空気調和)設備をまとめると、温度調整、湿度調整、新鮮な空気の導入・汚れた空気の排出を行う設備(機器など)を指し、それらがちょうどいい室内空間を作り出しているのです。
様々な空間に対して適した方式の空調設備を用いることで、最低限のコストで最適な空間を作り出すのが設備設計の仕事です。
※1 K:ケルビン温度、絶対温度をいう。273.15Kは0℃に相当する。
※2 建築設備パーフェクトマニュアル 集合住宅・オフィスビル編 エクスナレッジムック より引用