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うつ病持ち設備設計が設備について熱く語るぞ:4.建物と水の関係

どうも、沖やんです。
この章では、建物にかかわる水の設備を説明します。
序章はこちら

水はどこから来てどこに行くの?

人は、水や食物を口から取り入れますが、それらは最終的に尿や便などで排出されます。水や食物を安全に摂取できる環境を作り、尿や便を安全に排出させることが、建物における給排水衛生設備の使命です。
具体的には、清潔な水を水道から建物に取り入れて、適切な衛生器具を必要な個所に設置し、適正な温度の湯を供給して、使用後の水・湯を安全・衛生的に確実に排出することです。

まず清潔な水は、一般的には河川の水を浄水場で浄化して、道路などの地中に設けられた水道管を通って建物のそばまで来ます。浄水場からの水道管は上水といいます。道路から敷地に水道管を引き込んで、建物内の各所に上水が供給されます。上水を供給することを給水といいます。

湯を供給するには、水を加熱する給湯器が必要になります。都市ガス・プロパンガスを燃料とするものはガス給湯器、電気で直接加熱するものは電気給湯器、ヒートポンプの原理(2章を参照)で加熱するものはヒートポンプ給湯器といいます。(給湯の仕組みは5章を参照)

水道管から引き込まれた水、給湯器でつくられた湯を人などに供給するもの(蛇口、便器、シャワーなど)を総称して衛生器具といいます。

使用された水・湯はそのままでは河川に戻せません。河川の水質汚染の原因になるからです。建物から排出された水は下水といいますが、公共下水道が整備された地域では、下水は下水処理場に運ばれてそこで浄化処理してから河川に排出します。公共下水道が整備されていない地域では、建物の敷地内に浄化槽を作る必要があります。その浄化槽で浄化処理してから敷地外、そこから河川などに放流します。

これらの設備は様々な法律で規定があり、その基準を守った設備とすることで、水を安全に、安心して利用することができるようになっています。

給水の仕組み

先ほど「上水を供給することを給水」といいましたが、一戸建てから高層マンション、商業施設から大規模オフィスビルまで様々な建物がある中で、どの建物でも当たり前のように清潔な水が適量で供給されていますが、その給水方式は様々です。

大きく分けると、道路の水道管(水道本管)から直接給水するのが水道直結方式、受水槽(大型のタンク)に一度貯めてから給水するのが受水槽方式です。
水道直結方式は、水道本管の圧力変動から建物規模に制約があるため小~中規模建物で採用されることが多いです。一方受水槽方式は水道本管の圧力変動の影響を受けにくいため、中~大規模建物で採用されますが、受水槽の設置スペース確保と水槽の衛生面の管理(メンテナンス)が必須となります。
給水方式の特徴の表を下記にまとめます。

給水方式の特徴 ※1
水道直結直圧方式の系統図 ※1
水道直結増圧給水方式の系統図 ※1
高置水槽方式の系統図 ※1
ポンプ直送方式の系統図 ※1
受水槽の構造 ※2

排水の仕組みと工夫

使用した水・湯の排水は、基本的に重力を利用して排水しています。というのも、この排水にはトイレからの汚物、キッチンからのゴミや食べ物クズ、浴室からの毛髪などが混ざっているために、ポンプでくみ上げることが難しいからです(地下階からの排水くみ上げには専用のポンプを使うが、一般的に排水のポンプくみ上げは局所的にしか行わない)。
排水は重力を利用するのですが、汚物やゴミが混ざっていたり、害虫や細菌などが混ざっていたりするので、それらが建物に悪影響を与えないように、排水管には様々な工夫があります。

トラップ

キッチン・洗面台の排水口の下には、配管がS字に曲がりくねっていたり、出っ張りがあったりしますが、それらは全て排水トラップと呼ばれるものです。
トラップは下水管内の悪臭や、害虫などの侵入を防ぐ目的で設置されています。配管を曲げてトラップを作り、そこに水を溜めて悪臭・害虫の部屋への侵入を防いでいます。便器の水たまりもトラップの役割をはたしています。
キッチン・洗面台で溜め洗いした後の排水では、サイホン作用でトラップの水が流されてトラップが切れる(破封する)ことがあるので、その時は水を少し流すとトラップが復活します。また長期間不在となるときは、排水口に栓やテープでふさぐようにしましょう。

排水トラップの構造 ※1

通気管

排水管の内部は、通常時は空気が入っていて、そこに水が流れると配管内部の空気も同時に動きます。2階以上からの排水が排水竪管(階の上下を貫通する管)を流れ落ちるときには、配管内の空気が激しく上下しています。その配管内の空気の流通を良くしないと円滑な排水に影響が出るため、排水管と並行して通気管を設ける必要があります。実際に見かける機会は少ないですが、排水を確実に行うためには必要なものなのです。

清潔な水を衛生的に建物に取り入れて、汚れた水を安全・確実に排出する計画を立てるのも設備設計の仕事です。

※1 図説建築設備(学芸出版社)より引用
※2 三菱ケミカルインフラテック(株)(https://mchem-infratec.com/products/)より引用

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