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「私が妻で、彼女が夫」

結婚をする。
彼女がうちに転がり込んできて始まった同棲を、3年と2ヶ月続けた。そろそろ頃合いじゃないかと、話し合って決めた。
2024年現在、役所でもらってきた婚姻届の用紙には、「夫になる人」「妻になる人」という欄がある。
悩ましいところだ。私達の関係を、そこへ適切に記入する方法はない。

私はFtMだ。生まれが女で、自認が男で、指向はパンセクシャルで、テストステロンと乳房切除で加療した身体を有していて、性別関係なく服を着る。生まれの性を隠し、男性として生活している。
彼女はMtXだ。生まれが男で、自認がフルイドで、指向はアセクシャルで、持病のために身体的治療ができなくて、中性的な服を着る。自認の性を隠し、男性として生活している。女に生まれたかったのだと、代名詞は彼女がいいのだと、私にだけ教えてくれている。

傍目に映る私達は、セクシャルマイノリティの中ではマジョリティである、ゲイのカップルだろう。
しかし、私達はマイノリティの中のマイノリティだ。

私達は婚姻届を提出する。戸籍が女と男なのをいいことに。
これはささやかな反抗だ。婚姻制度をセクシャルマイノリティが濫用する、という。
私達を「正したい」ならば、同性婚から戸籍制度まで、全てを覆してみせろ。

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