バーチャル美少女受肉と身体完全同一性障害と性同一性障害について

……なんて大言壮語を題したが、VR界隈は門外漢だ。TLでちらちら流れてくる程度の情報しか仕入れていない。私の認識が間違っていた場合、以下の文は全くの見当違いも甚だしいが、たぶん合っているはずと仮定して話を進める。ついでに言うと精神医学も発達心理学も神経科学も門外漢だ。何を修めたわけでなく、好奇で書籍を買い漁る類の、単なるいち当事者に過ぎない。

結論から言うと、「新たな認識身体を自己へ追加することで、後天的な身体完全同一性障害が生じるのではないか」、と考えている。

私は性同一性障害・FtMだ。……主観としてはMなのでそう書く。現在、ホルモン療法を2年半行い、乳房切除を済ませている。初対面の人からは童顔の男性と認識されるので、そのように生活している。

そして私は、性同一性障害は身体完全同一性障害に内包されると考えている。私が有している認識身体と物理身体の齟齬には、生殖器のみならず、声域、身長、骨格、体型などの、広義の身体的性別が含まれているからだ。

そのうち、現代の医療で解消できるのは、性別適合手術による生殖器と、ホルモン療法や整形手術による声域と体型のみだ。それらも、認識のそれと完全に合致する領域まで持っていくのは至難の業だ。

身体完全同一性障害の症例としては、四肢の切断を望むものが多いと聞く。ヒトの物理身体における先天的四肢欠損と同程度の割合で、認識身体にもそれが生じ、しかし伴った物理身体にはそれが生じず、結果として齟齬が起こるからではないか。

恐らく、世に在る「体型や容姿へのコンプレックス」のいくばくかは、この身体完全同一性障害なのではないか、なんてことも考えている。
私の場合、身長が11cmほど足りず、体型が一回り小さいせいで、常に猫背で生活しているような感覚が生じていたり、目測を誤って、伸ばした手が届かなかったり、階段を踏み外したりする。逆に、人混みをすり抜けて歩くのが上手かったりする。
アンドロゲン投与の作用である体型変化は、食事とワークアウトでの調整が可能だが、声域は低くなりすぎて、綺麗に出るのは認識のオク下という有様だ。

――話を戻す。
同様にして、認識身体も性分化を遂げ、しかし伴った物理身体とは別の性へと分化したために、性同一性障害が起こる。そういう仮説を、立てている。

性分化は、第二次性徴にて決定的な分断を迎える。「子ども」が「男」と「女」に引き裂かれていくあの現象が、ひとつの人格の中で起こる。冒頭で引用したツイートの通り、「壊れる」のだ。

この現象は、筆舌に尽くし難い苦痛だ。VR技術と文化の発展が、この苦痛を生む可能性をはらんでいるならば、ささやかながら警鐘を鳴らしたい。

そして同時に、身体完全同一性障害の当事者にとっては、苦痛を減じることが可能ではないか、と考える。鏡を用いた幻肢痛治療の上位互換だ。認識身体通りの物理身体――この場合、仮想身体というべきか――を作成し、操作する。

かつて、『ドラゴンネスト』というMORPGにて、男性キャラクターを使用し、起床時間のほぼ全てを費やしていた時期がある。ごく普通のネットゲーム、モニタとヘッドホン、マウスとキーボード越しの世界でも、苦痛の緩和は為せたのだ。これが十分な没入感を備えたVRになったら、効果はどれほど増すだろうか?

もちろん、この効果の威力が、そのまま悪影響の威力となるわけだが。

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