忘れないでほしいから

 「例えば…そうだな…こんな系統の服とかどう?いつもの美空が着てる系統から外れるのも面白いかも」
「おぉ〜!!いいじゃん!!さっすが陽翔!メイクとか美容とかだけじゃなくて、ファッションセンスもあるなんて…よっ!私の最高の幼馴染!!よっ!女子力もりもりボーイ!!私の熱狂的なファンなだけあるよ〜!!」
「なんだよそのクソダサ二つ名…つけて歩きたくねぇ〜笑 ってか、そんなクソダサ二つ名つけるようなやつのファンなんていないだろ。」
「ちょっと!!酷くない!?むぅ…もういいもん!!私には白馬の王子様がいるんだから!あぁ〜早くこの服着てデートしたーい!!!待っててね、宙くーん!!」

….….あーあ。またその男の名前だ。

こうやって一緒にでかけているのに、こうやって似合う服だって理解して選んでやってるのに。
メイクだって、美容のことだって、美空に少しでも頼って頼ってもらえるように少しずつ自分なりに勉強してたんだ。でも、

いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。そして今日この時も。
お前の口から出るのはあの男の名前。

なぁ、美空。
何したらお前は振り向いてくれるんだ?
その王子様と俺は何が違う?
幼い頃から隣にずっといたのは俺だったのに。

あぁ……好きだ、好きだ、好きだ…

…なーんてな。俺らしくないし、馬鹿馬鹿しい。
心の声なんて美空に聞こえないし届きもしない。永遠に伝わらない。
このまま美空は振り向いてくれず、俺から離れて行って、そうしたら…美空は…俺のことを忘れていって…こんな気持ちを引きずりながら生きていかなきゃいけないのか。

あぁ、ツラいなぁ。せめて、美空の記憶から消えたくない。
どんな思い出でも、どんな形でも、どんな姿でもいい。
美空の眼に、脳裏に、全細胞に、俺のことを焼き付けてしまいたい。

美空が俺のことを一生忘れられないように。



この世界にも 友人にも そして美空にも 別れの言葉告げることなく、
俺は”み空色”に染まった大空に飛び込んだ。

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