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法隆寺金堂壁画の「写と想像⇄創造」

本来であれば本日5月1日から丸井金猊「写と想像⇄創造」展が開幕していたはずなのが、新型コロナウイルス感染の影響で10月に延期となり、実質まだ展示の準備も出来ていないような状態です。主催者の私が大阪在住のため、東京の谷中まで行けないという問題もありますが(当初は3月21日に予定されていた東京国立博物館保存修復室長・瀬谷愛さんの記念講演会『法隆寺金堂壁画と写した人々』のタイミングで上京し、展示準備予定だった)、締切が延びるとつい気が弛むということもあります。

宝塚市立中央図書館にデータをお借りした金堂壁画コロタイプ印刷の複写画像のプリントは remo [NPO法人 記録と表現とメディアのための組織]の協力で印刷済みで、一応、展示プランも第12号壁の配置を現場判断とする以外は概ねレイアウトも固まっていて、それに必要な部材等も購入済み。

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残るはキャプションとテキストの準備で、現実的にそれを読む人はどのくらい居るのかというところもあるのですが、2010年の丸井金猊「デザイン教師の貌」展以降、企画色を強めてきた丸井金猊ラボ∞谷中M類栖としては(その辺の経緯は稲葉洋子さんによるJIBUNマガジン展覧会レポートで詳しく取材いただいています)、仮に読む人が少数でもしっかり準備した上での展示にしたいと思っております。また、私個人が仏教美術や美術史の研究者ではないので、それらのキャプションやテキストを用意することで、お客様に説明する際の自分自身の言葉を整理しておける機会になるということもあります。

特に今回の法隆寺金堂壁画は丸井金猊の作品ではなく、比較的最近まで宗教画や仏教美術に特別注意を払ってこなかった人間が取り扱うには身に余る対象物なので、無謀な挑戦は控えようと思っています。もちろん全12号壁に描かれている対象物の最低限の情報提示は複数の参考図書をもとにキャプション提示しますが、「写と想像⇄創造」という企画テーマに基づいて提示するテキストとしては、昭和42年(1967年)に法隆寺の発願、朝日新聞社の後援で制作された再現壁画の模写をした画家たちの言葉から気になるフレーズをピックアップして、それを展示に添えようと考えています。また、その画家のプロフィールや代表作品の画像もネットで画像検索して、壁画を見るのには邪魔にならないような形で参照できるようにするつもりです。

その準備も兼ねて、丸井金猊公式サイトの方では模写画家の言葉を全文掲載し、文中の知らない固有名や単語はWikipediaや他サイトへのリンクを張るなどしながら最終的にどのフレーズを採用するかを考える場として行きたいと思っています。投稿後も随時文章やリンク、画像を更新して行く予定です。現時点でその一番の土台となる参考図書が

法隆寺再現壁画 大型本(朝日新聞社・1995年10月刊行)

ですが、東京国立博物館 特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」図録が発売となった際にはそちらに影響を受けて、方針転換の可能性もあるかもしれません。また、それ以外には

奈良国立博物館「法隆寺金堂壁画写真ガラス原板─文化財写真の軌跡─」(2019年)
日本美術全集2 法隆寺と奈良の寺院(小学館 出版・2012年)
便利堂編集『時を超えた伝統の技』(便利堂 発行・2016年)
法隆寺昭和資材帖調査完成記念〜国宝法隆寺展 大型本(NHK・1994年)
高田良信『私の法隆寺案内』(日本放送出版協会・1990年)

などを参考に典拠明示してテキストや参考画像のカットアップを進めたいと思います。それはある意味でこの行為自体が「写と想像⇄創造」となり、仏教美術・美術史の専門分野からだけではなく、ウェブをデザインする側の立場から法隆寺文化財継承の一端(本当に隅っこの隅っこですが)を担えるのではと自負しております。

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