『シンプルに考える』を読んでみた

「あれも大事、これも大事」と悩むのではなく、「何が本質なのか?」を徹底的に考える。そして、本当に大切な1%に100%集中する。
シンプルに考えなければ、何も成し遂げることはできない――。

LINE株式会社CEOを退任し、動画メディアを運営するC Channel株式会社を起業した、注目の著者が初めて明かす「仕事の流儀」!

■書籍の紹介
シンプルに考える
森川亮 著

ビジネスの本質とはエコシステム

本書ではビジネスとは何か?という問いに対して、シンプルに求める人と与える人のエコシステム(生態系)と記されています。お腹がすいた人においしい料理を出す、冬の寒い日に温かい衣服を差し出す。

どんなことでも、人々が求めているものを与えることが、たった一つの原則です。大切なのは、人々が本当に求めているものを感じ取る能力と、それを具体的な形にする技術を磨き続けること。そして人々が求めているものが変化したときには、それをいち早く察知して新しいものを差し出すことが重要となります。

経営は管理できない、自由が必要

「経営とは管理することである」この固定概念がイノベーションを阻害していると本書では語られています。経営が社員の活動を細かいところまで管理しようとするがために、社員の強みを活かしきれていないのです。

優秀な社員たちが自由に活動し、共感をベースに連携し合うことが重要で、それがエコシステムとなります。スポーツに例えれば、サッカー型の組織。流動的に役割を変え、ゴールキーパーがシュートを打つこともあります。

経営の行方を左右するのは社長ではなく、社員一人一人の技術とチームのコンビネーションです。経営とは管理するという固定概念を捨てることが、経営におけるイノベーションを実現するためには第一歩となります。

「お金」や「名誉」を求めない

「お金」と「名誉」は人間にとって非常に魅力的なものですが、ひとたびそれらを手に入れると、守ろうとする思考が生まれます。その結果、新しいチャレンジができなくなり、自分の成長をとめてしまいます。

森川氏は「やりたい仕事」を求めて努力をおこない、自分の価値を高められると感じた時には「お金」や「名誉」を捨てて転職をしたと語られています。ゼロから結果を出さなければならない状況に自分を追い込んだ時に、自分の能力が発揮されて、成長をすることができます。

自分の市場価値よりも高い「お金」と「名誉」にしがみつくことなく、あえて厳しい場所に身を置くことで、今日よりも明日と成長できることこそが幸せなのです。

仕事はしんどくて当たり前

「仕事を楽しもう!」という言葉に対して、森川氏は共感できないと語っています。仕事とは厳しいものであることにほかならず、生半可な姿勢ではユーザー喜んでもらうことはできないのです。

クオリティの高いプロダクトを生み出すためには、身を削ずるような努力が必要となります。また、失敗を許されない状況です。そうなると、心理的にも肉体的にも強いストレスにさらされるのが、仕事というものです。

むしろ、そのしんどさを引き受けて、淡々と日々の仕事に向き合っていく、その苦しい過程を経て、結果が出たときの「幸せ」の体感しているのが、本物のプロフェッショナルではないかと、森川氏は言います。

人は誰でも、誰かに認められたいと願っています。だから、仕事を通じて世の中の人々に喜んでもらった時に、自分の存在価値を認められたと感じます。それが「幸せ」であるということです。

「空気」を読まない、職場の批判よりもユーザーを恐れることが重要

空気を読まないという点は、すごい人の共通点としてあります。上司が目指している方向性が間違っていると思えば、臆することなく自分の意見を述べることが重要です。

すごい人が何を察知しているのかといえば、職場の空気ではなく、「ユーザー」です。ユーザーが求めているものから、ほんの1ミリズレただけでも、作り上げたプロダクトは相手にしてもらえない、そんなマーケットの厳しさが骨身に沁みているといえます。

森川氏は上記のような思考と行動こそが、プロフェッショナルだと語ります。職場の空気を読むことが仕事の目的になってしまっている人は、本末転倒です。

あくまでユーザーに喜ばれるものをつくり、職場の空気を壊すことを恐れず、軋轢を恐れないことが、プロが進む道となります。ずばぬけた結果を出すためには、空気を読んではならないのです。

専門家にならない、本質からズレた努力はしない

ビジネスパーソンは専門知識や専門技術を磨き上げなければなりません。しかし、しばしば、専門家は本質を見失ってしまうことがあります。

森川氏は常に「そもそも、これは何なのか?」という問いを大事にしていると語っています。プロダクトにプラスαの要素を加えたり、専門性を追求することで二次的な要素が追加されることが往々にしてありますが、その際に「このプロダクトが果たすべき目的とは何か?」を問うことで、物事の本質から外れずに立ち返ることにつながっていくのです。

「確信」が持てるまで考え抜く

「失敗してもいいから挑戦しよう」という言葉はよく聞かれますが、森川氏は「失敗してもいい」と考えたことはないと語ります。確かに人生における最大の失敗は、失敗を恐れて何も挑戦しないことです。しかし、だからといって、「失敗してもいい」というのはあまりにも無責任だといえます。

ユーザーは貴重なお金と時間を使って、商品やサービスを使ってくださるのです。にもかかわらず、「失敗したっていい」などというのは失礼にあたります。

成功するために安易な妥協はしない、そして絶対に成功するという確信がもてるまで、ありよあらゆる努力をする、それが「すごい人」たちに共通する姿勢です。重要なのは仮説の精度であり、確信を持てるまで考え抜くことにあります。

会社を動物園状態にしない

森川氏がハンゲーム・ジャパン株式会社に入社して4年後、社長を任されることとなり、当時ひそかに危機感を抱いていたと語ります。

それは、オンラインゲーム市場でナンバーワンになったことにより、みんなが「幸せになってしまった」という点です。具体的には、給料が増えて、結婚をして、子供をつくり、家を買い、そして早く返るようになったという事です。

もちろん、社員が幸せになること大変良いことですが、社員が幸福度が増すにつれ、かつてはユーザーに認められようと目をギラギラさせながら働いていた野性的な姿を失われ、牙を抜かれたようになったと語っています。それこそが動物園状態です。

その時のハンゲーム・ジャパン株式会社は年功序列型の給与体制だったことが、そもそも結果を出していない人でも評価されてしまう現状を作っていました。

この世の中は、求める者と与える者のエコシステムです。だからこそ、ユーザーに喜んでもらった結果、会社が潤い、社員も豊かになるという循環を回し続けることが一番重要となります。

その際に森川氏が決断した行動とは「全社員の給料をリセットすること」です。もちろん、反対する社員が続出しましたが、大声で反対をしていたのはいずれも、働きに比べて給料をもらいすぎていた人だと綴られています。

本当にできる人が報われる会社にするというシンプルな方針を実現させることが非常に重要です。

優秀な人ほど「ケンカ」をしない

率直に伝える企業文化を実現すると、社内で衝突が発生することがよくあります。しかし、優秀な人ほどケンカをしないという点が、森川氏の解となります。優秀な人は言い争いをしたとしても、すぐにケンカをしている時間がもったいないと気づきます。そして議論を開始するのです。

一方でいつまでもケンカを続ける人は、自分たちが正しいことを証明するためにケンカをしており、決してユーザーのために戦っているわけではありません。

自分たちの意見が率直に言えない=信頼関係がない会社ということ、一番重要なのは、その会社に集まった人が「何のために働いているのか」という視点となります。

モチベーションは上げない、やる気がない人はプロ失格

部下のモチベーションをあげる、それが上司の重要な役割だとよく言われます。しかし、企業のプロフェッショナルを採用しており、会社や上司にモチベーションを上げてもらわなければならない人は、プロ失格だと森川氏は語ります。

自ら学ぼう、自ら行動しようという気持ちがない人が、責任ある仕事をできるはずはなく、ましてや新しいものを生み出すことはできません。

いい結果を出すためには、優秀な人が余計なことに惑わされず、早いスピードで動ける環境が重要です。価値を生みださないばかりか、優秀な人の足を引っ張るモチベーションの低い社員は必要ないという結論となります。

偉い人はいらない、本物のリーダーは自分の夢で人を動かす

リーダーとは夢を語る人だと森川氏は語ります。「ユーザーはこんなものを求めている、だからそれを実現しよう」「ユーザーにこんな価値を届けよう」と語る人がリーダーです。

「自分ひとりでもやり遂げる」そんな覚悟が、みんなの共感を集め、「夢」を実現する一つのチームを生み出すこともあります。そのチームを動かすエンジンとなるのは、「夢」に共感するメンバーの自発性です。

彼らは偉い人の指示に従うのではなく、夢の実現のためにそれぞれの領域で、もてる能力を存分に発揮しようとします。そして、そんな自立したメンバーの先頭を切ってチームをリードできる人こそが、本当のリーダーなのです。

統制はいらない、現場こそが最高の意思決定者

現場がフルスピードで走っている、その時にリーダーに求められていることは何か?的確かつスピーディーな意思決定です。リーダーの意思決定が遅ければ、現場は仕事を中断せざる負えず、不要なフラストレーションをため込んでしまいます。そして、意志決定が的確でなければ組織全体が「道」を誤ることになります。

的確かつスピーディーな意思決定をするにはどうすれば良いか?それは「数」を絞ることです。意志決定には2つあり、自分で決める。そして「決める人」を決めることです。

森川氏は決める人を決め、そしてすべてをその人に任せて口を挟まない、それがシンプルな考え方だと言います。

シンプルでなければ「戦略」ではない

経営はわかりやすさが大事だと森川氏は語ります。「あれもこれも大事」と経営がわかりにくいメッセージを発すると、現場は混乱します。最も大切なことだけを、シンプルにわかりやすく伝える。これが組織の力を最大限に発揮させる上で、極めて重要です。

LINE株式会社の戦略はただ一つ。「どこよりも速く、最高のクオリティのプロダクト」を出すことです。現場のリーダーたちは、このシンプルなメッセージを繰り返し社員に伝え続けました。

まとめ

本書を選定した理由は、先週に引き続き「すごい人」の行動原則や本質を自分に落とし込むためです。現状、自分がこれまで培ったきたものをベースにサービスを構築していますが、実際そのせいで変に自信やエゴが生まれ、成長を鈍化させているのではないか?という点が多々あります。

そのため、まず素直にすごい人を行動原則を取り入れられる状態をつくることが成長加速させるための最短ルートと考え、本書を選定しました。

現在、御社Webで提案するマーケティングフロー構築において、何を基準に構築しているかといえば、「自分たちのタスク量」「先方の満足度」です。

本書を読み、あくまで考えるべきは「エンドユーザー」であることを痛感しました。エンドユーザーが求めるものを提供することで、ビジネスが循環していくというのは正にその通りだと感じます。

もっと、ユーザー視点でクライアントの商品やサービスに改善点があるのであれば指摘し、それを実行プランまで落とし込む。ここを追求してさえすれば、自動的に売上をつくることができます。

御社Webだからこそ介入できる領域があり、そしてクライアント、エンドユーザー視点まで考えぬくことができます。その視点をもち、今自分たちが内を提案すべき、実行するべきなのか、本書を通してもう一度考えていきます。

また、もう1点本書からの学びとして、リーダー論、意志決定、戦略における点がありました。直近リスクヘッジを意識した発言を多々しており、その際にリーダーとしての「夢」という部分が、徐々に少なくなってきたように感じます。

もちろん、それぞれ共感できるかできないかはあると思いますが、改めて何を「夢」として語るのか、リーダーとしての発言に上乗せしていきます。意志決定でいうと、どうしても自分の決定タイミングが遅いと、感じておりました。だからこそ、本書を読んで、とにかく決める、もしくは決める人を決めるということを、徹底していきます。

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