『小さな習慣』を読んでみた

本書の「小さな習慣」とは、〈毎日これだけはやると決めて必ず実行する、本当にちょっとしたポジティブな行動〉のことを指します。

たとえば腕立て伏せ1回。10年間も運動不足だった著者は、そこからスタートして今では、本格的な筋トレをこなすようになったと本書では語られています。

シンプルな提言と、心理学、脳科学など、それを支える骨太な科学的記述が読者に受けてか、刊行から半年余り、順調に版を重ねている、ベストセラーにもなった一冊です。

■書籍の紹介
小さな習慣 
スティーヴン・ガイズ (著) 田口 未和 (翻訳)

小さな習慣は小さなステップから成り立つ

小さな習慣とは、新たな習慣にしたいと思っている行動を、もっともっと小さい形にしたものだと本書では語られています。

毎日100回の腕立て伏せが目標なら、毎日1回の腕立て伏せにする。毎日3000ワードの文章を書くことが目標なら、毎日50ワードを書く。できるだけ簡単に行動に変換します。

小さな習慣は、ばかばかしいほど小さなステップから成り立つため、自分がすでにできるラインで、『ばかばかしい』と簡単に聞こえるとすれば、それは間違いなく簡単なステップといえるでしょう。

私たちの行動の約45パーセントは習慣で成り立つ

デューク大学の研究によれば、私たちの行動の約45%は習慣で成り立つと実証されています。習慣は繰り返される行動のことをいい、その積み重ねが将来の大きな成功または失敗に繋がるため、実際にはもっと数字以上の可能性があると本書では語れています。

人生を大きく変える習慣には、次のようなものがあります。
・1日に20分の運動を習慣にすれば、次第に筋力がついて体型を変えられる。
・健康的な食品を食べる習慣は、長生き可能性を増す
・毎朝1時間早く起きて読書をすると、1年では365時間になる。読むスピードが1分当たり300ワードとすると、365時間で657万ワードを読む計算になる。

同じ行動を繰り返し、専用の神経経路をつくる

脳の中の通信チャンネルといわれるのが神経経路であり、この経路こそ、習慣を目に見える形にしたものだと本書では語られています。その仕組みは下記になります。

神経経路が合図や外から刺激で活性化する

神経経路を沿って電気信号が走る

習慣化された行動を促す

例えば、朝起きてすぐにシャワーを浴びることが習慣になっているとすると、その行動には決まった習慣が割り当てられています。そのため、目を覚ますと自動的にシャワーの神経が作動し、浴室に向かいます。

その際には、特に何も思考を巡らせる必要がないのです。つまり、無自覚状態であるとも言えます。そして、習慣化するためにはどうすれば良いかというと、「何度も同じ行動を繰り返すことで、専用の神経経路を作り、強化していけば良い」ということになります。

新しい習慣づくりにかかる日数は平均66日

習慣づくりかかる時間は人によって、あるいは状況によっても異なります。形成外科医のマクスウェル・マルツ博士の研究によって、「新しい習慣は21日で身につく」という話が出回っていますが、それは認識の間違いだと本書では語られています。

習慣作りについては、2009年の『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ソーシャル・サイコロジー』誌に掲載された研究で、行動が習慣になるまでにかかる日数は平均66日。そのため、まずは66日を目安とするのは、良いと記載されています。

習慣はすぐに身につかないと同時に、すぐに消えてしまうものではありません。60日続けられたのであれば、少なくとも1日目よりも簡単に行動に起こすことができるはずです。

習慣化の最初の兆しは「抵抗」が弱まること

習慣になる前の最初の兆しはやりたくないという『抵抗』が弱まることです。人間は、神経経路を通じて電気信号を送ることで、脳とのコミュニケーションをとっています。

そして、化学的な話につも通じますが、電気は常に最も抵抗の少ない道を選んで進みます。私たちの脳も習慣的な行動を好むのは、すでに知っている道で褒美として何が得られるかがわかっているからです。

習慣化をする上で、まずは抵抗がなくなるまで、行動を継続させ、脳にこれは簡単なことであると認識させる必要があるということです。

間抜けな脳と賢い脳をコントロールする

脳には特定パターンを認識し、それを繰り返すしかできない部分、『大脳基底核』と、本当に賢い部分である「前頭前野」と呼ばれる部分があります。

前頭前野は、何かをしたときの結果や長期的な利益を理解できる脳の『司令塔』であり、短期的な思考と意思決定をつかさどっています。習慣を作るためには、前頭前野が望んでいることを、他の脳の部分にも好ましいと思わせる必要があるのです。

しかし、前頭前野は重要な仕事を任されている分、エネルギーをたくさん使うので、疲れやすいというデメリットがあります。その際、脳のコントロールを奪うのが、大脳基底核というわけです。

大脳基底核は人間だけが持てる高レベルの目標を認識できず、同じことを自動的に繰り返し、エネルギーを効率的に使うのは得意とされています。

そのため、前頭前野で導きだした最適な習慣を、大脳基底核に教え込むことで、習慣化が形成されるというわけです。

モチベーションに頼っても習慣は身につかない

『習慣にしたいときに、モチベーションをあげる』ということを記した本はたくさんありますが、本書ではそれを否定しています。その理由は、モチベーションは感情に基づいたものであるため、計測することができず信頼するに値しないからです。

疲れているとき、病気のとき、頭が痛いとき、なんだか不調なときなど、狙い通りにモチベーションをあげるのは簡単なことではありません。モチベーションを使う方法がうまくいくのは、エネルギーがありあまっているとき、健康的な考え方をしているとき、他に大きな誘惑がないときに限るといえます。

行動するのにモチベーションが必要だと信じるのは危険

自己啓発本の多くは、行動するためにモチベーションが必要だと定義づけています。しかし、モチベーションはコントロールしづらい分、信じすぎは禁物ということです。

たとえば、運動して望み通りの効果を得られたとしたら、その理由はモチベーション、意志の力、習慣の力の3つが考えられます。モチベーションをあげたいと思うこと自体は問題ないと筆者も語っていますが、それがないと何もできないと考えるのは問題です。

モチベーションルールに従っているのと、モチベーションが高くないときは何も行動できないため、かえって怠け癖がついてしまいます。何をするにもモチベーションという考えが、深層心理に刻み込まれてしまうと、感情と子行動が常に一致していなければならないという勘違いを起こしやすいのです。

モチベーションと感情に頼らない『熱意減退の法則』

熱意減退の法則は、本書オリジナルの法則となりますが、これは行動が習慣に代わり始めることろには、その行動への感情は薄れていきます。例えば、4枚目のピザを食べる楽しみは、3枚目のピザを食べる楽しみよりはほんの少し薄れ、5枚目はもっと薄くなるというような法則です。

心理学者のジェレミー・ディーンは「習慣的行動は無意識におこなわれるだけではない。感情から切り離されている。習慣的行動は不思議なほど無感情でおこなわれている」と述べています。

同じ行動の繰り返しで興奮が高まることはなく、逆に薄れていく。つまり、習慣化が進めば進むほど、それをすることへの抵抗がなくなり、どんどん自動的になっていく、よって感情が無くなっていくということです。

強い感情を引き起こさないことが、習慣化の利点の一つだということです。

習慣化のためには『意志の力』を信頼し、強化する必要がある

モチベーションとは異なり、意志の力は信頼に値すると本書では語られています。意志の力とは、絶対に何かの行動をとるように自分に強いる場合、その決断こそが意思の力です。

自己管理研究の第一任者であるロイ・バウマイスター教授は、2週間かけて姿勢を正す努力をした学生は、そうしなかった学生に比べて意志力が鍛えられ、それに続く自制心の調査でも、明らかな改善が見られたとしています。

意志の力を使うと、その時のモチベーションがあるかどうかにかかわらず、特定の活動をスケジュール通りに実行できます。それによって一貫性が生まれ、習慣作りにもスケジュール管理にも役立ちます。

『小さな習慣』で乗り越えられる5つの障害

小さな習慣は、自分で決めたばかばかしいほど簡単なプランを、着実にこなすことですが、それによって乗り越えられる5つの障害があります。

・努力を強いられることがない
・困難だと感じることがない
・否定的な感情にとらわれる必要がない
・主観的な疲れがない
・血糖値レベルが安定し疲れることがない

本来、習慣化する上でネックになる上記の5つの要素が、そもそも小さな習慣には必要がありません。小さな習慣はコンフォートゾーンの境界線のところまで歩いていき、一歩だけそこから外に出ることをし続けるという事です。

その結果、モチベーションが後からついてくる、そしてそれが望ましい行動であれば、次のステップに進む可能性が高まっていきます。



まとめ

本書を選定した理由は、自分の深層心理を振り返ったときに、どうしても『楽をしたい』『モチベーションに左右される』といった心理性が強く、常にベストパフォーマンスを発揮するための思考法や習慣形成を身につけたかったからです。

実際、直近集中力が途切れやすく、その原因は急なMTGや急な相談に対応しているため、モチベーションが維持し続けられない点にありました。本書を読んで、そもそもモチベーションに頼ること自体が問題であり、必要なのは『意思』だという気づきがありました。

以前に比べると、意志の力を発揮し辛くなっており、『慣れ』『傲慢』『自分はやればできる』など、思考性が幼くなってきてしまっている気がします。再度、自分に与えられた役割や責任の重さを考え、自分の深層心理と戦っていきます。

また、感情やモチベーションよりも、脳科学をもっと利用していきます。


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