仲間の「すごさ」の認め方を読んでみた

他者との「違い」を「強み」に変えるリーダーが知るべき先天的な資質である「7つの脳力」を知ることで、組織運営の悩みを解決する!という触れ込みで、執筆された一冊。

仲間に言葉が正しく伝わらない、相手の考えていることが理解できない・・・という方に向けて、すごみとシリーズ第一弾『「すごさ」の認め方』と第二弾『子どもの「すごさ」の認め方』に続く、3冊目『仲間の「すごさ」の認め方』が本書になります。

本書では、人間の先天的な思考・行動・価値観を表す資質を、脳機能とから解き明かした「7つの脳力」で理解し、なぜすれ違いが起こるのかを明らかにします。前作までは「利き脳4タイプ」を用いたタイプ分けを使っていましたが、今回はそこからさらに踏み込んだ応用編です。4タイプだけでは理解できなかった「違い」を明らかにしています。

■書籍の紹介
仲間の「すごさ」の認め方
篠田真宏 著

はじめに

本書は、社内で浸透している4つのタイプ分類について述べられた本「すごさ」の認め方の続編となります。赤、青、黄色、緑だけでは、セグメントしきれない要素を、7つの脳力として紹介しています。

本書はリーダーの資質という切り口から書かれているため、マネジメントするポジションの方にも参考になる一冊です。

7つの脳力とは

7つの脳力とは、先天的に生まれ持った資質のことです。それぞれの特徴について、まず下記に記載します。

■逢見の脳力
現在の状況、人の様子を俯瞰してみることで、ゴールイメージを見る力です。また回りに流されず独立して、考えや行動を制御でき、困難な状況でも平静を保って対応することできます。

■勤仕の脳力
物事を進めていくために必要な事柄を、詳細な手順に従って丁寧におこうなことができます。一つの仕事に高い集中力を持って取り組むことができます。

■指南の脳力
人を教え、育てるために、事実を客観的な視点でわかりやすく伝えることができます。自分の内面に関心を向ける傾向があり、考えや感情の変化に敏感です。

■歓励の脳力
より良い人間関係、職場環境のための改善策を提案し、実行するために人々を励ますことができます。過去に実践してきたことによって自分に自信を持ち、自分の価値を感じます。

■施与の脳力
最大限の効果を発揮するために、資金、時間、情報物質を準備し、必要があるところに与えることができます。

■統治の脳力
ビジョンを創造し、そこに向かうためにチームやその場の状況を把握し、スムーズに運営するために指示をすることができます。

■慈恵の脳力
いつも相手のよいところに目を向け、相手の喜びや悲しみ、痛みなどの感情を、まるで自分のことのように感じることができます。

脳力は子供のころから現れている

上記で紹介されている7つの脳力は、子供のころから現れているもので、家庭や環境によって矯正されたり、後天的な努力によって別の脳力を伸ばした人もいると、本書では語られていました。

自分に元々備わっている脳力だと捉えると、自分が何を意識して行動すれば良いのか、また人と関わる際にどの脳力が優れているのかを考えることが重要です。

自分の脳力を活かす、他のメンバーに役割をゆだねる

自分に備わった資質と考えると、向き不向き、得意不得意があるわけです。リーダーとして考えるべきは、不得意な領域を伸ばすことではなく、自分の得意な脳力を発揮させること、他のメンバーに頼る、依頼する重要性を学ぶこと必要でしょう。

自分と異なる強み、脳力を持っている人の力を借りることで、一人ではできないことを成し遂げられます。

脳力に優劣はない

脳力はそれぞれが異なる特徴を持っているため、どれが最も素晴らしいということはないと本書では語られています。

たとえば、それぞれ違った脳力をもつ7人が集まって、食事会をしたとします。あなたがお盆でサラダを選んでいるとき、手が滑って床に落とし、お皿が割れてサラダと一緒に飛び散ったとしましょう。7つの脳力を持ったそれぞれがどのような反応をするか、以下にまとめられています。

■逢見の脳力が高い人
「たくさんのお皿を一度に運ぶとそうなるよ」

■勤仕の脳力が高い人
(すでに手を動かしながら)「私が片付けておくよ」

■指南の脳力が高い人
「うまくバランスが取れてなかったから落としたんだね」

■施与の脳力が高い人
「新しいサラダを作りましょう」

■慈恵の脳力が高い人
「誰でもこういうミスはするものだから、気にすることないよ」

■統治の脳力が高い人
「〇〇さん、雑巾とごみ袋を持ってきてくれる?〇〇さん、割れたお皿を包む新聞紙持ってきて。〇〇さん、新しいサラダを作る手伝いをお願いできる?」

どれも必要な声掛けであり、どれが一番優れた反応というわけではありません。そのため、それぞれの脳力を持つ人の資質を理解することが一番重要なのです。

7つの脳力はある程度までは誰もが身につけることができる

脳力は訓練すれば、ある程度のところまでは、すべて身につけることはできます。濃淡の差はあるものの、7つすべての脳力は、各々備わっているのです。

全部の脳力値を考え、誰がやるべきか判断するのはリーダーの決めるべきところであり、どうすれば成果やスピードが伴うかはリーダー次第です。それでも、すべての脳力が備わっているとすれば、この7つの脳力を仕事の振り分けのヒントにすることは得策でしょう。

MI理論との関連性

MI理論は日本語では、多重性知能のことです、1983年のハーバード大学のハワード・ガードナー教授によって提唱された理論です。人間には、8つの知能分類があり、人によって発達の度合いが異なるというものです。

7つの脳力が持つ特徴と、MI理論で扱っている8つの知能が重なっていると本書では紹介されており、逢見の脳力と内省的知能、勤仕の脳力と論理数学的知能など、1対1で対応していくものです。それぞれの内訳については下記になります。

■逢見:内省的知能:下前頭周り_三角部
長所短所に関わらず、自分自身について正確に把握し、その上で行動を起こせる機能

■勤仕:論理数学的知能:前頭連合野
論理的なパターンや相互関係、命題(仮説や因果関係)、また抽象的な概念に対応できる知能

■指南:音楽・リズム知能_聴覚野
様々なメロディー・リズム・ピッチ・温室などの認識、識別やそれらを作り出したり、表現したりする知能

■施与:視覚・空間的知能:視覚野
空間および空間の中に含まれているものを的確に認識したり、その認識を自由に転換されたりすることができる知能

■歓励:言語・論理学的知能:運動性言語野
話をする、文字や文章を書くなど、言葉を効果的に使いこなす知能。言葉を使って人を説得したり、情報を記憶したりする知能。

■統治:博物学的知能:角回
身の回りにある様々な事象を認識し、違いや共通点を見つける知能

■慈恵:対人的知能:前頭眼孔や
考えや気持ちを自分の体を使って表現したり、自分の手でものをつくったり、作り替えたりする知能。

逢見の脳力【特徴】

特徴は以下になります。
・自分の正義に従って、周りの人や情状を判断する
・物事を正しいか悪いか、適切か不適切か、真実かまやかしか、すぐさま判断する
・外面的な分析ではなく、直観によってすぐに個人やグループの"雰囲気"を理解する
・困難に直面することを、人生に必要なものだと考えている
・すべてのことに関して意見を持っている

【注意点】
注意点は以下になります。
・行動・確認する前に、自分の中で善悪の判断を済ませてしまっている
・常に自分の意見が正しいと確信している

勤仕の脳力【特徴】

・人や場が何かを必要としていることを素早く察知する
・行動する前に計画を立てる
・褒められるための行動ではないが、感謝によって行動が価値を生めたと確信する
・人から頼まれた以上のことをする

【注意点】
・人にさせるより自分でやりたがる
・少し考えればわかるのに、必要なことをしない人に対して批判的である

指南の脳力【特徴】

・ある意見やアイディア、仮説を見たとき、事実に基づいているかを判断基準にする
・探求心が強く、徹底的に調べる
・ある種の冷静さをもって物事を見て、感情に邪魔されない
・教育者の立場になったら自分の時間を憎しみなく使って教育する
・考え方を教えることは得意だが具体的にどう使うかまで教えるのは苦手

【注意点】
・自分が正しいことを重視するあまり、人とぶつかることがある
・知的な脳力に関してプライドが高い

歓励の脳力【特徴】

・人が自分の可能性に挑戦するように盛り上げる
・表情をよく観察し、反応を聞き、ジェスチャーを分析する
・興味があるのは自分で実行すること
・人はだれしも皆成長の途中なのだから、今何かを完璧にできなくても問題ない
・簡単に決断することができる

【注意点】
・頭に浮かんだことは言わずにいられない
・アドバイスを聞くだけで実行しない人にはそれ以上のアドバイスは必要ないと考える

施与の脳力【特徴】

・持っているものは何でも与えてしまう
・お金を使うことは投資と考え、無駄遣いはしない
・騙そうとして来る人や、悪意も持って近づいてくる人見抜く

【注意点】
・条件付きで与えようとすることがある
・与えることが好きなのでトクに仲間に対してひいき傾向にある
・何かを提供することで、他のことをしなくても役割を果たしたことにしてしまう

統治の脳力【特徴】

・一人だけでは達成できない大きな目標のために、組織づくりを熱心におこなう
・人へ目標を与える大きなビジョンを描きだす
・仕事や目標を達成するために、必要な材料や人材を揃えることができる
・先頭に立つために避難されることも多いが、目標のためならば気にせず耐えられる
・共通の目標を持ててないチームでは力を発揮しにくい

【注意点】
・何も挑戦する要素のない仕事は退屈に感じる
・目標達成に集中しているために、他人への配慮が欠けてしまうことがある

慈恵の脳力【特徴】

・非常に上手に愛情表現をすることができる
・自分の言葉や行動に深い注意を払う
・人は基本的に善人であると考える

【注意点】
・なんでもいいよ、というときは本心からなんでもいいと思っている
・本来は自分が責任ではないことにまで、自分の責任を感じて傷ついてしまう
・自分のことのように、人の痛みを感じてしまう

まとめ

本書を選定した理由は、大神さんより社内で浸透している4分類の「元」である「すごさの認め方」を紹介してもらい、その上でリーダーのための本書があったため、今後のチームビルディングのためのヒントを掴めればと考えました。

本書はタイプ別について書かれているのみでしたので、直接的な学びは少なく、情報を知るということがメインとなりました。ですが、本書の中で印象に残ったところで、7タイプの脳力の中で4タイプがそれぞれ必ず持っている「脳力」についてです。

赤:歓励の脳力
青:勤仕の脳力
黄:指南の脳力
緑:逢見の脳力

上記は先天的に持っているのと、ベースになっているとのことだったので、今後の関わり方には参考になる感じました。しかし、肝心のタイプ分類方法がなかった事、全員がすべての脳力を持っているという事だったので、あまり直接的には業務に繋がらずというところでした。

実際、メンバーのそれぞれの脳力を見たときに、おそらく私含め全員が4タイプ関係なくそれぞれの脳力があると感じています。その中で強弱はあるので、ここが熟練してくると、経験値が高いと判断できます。

シーンや状況においても異なるはずなので、「この時はこの人のこの力を借りよう」というようにケースバイケースで判断していきます。そのためにもいろいろな質問や関係構築をおこなって、各メンバーの脳力を見極めていきます。



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