『リーダーのための経営心理学』を読んでみた

本書は、公認会計士・税理士でありながら心理カウンセラーの資格を持ち、最先端の心理学や脳科学を研究するとともに、経営コンサルタントとして多くの社長のメンターを務める藤田耕司氏が、そのノウハウを全公開した初の書籍となります。

人の心のメカニズムを心理学や脳科学から説明し、それを人事・組織、営業・マーケティング、マネジメントに活かせる、人を動かし導く方法としてご紹介します。

■書籍の紹介
リーダーのための経営心理学
藤田耕司 (著)

対話と信頼

本書では「何を伝えるか」というコミュニケーションの内容としての要素を「対話」と呼び、「誰が伝えるか」というコミュニケーションの主体としての要素を「信頼」と呼んでいます。

対話とは、相手を動かし導くためには、どのようなことを伝えればよいかということ関する要素であり、信頼とは対話の言葉が力を持つためには、相手とどもように信頼関係を築いていけばよいかという要素になります。

コミュニケーションの内容
何を伝えるか:「対話」

コミュニケーションの主体
誰が伝えるか:「信頼」

人間の脳には『感情の脳』と『論理の脳』が共存する

人間の脳は大脳、脳幹、小脳などから構成されており、その約8割を大脳が占めます。そして、大脳の中には本能、情動、感情、記憶などをつかさどる大脳辺縁系と、言動や知性、合理性などをつかさどる大脳皮質が存在しています。

人間の脳の中には、対照的な役割を有する部位が共存しているのです。本書でいえば、大脳辺縁系部分が、『感情の脳』。大脳皮質が『論理の脳』と紹介されています。

感情の脳の判断基準は「快か不快か」であり、論理の脳の判断基準は「論理的か、合理的か」となります。

アルダルファーが提唱する3つ欲求「生存・関係・成長」

本書では以下と紹介されています。
①自分のことを認めてくれる、自分のことを理解してくれる
②自分に気づきを与えてくれる人、自分を成長させてくれる
③裏表がない人、約束を守る人など、発言や行動が一貫している人
④Giveの精神がある人、面倒見がいい人

その上で、アメリカの心理学者クレイトン・アルダルファーが、マズローの欲求段階説を発展、修正し、定昇した「ERG理論」が本書ではピックアップされています。

Existance(生存欲求):生きることに対する物資的・生理的欲求で、食べ物や住環境など欲求や資金、雇用受験、安全な職場環境などに対する欲求

Relatedness(関係欲求):家族や友人、上司、同僚。部下、その他重要な品玄関系を持ちたい、認められてたいという欲求

Growth(成長欲求):自分が興味を抱く分野で能力を伸ばし、成長したい。苦手分野を克服したいという欲求や創造的・生産的でありたいよする欲求

■マズローの欲求段階説
自己実現欲求
承認欲求
社会的欲求
安全欲求
生理的欲求

■アルダルファー:ERG理論
成長欲求
関係欲求
生存欲求

人間は社会的動物だからこそ、関係欲求が必要である

生存欲求は、相手の経済力を支援するような関わりをすることで満たすことができます。例えば、従業員に十分な給料を払うなどです。

関係欲求は、組織や集団に属することで、孤独を回避すると共に、その中で満たされ、良好な人間関係を築くことで、満たすことができます。

人の歴史から見ても、集落から排除されること、それは死を意味しました。そのため、人間は組織や集団に属していたい、孤独になりたくないと、本能的に願うのです。

もちろん、組織や集団に属していても、そこで誰からも相手にされなかえれば、かえって強い孤独感を覚えます。メンバーから必要とされ、仲間として認めてもらいたい、それが関係欲求の本質と言えます。

人は自分のことを認めてくれる相手を認めようとする

人は自分のことを認めてくれる相手を認めようとし、自分のことを否定する相手は自分も否定しようとします。この心の作用を「返報性」といい、後者を「悪意の返報性」と言います。

人間は鏡のように相手から受けた感情と同じ感情を相手に変えそうとします。片思いのように、こちらが好意を寄せても、同じ感情を返してくれない場合もありますが、まずはこちらから相手を認めないことには、相手から認められる関係を望むことは難しいでしょう。

相手から認めてもらいたければ、先に相手を認める。相手に動いてもらいたければ、先に相手のために動く。相手に信じてもらいたければ、先に相手を信じる。

これが人間関係を築いていく上で必要な工程なのです。

人に認められるための5つの方法

あるアンケートで、この世の中で最も恐ろしいことは何かを聞いた際、1位は「否定されること」だったと本書で紹介されています。人間は否定の言葉にとても敏感であり、自分を否定した相手の言葉は、素直に受け入れることが難しくなります。

組織やチームリーダーは、相手を否定するような議論の勝ち方は、メンバーの心が遠ざかるため、注意する必要があります。少々のことであれば、勝てる議論であっても、あえて勝ちを譲るなどし、相手のプライドが傷つかない勝ち方にしていきましょう。

①否定しない
②褒める
③感謝の言葉を伝える
④聴く(共感する)
⑤労をねぎらう

モチベーションを上げる要因、下げる要因

認めることとモチベーションの関係について、動機付け要因と、衛生要因があります。

動機付け要因とは、仕事の達成、承認、仕事そのもののやりがい、責任範囲の拡大などがあります。衛生要因には、会社の方針、管理方法、監督者との関係、労働条件などがあげれます。

衛生要因については、給与などが上げれば、一時的にはモチベーション向上につながりますが、永続的なものではありません。逆に給与を下げられると、高い確率で仕事に対するモチベーションが低下します。

動機付け要因については、仕事をやり遂げることで達成感を味わえば、モチベーションが大きく向上しますが、誰かに褒められなかったり、感謝されなかったとしても、大きくモチベーションは低下しません。

上記を踏まえると、仕事に対するモチベーションをあげるためには、達成や承認という要素が重要なカギを握るのです。

「こうしなさい」と命令されるよりも「あなたはこういうことができる人間だから」と 優れた能力や長所に気付かせて自己認識に変化をもたらす方が有効となります。


人望をもたらす『一貫性の法則』

人間は行動、発言、態度、信念などに一貫性がなく、矛盾している相手に対しては不信感を持ち、人間的な評価を低いと判断する傾向があります。こういった心理的傾向を、「一貫性の法則」と呼びます。

また窮地と平常時とでの振る舞いに一貫性があるかどうかも、人間的信頼に大きく影響します。窮地においては人の本性が出ます。それゆえに窮地においても人に優しくできる、ユーモアを忘れずにいる、このようなふるまいは人間的信頼を厚くします。

 ①発言と行動
 ②人に対する態度
 ③窮地と平常時の振る舞い

・公欲と私欲の割合が成功者を決める

仕事をする目的において、私欲と公良くの割合は、人間的信頼を作る上で重要となります。利他の行動に美しさ、感動を人間の脳は覚えます。経営もビジネスも私欲と公欲のどちらを優先するかの葛藤が付きまといます。

偉大な成果を修めた人は、壮大なスケールの公欲を抱いていたからこそ、成功につながったといえます。仕事や人生のスケールは公欲の割合に左右されるのです。

能力的信頼を図る物差し『PM理論』

PM理論とは、P機能とM機能によって成り立つ離村で、P機能は目標設定や計画立案、指示、叱咤などにより、成績や生産性を高める能力を指します。

M機能は集団の人間関係を良好に保ち、チームワークを強化、維持する能力を指します。この2つの能力の強弱により、リーダーシップのタイプを以下の4つに分類します。

①PM型:P機能、M機能ともに強い→リーダーの理想像
②Pm型:P機能が強く、M機能が弱い→集団をまとめる力は弱い
③pM型:P機能が弱く、M機能が強い→目標達成する力は弱い
④pm型:P機能もM機能も弱い→リーダーとして失格

プレイヤーとしての能力が高い人がリーダーとしても能力を発揮するためには、人を立てる能力、仕事ができない人の気持ちも理解する能力、そして人に仕事を任せきる能力が必要となります。

組織全体がヒーローになるように努める

 自分ひとりがヒーローになろうとするのか、チームや組織全体をヒーローにしようとするのか、その意識の持ち方がマネージャーとしての能力を大きく左右します。

部下の成長そのものを自分の喜びとできることは、マネージャーとしての重要な能力であり、その能力は部下の成長を促進し、組織の成長も促進させます。

情緒的対話:快追求型と不快回避型のアプローチ

メンバーとのコミュニケーションの取り方で情緒的に対話をおこなう場合、『快追求型』と『不快回避型』の2つのアプローチがあります。

快追求型とは、メンバーの「こうなりたい」という動機にアプローチして、喜びや楽しみを原動力として、接する方法です。逆に、不快回避型とは「こうはなりたくない」という恐怖や不安を原動力として、メンバーにアプローチしていきます。

人を動かし導く上では、どちらのアプローチも有効で、接する人やタイミングによって快追求型と、不快回避型をリーダーが選択していく必要があります。

まとめ

本書を選定した理由は、御社Webの人員が増えたため、再度リーダーとして必要な心理学を学び、チームの統制を取りやすくしようと考えたためです。

本書を読んだ所感としては、今まで自分が意識して考えていた事、実施していた事が理論、エビデンスとして紹介されていた印象がありました。その一方で、やはり肯定的なアプローチの一辺倒となっていて、そこは肯定、否定のアプローチをどちらも使い分ける必要があるとも感じました。ただし、否定の場合は、理由付けをしっかりして、『相手のために否定をしている』という見せ方が必要だと感じます。

肯定するときのスタンスと、否定するときのスタンスをどちらも変えておけば、人間関係を崩さずに人を導くことができるはずなので、そこを上手くやっていきます。

もう1点、御社Webのマネジメントを考えた時に、私の上には直上長がいないことを踏まえると、自分の視座をG4ラインで考える必要があると改めて感じました。自分がG4だと仮定した場合、今メンバーを全員、G3のスキル・リーダーシップを備えさせなければなりません。個人のレベルでの成果ではなく、リーダーシップ、マネジメント発揮による成果。それをメンバーに求めていかなければ、倍々で増えていく目標を達成することは絶対にできません。

今のメンバーは全員G3であるという認識を持たせ、G2以下の発言や行動については指摘し、G3の基準を達成しているときに肯定するなど、自分のマネジメントのレベルを1つ挙げて、もっと組織を活性化させていきます。

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