『ブリッツスケーリング』を読んでみた

ブリッツスケーリングとは、総力を挙げて成長に集中する電撃戦を指します。成長しながらチームや企業を運営するための戦略と技術のセットが、ブリッツスケーリングです。

先が読めない環境で成長するには、効率なんて考えるより、とにかくスピードが重要。これまでは「リスクがありすぎる」「常識外れ」と言われるような方法も、必要なら採用。ブリッツスケーリングという武器を手にした者だけが、不確実性の困難を切り抜け、圧倒的に成長して世界と未来を変えられる。

本書は、リンクトイン創業者でありシリコンバレーで若手起業家に「ヨーダ」のように慕われるリード・ホフマンが、スタンフォード大学で教えたブリッツスケーリング講座をもとにした1冊です。

■書籍の紹介
ブリッツスケーリング
リード・ホフマン (著), クリス・イェ (著), 滑川 海彦 (翻訳), 高橋 信夫 (翻訳)

ブリッツスケーリングとは

ブリッツスケーリングとは、企業が信じられない速度で、スケールアップするための一般的なフレームワークと特定の手法の両方を指します。ブリッツスケーリングは、ハイパーグローをもたらしますが、ただ企業を大きくするという考え方ではなく、明確な目的意識を持った上で実行されます。

通常の考え方、伝統的な考え方からすると、リスクがありすぎるような方法も、必要なら躊躇なく採用する必要もあるのです。この言葉の語源は、ドイツ語の「雷」を指しますが、さまざまな比喩表現で用いられます。

最初の使用例は、第二次世界大戦の初戦でナチス・ドイツのハインツ・ぐでーリアン陸軍大将が指導した、ブリッツクリークです。全面攻撃の戦略であり、燃料、弾薬、食料その他資材の補給がおいつかなくなるという破壊的な危険を冒して、前進速度と衝撃の最大化を図りました。

スケーリングのタイプ

ブリッツスケーリングは単なる急成長とは異なり、業種問わず、新規ユーザー数、利益率、成長率といった数字は死活的に重要な指標となります。それを理解するためには、他の成長戦略と比較することが分かりやすいといえます。

効果性・不確実性:伝統的なスタートアップの成長戦略
効果性・確実性:伝統的なスケールアップ式の成長戦略
スピード・不確実性:ブリッツスケーリング
スピード・確実性:ファストスケーリング

伝統的なスタートアップの成長戦略では、将来の見通しがきかない状況下でも効率性を重視します。伝統的なスケールアップ式の成長戦略では、焦点は環境を確実に把握した上で、効率性を追求します。ファストスケーリングでは、高い成長率を実現するために資本効率をある程度犠牲にアプローチします。

それに対して、ブリッツスケーリングはスピードを最優先し、効率を犠牲にします。効果検証も惜しみ、とにかく速度を重要指標とするのです。一つのビジネスが成功したら、成長曲線を維持するために、第二弾のブリッツスケーリングへと遷移させていきます。

ブリッツスケーリングの3つの基本と5つのステージ

ブリッツスケーリングには以下の3つの基本要素があります。

①ブリッツスケーリングには、攻めの要素と守りの要素がある
②ブリッツスケーリングは前向きのフィードバック・サイクルから生まれる。つまり先に規模の拡大を達成した会社が、先に競争上の優位を得る。
③ブリッツスケーリングには巨大な利点がある一方リスクも極めて大きい

ブリッツスケーリングの守りの要素については、他の追随を許さないスピードで成長していくため、他社からの逆襲の余裕を奪うことに本質があります。

また、ブリッツスケーリングには5つのステージがあります。

第1ステージ(ファミリー):社員1~9人
第2ステージ(部族):社員10~99人
第3ステージ(村):社員1000人未満
第4ステージ(都市):社員数千人
第5ステージ(国家):社員1万人以上

当然、それぞれのステージに合わせて、それ相応のスピードが求められます。ブリッツスケーリングするためには、ビジネスモデル、戦略、経営と、イノベーションを繰り返していく必要があるのです。

イノベーションの末、確率されたビジネスモデル

以下で紹介するのは、ビジネスモデルにイノベーションを起こし、大きな成功を掴んだモデル事例となります。

パターン①:モノではなくビットが重要
GoogleやFacebookなどが、ソフトウェアに焦点を当てて、巨額な規模を築いた方法です。

パターン②:プラットフォーム
マイクロソフトのウィンドウズOSのようなテクノロジープラットフォーム、インターネットなども挙げられます。

パターン③:フリーミアムモデル
無料で商品やサービスを提供するモデルです。

パターン④:マーケットプレイス

パターン⑤:サブスクリプション

パターン⑥:デジタルグッズ販売
LINEのスタンプなどです。

ビジネスモデル・イノベーションを成立させる法則

成功が実証されたビジネスモデル・イノベーションには、根本的な原則があります。まずはムーアの原則です。インテルの共同創業者、ゴードン・ムーア氏が1995年に書いた論文に端を発し、著者にになんでムーアの法則と名づけられました。これはテクノロジーのコンセンサスは「18カ月ごとに2倍」になると、提唱したものです。コンピュータやインターネットなど、どんどん強力になりました。

また、ブリッツスケーリングを実行した企業は、自動化を利用しています。コンピュータは間違いなく人間よりも高速、経済的で信頼性も高い点を念頭に置く必要があるということです。

最適化ではなく、適応に重点を置いてる点も法則の一つです。企業が急速に変化する環境で、新しいプロダクトのマーケット適合性を求める場合、継続的に改良し続けることが必要になるからです。

さらに、反逆的思考をもつことも法則に繋がります。反逆者であることは、巨大なテクノロジー企業を請いつくする上で、決定的な要素となります。誰もが正しいと認める方向を追求していたら、そのスタートアップはいかに魅力的に見えても、ライバルとの差別化で苦労するからです。

とにかく素早く動くことブリッツスケーリングと原則

ブリッツスケーリングを実行すると決めたら、「どうすればもっと速く動けるか」を追求することです。これは、単にもっとよく働くとか、同じリソースをもっとうまく使うという話ではありません。

大切なのは、他の会社が普通はしないことをする、あるいは他の会社がすることをしない、ということです。その理由はブリッツスケーリングは不確実性の高いことや、効率の悪いことを進んで受け入れようとしているからです。

もちろん、時として速く動くためにリスクを取る必要もありますが、だからといって、不必要なリスクを取る必要はありません。ブリッツスケーリングはリスク管理もきちんと並行させることが重要です。

ブリッツスケーリングをやめるタイミング

ブリッツスケーリングは強力な戦略ですが、永久に続くものではありません。実行するのは、市場が大きいか、急成長しているか、できればその両方があてはまるときです。

ブリッツスケーリングの大きな課題は、会社が今の戦略に収まりきらなくなったタイミングを見極めることであり、もちろんその時は実行を停止したり、方向転換をする必要があります。その指標は以下の通りです。

・成長速度の低下(市場やライバルと比べて)
・ユニットエコノミクス(顧客あたり粗利益)の悪化
・従業員ひとりあたりの生産性の低下

第1ステージの創業者の役割:自分で考える

第1ステージ(ファミリーサイズ)では、創業者は自分で隅々まで会社の成長をコントロールできます。こうした初期段階ではリーダーは自分でブリッツスケーリングの手立てを考える必要があります。

ビジネスがサービスをユーザーに届けるスピードに依存しているなら、創業者はユーザーにサービスを使ってみようとするメールの文面も書かなければなりません。

第2ステージの創業者の役割:チームを指揮、監督する

第2ステージ(部族サイズ)では、創業者は実際に作業する社員を指揮する立場に移ります。組織がある程度拡大すれば、創業者はチームを指揮、監督することになります。

一部は自分で作る必要がありますが、価値の大部分は社員のチームが作り出している状態です。創業者の役割は、生産性をできるだけ高まるよう、チームの運営を助けるところにあります。

マネジメントのイノベーション:大きなチームへ

ブリッツスケーリングを実行する組織が最初に対応すべき経営上の課題は、小さなチームから大きなチームに変わることです。急成長する会社が、小さなチームを集めた組織をつくろうとしている場合でも、目標や取り組みを完遂するには、それまでとは大きくことなるアプローチが必要になります。

その際には、幹部職の入れ替えも必要となります。会社のスケーリングに、今の幹部がスケーリングできなければ、当然成長スピードが停滞するからです。チームの変容は、各社員のキャリアアップにも関連してきます。

マネジメントのイノベーション:スペシャリストへ

ブリッツスケーリングを実行する組織にとって、ゼネラリストからスペシャリストへ変化することも重要です。ブリッツスケーリングの初期段階では、スピードと適応力が必要なので、頭の回転が速く、不確実で変化の速い環境で様々な仕事を片付けられるゼネラリストが多いに重視されます。

しかし、会社が成長するにつれ、代わりのきかない、スケーリングに不可欠なスペシャリストを採用する報告にシフトする必要があるのです。

マネジメントのイノベーション:マネジャー、そして幹部へ

「マネジャー」と「幹部」は同じ意味でつかわれることが多いが、本書では、役割が異なるとあります。マネジャーは前線のリーダーとして日々の戦術で気をもんでいます。詳細に計画を立て、具体化し、実行し、組織が新しいことを始めたり、効率よく働けるようにしたりするための戦術を指します。

一方で、幹部は、マネジャーを指揮することにあります。通常幹部は担当者を直接管理しません。変わりに、彼らはビジョンと戦略に集中するのです。会社が「村」のステージになると、幹部が必要となります。

マネジメントのイノベーション:対話型から放送型へ

ブリッツスケーリングの過程で大きく変わるのが、社内コミュニケーションの方法です。会社が急成長するにつれて、非公式の個人的な対話から、公式、電子的、プッシュ型、プル型といった特徴をもつコミュニケーションに変えなくてはいけません。

また、全情報を共有していた習慣を変えて、秘密の情報と共有してよい情報を分けるようにする必要があります。

まとめ

本書を選定した理由は、御社のWebチームというプロダクトが3Q~4Qのタイミングで、どういった成長戦略を取るべきか模索するためです。『経営視点』『マネジメント視点』で本書のブリッツスケーリングを採用したいと思ったのも選定理由の一つです。

2Qで仕組化を進めるという視点で、プロダクトを動かしていますが、実際3Qや4Qで月額2500万円に到達させるためには、今の自分の視点では足りないという不安を改めて感じていました。それこそ、プロダクトを急成長させる必要があるからです。

今回、本書を読んで、以前社長がおっしゃっていた、スケールするときとスケールを止める(仕組化を進める)違いを明確に理解することができました。また、とにかく「スピードに集中する」とにかく「成長に集中する」という観点で考えると、3Qと4Qはまさにこのタイミングで、本書で言う効率は犠牲にしたとしても、拡大思考で攻め続ける必要があるという点に気づきました。

今(2Q)はマネジメントも売上についても、守りのタイミングではありますが、正直なところ守っていても、なかなか成果に繋がらない点に悩むことも多く、攻める割合と守る割合を随時調整する必要があると感じています。

本書では名立たる世界的企業が例として上がっていますが、御社Webも市場が大きく、効果性が高いサービスなので、自分たちのスキルアップは必要不可欠ですが、とにかく成長に集中する点を考えていきます。

また、マネジメント領域において、幹部の入れ替え、ゼネラリストではなくスペシャリストへという点を直近の自分が必要とされる要素となっており、本書を読んで更に腹落ちさせることができました。

会社が上場する、御社Webがメインプロダクトになることにあたって、自分がスケールしなければならないと、改めて痛感しました。メンバー視点まで視座を下すのではなく、幹部の視座で物事をすべて捉えるようにします。

まだまだ、自分は甘すぎる。







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