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【考察⑨】〜高校野球・新基準バット〜

以前にも記した通り、高校野球では、今春のセンバツから新基準バットへ変更となりました。

主な目的は、打球によるケガ防止や投手の負担軽減などのためです。

そのため、これまでより反発力が抑制され、打球速度が落ち、いわゆる“飛ばない”バットとなりました。

「木製バットに近い形になる」ということですので、選手はしっかりとバットを振り切って、しっかり芯に当てて打たないと、速くて遠くまで飛ぶ打球が打てなくなります。

実際に、今春のセンバツ甲子園では、31試合で本塁打はわずかに3本(その内1本はランニングホームラン)と激減しました。

現任校に異動して3年目。

高校野球の現場から離れて2年が経ちました。

センバツの甲子園はテレビ放映で観てはいましたが、現場で実際の打撃の場面はちゃんと観ていませんでした。

そのため、ゴールデンウィーク中の春の埼玉県大会・準決勝を、日程も合ったので観戦しに行きました。

▲ 春季埼玉県高等学校野球大会・準決勝のようす
(県営大宮公園野球場にて)

高校野球を観る機会が減っていたなかでのバットの変更でしたので、感覚として実際に観るとどう感じるのか、興味関心がありました。

今回の観戦では、横から見て外野へのフライの軌道がわかりやすい、レフト・ライトの奥のポール際から試合を観戦してみました。

▲ 春季埼玉県高等学校野球大会・準決勝
(第2試合途中・スコアボード)

まず感じたことは、打球の失速具合です。

芯をとらえられなかった外野フライが全然伸びません。

準決勝でも、内野と外野の間にフライが落ち、ヒットとなる場面がありました。

多くのフライは放物線を描いて外野へ飛んでいきますが、芯を外して失速したフライは失速して、内野と外野の間にキャッチャーフライのように垂直に近い形で落ちてくるなぁと感じました。

内野手も打球を後方に追う形になるので捕球が難しいですし、外野手も打球が自身の方へ飛んでこない分、グラブの土手の部分に当ててしまい失策してしまう可能性もあります。

チームとしての内外野の間のフライの処理能力が重要になってくるかもしれません。

また、内野ゴロが思ったよりも打球が遅く、バントもこれまでより打球が死んでいる感じがしました。

そのため、打球が来るのを待って捕ると、送球が遅れて一塁送球が間一髪のタイミングになってしまう可能性があります。

早く捕って早く投げる”ということがより求められるようになると思います。

内野手は“しっかり足を動かして”打球の処理をすることをより心がける必要があると思います。

ポジショニングとしては、内外野ともに少し浅めでよいのかもしれません。

ですが、必ずしもすべての打球が飛ばないわけではありません。

芯をしっかり喰った打球は、これまでと変わらないくらいの飛距離が出ますし、打球速度も速いです。

良い打球と良くない打球の差が大きくなったと捉えておくのがよいかもしれません。

攻撃側としては、しっかり芯を喰った打球で浅く守っている外野手の間を抜くライナーの打球を打てるようにしたいものです。

それが最も長打になる確率が高いような気がします。

守備側としては、浅く守りつつ、外野の間を抜かれて長打にならないように、相手打者のスイングの特徴を見ながら、左中間・右中間を締めて守りたいものです。

最後に、打球音です。

旧基準バットに比べて、甲高い音がする印象がありました。

ですが、必ずしもそうではないようです。

花咲徳栄高の選手が放ったフェンス直撃の素晴らしい打球などでは、インパクトの際の打球音が聞こえませんでした。

“ガツン”と打ったというより、ボールを“乗せて”打った感じなのだと思います。

インパクトの打球音だけで判断するのではなく、バットとボールのインパクトの仕方を注視しながら瞬時に判断していくことも、外野手に求められるスキルになってくるでしょう。

▲ 春季埼玉県高等学校野球大会・準決勝のようす
(県営大宮公園野球場にて)

今回は、春の埼玉県大会・準決勝を観戦して感じた、新基準バットについて述べました。

こういうことを感じるのも“変わり目”のタイミングだからこそだと思います。

きっとこの先の未来の高校球児たちは、この新基準バットを用いた野球に順応していき、しっかりと芯をとらえて長打をガンガン打っていく、そんな時代がまた少ししたらくるのでしょう。

長年指導していく指導者の側が、しっかり時代の変化を掴み、順応していくことこそが最も重要なことなのかもしれません。

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