エスタックODの話

市販薬ODでよく使われる薬はどれなのか、そんなことは調べればすぐに出てきます。
どの薬をどのぐらい飲めばやる気が出るとか、ふわふわできるとか、有名な薬なら、ググればすぐに知ることができます。
私ももちろん(と言っていいのか分かりませんが)、OD界隈でメジャーな市販薬も飲んでいます。
ですが、せっかくなので今回は、私が飲んでいる市販薬の中で、OD界隈ではそれほどメジャーではない市販薬の話をしたいと思います。

エスタック総合感冒です。

なぜそれほど使われないのか、答えは簡単です。
気持ちよくなれないからです。
やる気も出ません。
ふわふわ楽しくもなりません。
ふらつき、立ちくらみ、体の震え、唇と舌の痺れ、ろれつが回らない。
脳みその中で小さい虫が大量にうごめいているようで気持ち悪い(いわゆるアカシジアが脳みそに来てるような感覚です)。
いちばんつらいのが吐き気と嘔吐です。
ODによって起こる身体的な苦しさは、酔い止めを飲むことで多少抑えることができますが、エスタックは多く飲むと酔い止めも突き抜けてきます。

おまけに、これは個人差が大きいのかもしれませんが、薬が抜け始めるとものすごく気分が落ち込んで、まるで幼児退行したようにぎゃんぎゃん大泣きします。
ろくに回らないろれつで「さびしいよお〜」「生まれてきてごめんなさい、生きててごめんなさい」なんて喚きながら号泣する姿は、情けなくて誰にも見せたくありません。
なので家に人がいるときは飲みすぎないようにしているし、外では絶対に飲みません。
唯一、別れた夫だけは、結婚していた時期に、私がエスタックで泣き喚くところを見たことがあります。
そのときは私も、まだエスタックの作用をあまり掴めていなかったので、夫が仕事から帰ってくる前にがぶがぶ飲んで、夫が帰宅する頃や寝る準備をする頃にちょうど気分が落ちる時間になっていました。
申し訳ないことをしました。


さて、こんなわけの分からないODを、私はなぜやめられないでいるのでしょうか。
自分なりに考えてみて、理由は3つあると思います。

①自傷行為として飲んでいる。
これは分かりやすいです。
自分の体を痛めつけるために、わざと苦しくなるような行動をとっているのです。

②無理やりにでも休むため。
私は休息をとるのがド下手くそです。
それもメンタルを壊した理由のひとつでしょう。
しかし、エスタックを飲むと動けなくなり、横になっているしかありません。
つまり「何もせず休むだけの時間」を作ることができるのです。
こうでもしないと、ただ横になってぼんやりしていたい、という望みの実現を自分に許せないのだと思います。
まあエスタックを飲んでも、先述した様々な症状に襲われるので、心も体も全く休めません。
でも切羽詰まっていると、そんなことは頭から吹っ飛んでしまうのかもしれません。

③普段抑えている感情を発散するため。
最近こそ涙もろくなりましたが、私は元々、人前で泣くほうではありませんでした。
今だって、ひとりで泣くとしても、しくしく、めそめそ、という感じです。
悲しいとか寂しいとか、声に出して人に伝えることも、独り言として出すことも、ほとんどありません。
そうやって溜まりに溜まった感情を、エスタックによってダムを決壊させ、がんがん外にぶちまけているんだと思います。
実際、エスタックによる大泣きでも、泣いたあと特有のさっぱりした感じはあります。
悲しい寂しいと何時間も泣き喚いて、すっかり薬が抜ける頃には、「ま、孤独でもしゃーないか」という気持ちも僅かながら出てきます。
それ以上に「またやってしまった」という後悔や情けなさは大きいですが。
そうやって数日、数週間、数ヶ月おきに気持ちの大放出を行うことで、日々を乗り切れているのかもしれません。


効果が続いている間や、抜けていくときはめちゃくちゃしんどいし、後悔するし、「もう二度と飲まない、もうやめたい」と思います。
へにょへにょの字で「エスタックやめろ、きがくるうぞ」と、しらふの自分に向けて書き置きを残したこともあります。
でも、時間が経つとまた飲んでしまいます。
自分が依存症であることをひしひしと実感します。

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