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「メタバース さよならアトムの時代」を読んで

1.始めに

 今回のnoteは、クラスターCEOの加藤直人氏の「メタバース さよならアトムの時代」についてのnoteで、同書のKindle版発売日に私がツイートした内容をベースに掘り下げたものになります。なお、このnoteの執筆を考えた時点ではツイートと同じく、内容のネタバレを避ける方針でしたが、色々と理由があり、必要最小限のネタバレを行う方針に変更しました。

「メタバース さよならアトムの時代」表紙


2.該当ツイート

 当該ツイートを順に並べると以下の通りになります。内容的には①~③のツイートと④~⑤のツイートでは内容が変わるため、それに合わせた構成になります。






3.「メタバース さよならアトムの時代」を予約するまで

 「餅は餅屋」ということわざがあります。「その道のことは専門家が一番」という意味合いの言葉です。そして、ニュースなどで「メタバース」という言葉を見る機会が増え、さらに様々なジャンルの人々が「メタバース」に関する情報を発信するようになったため、情報の受け手からすると「どの情報を信じれば良いのか?」という問題がでてきます(ニュースでも「メタバース」という単語が使われる記事が増えたと感じますし、SNS上でも同様の傾向が見られると感じます)。そもそも「メタバース」(ここで言う「メタバース」とは「サマーウォーズ」の世界における"OZ"や「レディ・プレイヤー1」の世界における"オアシス"に相当する規模のものを想定しています)が存在しない2022年4月時点において、情報の受け手側の問題として、誰が語っている「メタバース」の情報が精度が高いのか?という部分を判断する必要が出てきます(これは、メタバースに限った話ではなく、他の分野においても情報の受け手側の問題として出てくると思います)。私なりの判断基準としては「専門家に聞く」であり、これをメタバースに当てはめた場合、VR SNSである"cluster"のCEOをされている加藤直人氏の書籍を選ぶというのは妥当性が高い判断だと考えています(他に個人的な理由として、私自身がTwitterで加藤氏をフォローして発言を追ったり、clusterでのお話を聞いて判断材料に出来たため、メタバースに関しては、理想論にとどまらず地に足の付いた話が聞けそうで、発言には信頼が置けると判断したことや、clusterの公式情報番組である"ハロークラスター"を見ているから、という部分も割と大きいと思います)。本の情報が出た段階で電子書籍が出るかどうかを確認した上でKindle版を予約しました。

4.①~③について

本としての感想は、現状で「メタバース」に関する内容が広く、それに合わせて広範な内容を取り上げていること、そして、歴史まで深掘りし、丁寧な説明がされているので、全体的な分量は多いですが読みやすい印象です(「メタバース」という言葉が2022年4月時点で広範な分野で使われていること、そしてそれらを歴史を含めてしっかりと説明する場合、文章の量が増えてしまうのは仕方の無い所だと感じました。ぎっしり内容が詰まった本なので、普段本を読み慣れていない方は無理せずに、少し読むペースを下げて読んだ方が良いと思います)。4章は章の頭にVR技術の歴史やテクノロジー自体に関心の強くない方は章の頭に読み飛ばして構わないと書いてあるので、時間が取れない方はとりあえず章末のサマリーだけ読んで、メタバースの未来について書かれている5・6章を先に読んでしまっても構わないと思います(私はこの本の中でもエキサイティングな内容であると思います。ただし、VRを歴史的な文脈などから捉えることが出来るので、4章の本文も読んでおいた方が良いと感じます)。私は発売日に行われたクラスターの公式情報番組である「ハロークラスター」までに全て読んで感想を述べる予定だったので、その日は精神的にかなり疲れた記憶があります(タイトルのサムネイル画像はその日の「ハロークラスター」で私が撮った画像です。この直前にクラスターから「メタバース さよならアトムの時代」の本のアバターが配布され、私を含め、多くの方がそのアバターで参加されましたネームプレートを非表示にしてあるので見た感じでは分かりにくいですが、画像中央やや右の「メタバース さよならアトムの時代」のアバターの中の人が加藤氏です)。ちなみに、このnoteを書くために読み返しましたが、"何でこんな分量を1日で読めたのか?"という位には分量がありました。加藤氏が「この本の執筆は大変だった」という旨の話をされていたと記憶していますが、ここまでしっかりと調べて内容がぎっしり詰まった本を書くのはかなり大変だったと思われます(VRに関する事業を運営されていることもあり、VRやメタバースに対して誠実に向き合ってらっしゃるという印象を受けました)。また、この本以外で加藤氏が発信されているメタバース(とVR)に関する情報や価値観と比較しても、特に内容的に違和感はなく、読んでいて「いつもの加藤社長だ」と思いました。

「メタバース さよならアトムの時代」発売当日のハロークラスターでの自撮り画像


5.④~⑤について

 後半のツイートを解説する上で、まず、故 スティーブン・ホーキング博士についての解説を行います。同氏はイギリスの理論物理学者で、ケンブリッジ大学の「ルーカス教授職」というポスト(ホーキング博士以前に務めた人物として、ニュートン力学を確立したアイザック・ニュートン、「コンピュータの父」と呼ばれるチャールズ・バベッジ、量子力学及び量子電磁気学の分野で多くの貢献をしたポール・ディラックといった錚々たる名前が並ぶポストになります)を務めた人物です。ブラックホールなどの関する研究などで知られ、同氏の名前を冠した「ホーキング放射」(ブラックホールからの熱的な放射のこと)を発表するなどの功績があります。

 同氏の研究以外の功績の一つとして、サイエンスライターとしての功績があり、Twitterでも挙げた「ホーキング、宇宙を語る」や「ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう」といった書籍を執筆されています。同氏に関するエピソードは多い(イギリスのコメディグループである「モンティパイソン」の復活ライブに出演するなど)のですが、エピソードを説明すると長くなるので興味がある方は各自で調べて下さい。先ほど挙げた本のうち、「ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう」に関しては、電子書籍が出ていますので興味をもたれた方は一読をお勧めします。

 「メタバース さよならアトムの時代」とは取り扱うジャンルが異なり、扱う内容も異なりますが、"最新のトピックを平易な言葉を用い、内容の質を落とさずに可能な限り分かりやすく解説する"という書籍の方向性、そして人間の「想像力」に言及している部分は共通していると感じます。

 余談に近い内容になりますが、「メタバース さよならアトムの時代」の「おわりに」でカリフォルニア工科大学に在籍されたファインマン教授の名前が挙がっていますが、同大学には同氏の名を冠した「ファインマン教授職」というポストがあり、そのポストに1991年からついておられるキップ・ソーン博士が「ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう」に解説を寄稿されています。

6.余談

6-1.余談1

 余談になりますが、私はメタバース(書いたときはメタバースという言葉がそこまで一般的ではなかったですが)を舞台にした小説を書いたことがあるのですが、この書籍を読んだことで、舞台となるメタバースの設定の再考が必要だと考えるようになりました(最も、小説自体がかなり時間が限られた中で書いたので、メタバースの設定以外にも考えないといけない点は多いのですが…)。具体的なポイントでは、「メタバース さよならアトムの時代」の1章でメタバースの条件について触れられており、その中で挙げられている中で、「相互運用性」と「自己組織化」が挙がっていましたが、この部分は明確に再考が必要だと考えています(元々、小説を書いていたときに舞台となるメタバースを運営する組織は一つだと考え、実際にそう思わせる描写もあるのですが、ここは設定から考え直していく必要があると考えています)。また、2章に"一握りのトップクリエイターだけが輝けるアーキテクチャは脆い"と書かれているのですが、個人的な感触とも合い、賛同できる意見なので、作中では、「多くの人が輝けるアーキテクチャ」を構築(といっても設定として考えるだけで、実装を加味する必要がない所は楽ですが)していきたいと考えています。

6-2.余談2

 (余談ではありますが、メタバースとは全く関係の無い内容なので分けました)
 「メタバース さよならアトムの時代」を読む時期に、独ソ戦を扱った大木毅氏の「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」(岩波新書)も読みました。「メタバース」は関係しない本ですが、「歴史」を扱う内容がある部分は共通しており、ジャンルは異なっても、内容に「歴史」(「時間の流れ」と言い換えても良いと思います)を扱う場合は「膨大な資料を参照しながら書く」という書き方が必要になると感じました。
 (こちらの本は戦闘以外に政治情勢やイデオロギーなどに踏み込んだ内容となっており、興味がある方は一読をお勧めします。ただし、書籍の名前から想像できる方もいらっしゃると思われますが、ショッキングな内容を含んでいる点は注意が必要です)

7.関連書籍・他

メタバース さよならアトムの時代 (集英社ノンフィクション)


ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう


『「引きこもりを加速する」から生まれた「サイバスフィアフローズ」』加筆版

独ソ戦 絶滅戦争の惨禍


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