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終電逃した時のタクシーになるべく乗らないようにしている話

■はじめに

 こんにちは、花倉みだれです。
 私は以前タクシードライバーをやっていました。
 なので、思い出したかのようにそういう職業トークをしたくなる時があります。それが今です。
 今回は「終電逃した時のタクシーが危ない」という話です

■終電逃したらタクシー乗る?

 飲み会終わり、解散して1人、終電を逃している……。
 そんな時、皆さんはどうしますか?

 結構多くの方が「タクシーで帰る」という選択を取るものと思います。
 ですが、私は基本的には避けています。それは自分がドライバーとして見聞きした情報を総合しての判断です。
 具体的にどうするかと言えば、その場で(簡易)宿泊施設を探して朝帰ります。

■なんで避けているか

 基本的に夜のドライバーは危ないと思っているからです。
 タクシードライバーの大半は、1勤1休のシフトで動いています。この「1勤」は2営業日分の稼働をすることになります。だから翌日休みなんですね。

 具体的には、朝のピーク時に間に合うよう、5:00~8:00のフレックスな感じでスタートして、終電逃した人を拾える24:00~28:00くらいのフレックスな感じでやって終わる感じだと思います。
 終業するまで、3.5h程度の休憩は取っているとは思います。

 正直これ、体力的には結構厳しい部分があります。
 早朝~深夜まで、人を載せて運転しっぱなしですからね。
 しかもタクシードライバーの平均年齢は非常に高く、60代,70代だっていてもおかしくないです。
 散々高齢者ドライバーがどうこうとヘイトを買っている世の中、そんな人達が長時間運転し続けた疲労のピーク、それが「私たちが終電を逃した時間」と一致してしまうのです。

 私はよく、休憩所とか研修中、お爺さんドライバーから「深夜、帰るころに意識飛んで、気づいたら信号3つくらい進んでたことあったけど無事だったぜガハハ」みたいな武勇伝を聞かされていました。複数人から。

 さきほど言った「休憩は3.5hくらい~」というのも、どれくらいしっかり休めているかというのは結構疑問だったりもします。
 基本的には薄給のお仕事なので、有料のパーキングを使うドライバーはあまりいません。営業所が持ってる休憩所があるとか、営業所そのものが点在してて広いPと休憩スペースを持っているといったパターンもありえますが、都会に近づけば近づくほどそういうのから遠い環境にある気がします。そもそも無料のPがついていて気軽に寄れる場所が貴重だったりしますからね。
 結果、「いつでも出られるよう運転席で、比較的取締りが少ない場所で昼寝」くらいがMAXなんじゃないかなと思います。運転席に限らず車で寝ちゃったことある人は結構いると思うんですが、疲れ取れますか?
 私は全然取れたことないです。
 つまり、そういうことです。

 また、良くも悪くもプライドがスカイツリーなお爺さんたちがタクシードライバー界には多く細い道、暗い道をカーブの多さなど気にせず「近道だから」と選びたがりカーナビは機械が苦手だと使いたがらず、ハイビームを使わず(ハイビームかっこ悪い、みたいな風潮はすごくありました)進む傾向があります。
(これはしっかり指示すれば守ってくれることも多いでしょうけど、後述する焦りもあって、そもそもあんまり出発前の指示に時間かけると不機嫌になる人も多い気がします)

 さらに、地理的な差異は多少あるでしょうけど、24~26時くらいまでの間は「終電を逃した」「できれば長距離の人」を捕まえるモチベーションが非常に高い時間帯です。
 「もう一回駅に寄れるかも」みたいな距離感と時間だった場合、ドライバーの心理は「次の営業(ができるか)」に意識を持っていかれています。
 端的に言うと、急ぎがちです。目の前の黄色の信号で左折を強行するかしないかでその日の売上が5kくらい変わってしまうかもしれない、みたいな世界の時間なのです。良くも悪くも……。

 高齢ドライバーが疲労のピークの状態で、暗い中暗い道を、急ぎがちのメンタルで進む車、乗りたいですか?

 私は乗りたくないです。
 というか、怖くないですか? 危なくないですか?
 だったら朝まで待って、安心安全電車でことこと揺られるか、タクシー乗るにしても疲れてないドライバーの車に乗るほうが安全ってものだと思います。

■どうしてこんな勤務形態なのか。例外はないのか

 基本的にほとんどの会社で朝から深夜までを1勤務(2営業日扱い)で回していると思いますが、部分的に午前午後とか日中と夜とかそういうシフト制を採用している会社もあります。
 私はシンプルに高稼働老人ドライバーの車に積極的に乗ることのリスクを説いているわけなのでこれが高稼働じゃない人であればかなりリスクは軽減されるものと思います。

 ですが、私が知る限りこれを安全やお客様の利益のためにと採用している企業は見たことありません。人手不足解消のためにやっているというところでしょう。なので「1日1営業分の稼働する人しか世に出していません」という会社はないと思います。両方いても、1営業分しか動かない人は少数派です。
 ましてや、配車を依頼した際に条件指名で「朝から稼働してない人をお願いします」なんて言うリクエストもほぼ通らないでしょう。(無線取ってる人たちがそれを把握しているオペレーションじゃないでしょうからね)

 なので、例外をもって、リスクはないよ、というような話は無理があろうと思います。

 ではどうしてこんな危ない形態がまかり通っているのかというのを自分なりに想像すると、そうしないと稼げないからなんだろうなとは思います。

 結局、朝の始業の時間、夕方の帰宅時間、終電時間、この3回のピークに走らないことには話にならないのです。
 また、同じ車をその日のうちにリレーするのも、洗車したりなんだり、押し巻きをフレックスにどう対応するかだったりといったところでオペレーション的に面倒なものなのかなと思います。
 ピーク時以外は顕著に需要は減るわけですが、かと言ってその時間に一切街に走ってないのも商機を失ってしまいますし、この3つの時間を餌にそれ以外の時間も営業してもらえると助かるわけですよね。
 この辺を考えると、ドライバー側と営業所側の思惑として「朝から深夜まで1人で走る」というのは相応の合理性があるものになってしまっているんですね。

■終わりに

 私は結構、外に出ることに強いストレスを感じるタイプです。目的地そのものというより、道中が辛い。
 歩道を歩けば軽車両に、電車では門番に、バスは高密度に、ひどく心を抉られます。
 その点、一般車で目的地まで行くのは本来比較的に楽な移動手段です。

 実際のところ、そこまで深夜のタクシー事故の報道は聞かないのも事実なので、私が言っているリスクほど実際は危なくないのかもしれません。
 とはいえ「昔の中の人」として、恐怖を感じる選択肢である、という話をWebの海に置いておくことは、何かしらの価値があるのではないかなと思います。
 解散するのは勿体ないけど電車がなくなったからタクでバラバラに帰るしかないか……みたいなシチュエーションで、さらに飲み歩く口実なんかに使ってもらってもいいんじゃないかなと思いますしね(笑)

 庶民的に比較的利用しやすいタクシーが、その信用度であまりアテにならないというのは結構生きづらさに繋がってしまうな~~とか思ったりします。
 なんかいい感じに改善してもらうことを、ゆるゆると期待したいな~と思います。

 まぁ、自家用車と専属ドライバー持ってればどうってことない話なので、そういう意味では一発超大金持ちになりたいところですね(笑)


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