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ラマダン中のインドネシアに滞在して

今年は3月23日に開始、4月21日頃まで1ヶ月続くラマダン。期間中にインドネシアに滞在した記録を残したいと思います。

ラマダンとは

ラマダン(Ramadhan)は月の満ち欠けを基準としたヒジュラ暦(イスラム暦、太陰暦ともいう)の第9月を指します。この月は、日中飲食を断つことがイスラム教徒の信仰上の5つの義務「五行」の1つとして行われます。

断食だけではなく、悪口や嘘、喫煙、性行為なども慎むことが求められます。

断食について

断食する行為のことをアラビア語では「サウム」インドネシア語では「プアサ(puasa)」といいます。日の出前4時頃「スブ(Subuh)」のお祈り「ファジャル(Fajar)」までに、朝食「スフール(Sahur)」を済ませ、18時頃の日没直後のお祈り「マグリブ(Magrib)」の後の食事「イフタール(Iftar)」まで、飲食をしないことになります。

以前滞在していた時に食事の仕込みの手伝いをした葬儀の際、お祈り後その場で食事がでましたが、ラマダン中にそのような式がある際には、お持ち帰りになることがわかりました。お持ち帰りのお弁当の中にナツメヤシが3粒入っており、ラマダンを考えた内容となっていました。

お持ち帰りのお弁当
野菜と一緒にナツメヤシ

そういえば、ナツメヤシが市場やコンビニでよく目に入る位置にあるなと思っていました。

プアサ明けの食事はまず水を飲み、ナツメヤシを食べて体を慣らしてから食事が始まるとのことです。なぜナツメヤシかというと、預言者ムハンマドの生前の行為にならって食べるようです。

イスラム教徒全員が必ず行わなくてはいけない訳ではなく、病気の人や高齢者、妊婦や授乳中の女性、乳幼児は免除されます。生理中の女性や旅行者も免除の対象になるようで、免除になった日数分をラマダン月とは別に行うようです。子どもはだんたんと慣らしていくようですが、私の周りにいる子どもたち(小学3、4年生)はすでに大人と同じようなプアサをしているようです。

空港の飲食店 ついたてでパッと見えないように配慮

断食の理由

最近ですと健康のためのファスティングなどがありますが、日中暑い時に、食べ物も飲み物も(もちろん水も!)14時間程断つ行為は、1ヶ月もキツくないのかと考えていました。

しかし、ラマダンは待ちに待った月のようで、「Selamat Menunaikan Ibadah Puasa=Happy fasting(幸せな断食)」というバナーを街中で目にします。

銀行の入口上のバナー

ラマダンの目的は、信仰心を清め、神に近づくための期間であるとのことです。食やその他の欲、悪い行いを断つ、慎むことで意志を鍛え、日々の恵みに感謝し、富めるものは貧しいものに施すことで、他者の気持ちを理解する、そのような意味も含まれています。

また、善行がより積み重なるといわれるボーナスの期間でもあるようで、ただただ辛い1ヶ月という訳ではなさそうです。

家族がいる女性の友人に聞いたところ、午後3時から6時のプアサ明けに向けて毎日食事を作っているそうで、彼女自身料理が好きで、人のために作ることで良い行いとして、より神様とのつながりを深められると思っているとのことでした。

1ヶ月の断食の終わりにやってくるのが、断食明け大祭の「レバラン(Idul Fitri)」です。今年は4月22-23日で、レバランの前後1週間程は学校も会社も行政もお休みになり、日本でいうゴールデンウィークのような感じになるそうです。

その日に着る服を買いに行かなくちゃ……と普段自分の物をあまり買わない友人が言っていて、気合いが入るときなんだなと伝わってきました。私はその前に帰国するのでレポートができませんが、現地の様子を日本から聞いてみたいと思います。

普段と変わったこと

お祈りが長くなった、声が大きくなった(気がする)

朝は3時前に「起きろ〜、起きろ〜(Ayo bangun bangun)」とモスクから聞こえ、私も起きます(そして2度寝へ)。お祈りは、4時頃、12時頃、15時頃、日没前、日没後18時半〜22時頃まで聞こえてきます。プアサ中は、お祈りに加え、説教や、17時過ぎにプアサ明けの時間まで〇分という放送もあります。

学校、仕事の時間が変わる

学校は普段、朝7時頃から、小学生はお昼前、中学生は13時頃、高校生は15時頃までです。プアサ中だと、だいたい1時間終了が早くなるようです。行政は、普段は朝7時から16時までのところ、朝8時から15時までとなっています。

午後2時頃から5時まで買い物のために人混み交通が激しくなる

ナシクニン(朝ごはんの定番の黄色いごはん)などが買える朝の食堂は、普段7時くらいから開いていますが、プアサ中、午前中は閉まっているようです。お昼頃〜夕方に開店し、惣菜を売っているのを見ました。

ラマダンが始まる前から、友人や近所の人に言われていたのが、パサール ラマダン(pasar ramadhan)で、ラマダン期間限定の屋台が町の中心にあるモスクの脇に開いていました。

ラマダン中の屋台
お菓子や惣菜がたくさん
賑わう夕方の市場

朝方は寝ている人が多いのかいつもより静かで、気持ちが良いなと感じていましたが、その反動で夕方前から道がいつにも増してざわざわ、ちょっとしたお祭りのようで、不思議な感じがしています。

考えたこと・感じたこと

ラマダン期間に関わらず、インドネシアは人とのつながり、特に、家族のつながりが強いと思っていましたが、この期間はより深くなっている感じがしました。ご飯を家族みんな、親戚も集まって毎日食べるようで、1回、お世話になっている人の夕飯にお邪魔しました。植林でお世話になっている友達は、小学校、中学校、高校などの友達とも会って食べにいくとのことです。日本でいう、年末年始みたいな感じなんだろうと思いました。

日本に住んでいると身近にイスラム教の方がいないため、ほとんど意識しなかったラマダンですが、ラマダン中のインドネシアに滞在し、いかに宗教が身近にあるのか、体感した経験になりました。

振り返ると、インドネシアの学校の授業には必ず宗教の科目がありますが、日本はそのための科目はないし、歴史や社会で少し触れる程度だよなと記憶しています。

宗教を学ぶことは、文化を学ぶ面もあり、海外に行く人にとっては押さえておくべき1つのことだと改めて思います。何度か「日本の宗教って何?」とか「何を信じてるの?」とか聞かれたことがあります。自分の考えや信条は持っておいて+人の考えや信じるものを受け入れることが大事だなと、お祈りを聞いていて感じました。


参照

イスラム教の文化:ラマダンを知っていますか?

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