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数え上げることの難しさを知る

カバー写真は、UnsplashNick Fewingsが撮影した写真です。

今回は小学校3年生の内容を読み解いていきましょう。文部科学省による学習指導要領解説は次のリンクから読むことができます。「算数編」(以下「解説」)の3年生D領域を読んでいきます。いよいよ、統計学らしくなってきます。

3年生

3年生D領域の内容は次のようになっています。

D(1)表と棒グラフ
(1)データの分析に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付ける
 ア:知識及び技能
  (ア)日時の観点や場所の観点などからデータを分類整理し,表に表したり読んだりすること。
  (イ)棒グラフの特徴やその用い方を理解すること。
 イ:思考力,判断力,表現力等
  (ア)データを整理する観点に着目し,身の回りの事象について表やグラフを用いて考察して,見いだしたことを表現すること。
 (内容の取扱い)
(8)内容の「Dデータの活用」の(1)のアのイについては,最小目盛りが2,5又は20,50 などの棒グラフや,複数の棒グラフを組み合わせたグラフなどにも触れるものとする。

「解説」より

記述内容がずいぶん増えました。1年生、2年生からの変化を少し整理してみましょう。まず、知識・理解から。

知識・理解のまとめ

*整理の仕方
 1年生:簡単な絵や図 2年生:簡単な表やグラフ 3年生:表および棒グラフ
*整理の次元
 1,2年生:1次元 3年生:2次元
*整理の観点
 1年生:なし 2年生:分類整理 3年生:日時や場所で分類整理

難易度が増しているのは、整理の仕方が2次元になっていること、そして、「棒グラフ」というより抽象度の高い表現が求められていることです。
また、整理の観点として「日時や場所」と明示されていることにも注目しましょう。3年生になると、生活科がなくなり、理科と社会という教科が新たに加わります。時間ごとの気温の変化(いずれ棒グラフで表すことになります:4年生かな?)や、地域ごとの気温や降水量の違い(複数の棒グラフ+折れ線グラフを比較する活動がいずれ行われます:おそらく5年生以降)など、これ以降の学習で応用範囲の広い観点が取り入れられているといえます。
心理統計では、気温や降水量の変化はおそらく扱わないでしょうから、この「日時や場所」による整理はスルーしましょう。

重要なのは、2次元の表の作成の部分です。
「解説」には、1組と2組で「好きな遊び」を調べ、それを2次元表や棒グラフに表す例が示されています。また、〔数学的活動〕の例として、道路を通る歩行者や車両の数を、場所ごとに数えて整理する例が示されています。
2次元の表を作って整理するのですが、表頭や表側にどんな項目を並べればよいのか、合計欄を作るとすると全体で何行・何列にすればよいのか、そして、どのマス目(セル)にどの数を転記すればよいかなど、考えることはたくさんあります。加えて、縦横の合計をするのに足し算が必要で、縦横の合計があっているかの検算も必要です。
算数が苦手な子どもはパニック必至でしょう。大人の皆さんはいかがでしょうか。

練習問題

〔数学的活動〕に示されたデータ(「解説」p.178)を再掲しますので、整理してみましょう。ある1時間の間に、それぞれの場所を通る自動車、自転車、歩行者を数え上げたものです。

「解説」178ページより引用

このデータは「方向」の記述がわかりにくいのですが(できれば方位で書いてほしかった)、たとえば、次のようになりますね。(もちろんですが、行と列を入れ替えた表を作ることも可能です。)

2次元の表の例

また、このデータを1つのグラフに表すのはけっこう大変です。横軸に場所+方向を並べて、種類ごとに並べても、あまり見やすくはならないからです。必然的に、どこに注目するかによって、できるグラフが異なることになります。たとえば「解説」では、自動車の数だけを4つの「場所+方向」で比べてグラフにしています。東橋と南小前では、自動車の数に大きな違いがありますから、なぜ違うのだろう、という話し合いが可能になります。

考え方のまとめ

*着目すること
 1年生:データの個数 2,3年生:整理する観点
*考える内容
  1~3年生:身のまわりの事象の特徴を考察すること(1年生のみ、考察ではなく「捉える」)

こちらは、あまり大きな違いは見られません。どうしてかというと、整理する観点が変われば考察の内容も変わりますし、観点が2つになれば、考察の仕方もより難しくなるからです。考察するという態度そのものは、変わりようがないという事ですね。

参考動画

NHK for School に、この内容を扱った動画があったのでリンクしておきましょう。小学生向けなので、大人にはまどろっこしい部分も多いのですが、その部分はしっかり指導したいポイントであると見ることができます。
この動画では、「正」の字を使って数を数えること、マス目と目盛りの入ったグラフ用紙を用いること、などがそれにあたります。
(これくらいのアンケートなら、月~金に紙を分けてから数えたほうが早いかもしれませんが、「正」の文字を使う方が応用が利きます。実際、クラスで何かを決める投票を行うと、1票ずつ読み上げて黒板に「正」を書いていくとよいことを、子どもたちは知っています。)