小学校4~6年生で身につけるデータ処理スキル
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前回まで、小学校学習指導要領D領域「データの活用」を読み解いてきました。今回は、市販のドリル教材に掲載されている問題を参照しつつ、4~6年生でどんなデータ処理スキルを身につけておくことが求められているのか、まとめておきます。前回と同じく、学研の「毎日のドリル」各学年版を参照しています。繰り返しますが、掲載されている問題を引用していませんし、この問題集をお勧めしているわけでもありません。
4年生:折れ線グラフ、2次元表の数え上げ
1つ目は「折れ線グラフ」の読み書きです。折れ線グラフは、一方の値が変化したときに、他方の値がどのように変化するかを表現するものです。小学校段階ではおもに時系列の変化が扱われます。次のような下位のスキルがこれに含まれます。
特定の値や値の変化量を読み取る。
変化の様子について言葉で表現する。
2つ目は「2次元表」への数え上げです。2次元表は、2つ以上のカテゴリから回答を選ぶような質問を2つ組み合わせると作成できます。たとえば、「眼鏡をかけているか」と「きょうだいがいるか」を組み合わせると、2次元表ができます。ただ、眼鏡をかけていることと、きょうだいがいることには、何らかの関係があるように見えませんから、意味のある2次元表とはいえないでしょう。
問題集には、けがの種類とけがをした場所という2次元表が出題されています。これだと、こういう場所ではこういうけがが多い、という関連性が見つかるかもしれません。このような関連性を見つけることが、2次元表を作成するねらいでもあります。当然、そのような読み取りを、問題作成側は期待すると思われます。
5年生:平均の計算、割合
1つ目は平均の計算です。ただ平均が計算できればよいのではなく、問題集では次のような理解も求められています。
平均にデータ数を掛けて、データの総和を求めること
データ数が異なるとき、平均値の平均は全体の平均値にはならないこと
言葉で書くと難しいのですが、次のような問題を考えています。
5年生の2つのクラスの、テストの平均点は次のようでした。
1組と2組をあわせた、5年生全体の平均点は何点ですか。
このとき、(70+78)÷2=74とするのは誤りです。1組と2組では人数が違うので、平均点を足して2で割っても、学年全体の平均点を正しく計算することはできません。どうするかというと、人数で割り算する前の、合計得点を算出し、それを足し合わせ、合計人数で割り算する、という手順を踏みます。
(70×20)+(78×18)=2804、2804÷(20+18)=73.79
さきほど誤りだとした計算結果(74点)と、大きく異なる数値ではありません。1組と2組の人数差が小さいからです。「答えがほとんど同じなのに、なぜそんな面倒な計算をするの?」という疑問(怒り?)を持つ子どもは当然いると思います。人数が大きく異なる問題を出すと、納得感が大きいかもしれません。計算は大変ですけど。
ちなみに、人数を掛けて総和に戻すという計算は、シグマの計算を展開するときにしばしば使う考え方です。私はこのことが直感でわからず、ずいぶん苦労しました。
2つ目は割合ですが、小学校で学習する割合の計算を用いるのは、統計では「相対度数」の計算くらいでしょう。単純集計表や2次元表を作成した時に、相対度数が正しく計算できれば、問題ないと思います。
6年生:代表値の利用、度数分布の可視化、順列と組合せの数え上げ
1つ目は代表値の利用と度数分布の可視化です。次のような下位のスキルがあります。
量的データの平均値が計算できる。
中央値、最頻値が答えられる。
また、度数分布表と組み合わせて、
平均値、中央値、最頻値が含まれる階級を答えらえる。
階級幅を答えられる
ある階級やある階級以下(以上)の、合計度数・相対度数が計算できる
があります。平均値と中央値を比較することは、外れ値の検出と深く関係します。また、最頻値と比較することは、分布のゆがみと深く関係します。
また、度数を正しく数え、それを合計し、その相対度数を計算し、という手順は、計算に苦手な子どもにとってハードルの高いものでしょう。
したがって、表を作る段階で、それぞれのデータがどの階級に含まれるのか、柱状グラフ(小学校ではヒストグラムという用語を使わない)やドットプロットでどこに位置するのかを、しっかり確認しながら作業することが重要であるように思います。細かい作業が苦手な子どもにとってはハードルが高い学習だと思われます。
2つ目は順列・組合せの数え上げです。小学校段階では、図や表を作って正しく数え上げることができればOKです。間違えにくい表の作り方、図の書き方を教えることが有効だと思います。
演習問題
ある試験を97人が受験し、平均点は70点でした。同じ試験を、翌日3人が受験し、それぞれ、92点、94点、66点でした。この3人の結果を合わせた、100人の平均点を計算してください。
40人のクラスでテストが行われました。成績優秀な生徒1人が欠席し、39人が受験した結果、平均点は69.2点でした。欠席した生徒が翌日、同じテストを受験する前に「俺ががんばって平均点を70点に押し上げる」と約束したそうです。この生徒が約束を守るためには、最低何点とればよいのでしょう。