正しく数え上げることが統計の第一歩
カバー写真は、UnsplashのNick Fewingsが撮影した写真です。
今回から、文部科学省が平成29年に告示した学習指導要領を参照しながら、現在の小中学生が学んでいる算数・数学の統計に関する部分を読み解いていきます。
文部科学省による学習指導要領解説は次のリンクから読むことができます。参照しているのは、ここで公開されている「算数編」です。以下「解説」と略記します。
ひとまず小学校の算数について書きますと、算数は4つの領域から構成されています。A:数と計算、B:図形、C:測定/変化と関係、D:データの活用です。このうちD領域が統計関連部分(確率などを含む)です。
上に示した指導要領解説以外に、「統計学習のために」というサイトも参照しています。
このサイトには、統計学習用の補助教材とその指導の手引なども掲載されています。以下、「補助教材」として言及しているのはここに示されている補助教材のことです。
では、1年生の内容を見ていきます。
1年生
たとえば、教科書にいろいろな動物が何匹(何頭、何羽…)かずつ描かれているとします。これを数え上げることが課題になります。「解説」95ページに次のような例が示されています。
これを見て、「ウサギが4羽、ゾウが3頭、…」などと数えて済ますのではなく、図で表すことを求めています。次のようにです。
実際の授業での活動では、このように絵を描くのではなく、キリンが2頭いるので、キリンの列に〇印を2つ描く、ゾウは3頭いるので、ゾウの列に〇印を3つ描く、のようにすると思われます。
こうして、それぞれの動物の「実際の大きさ」(加えてその「生態」「生息環境」「数え方(何匹、何頭、何羽…)」なども)捨象し、数だけに注目させるわけです。
(そもそも、なぜこの4種類で数を比較する必要があるのかも疑問です。)
動物の絵を、〇印などに変えてしまうことで、数の大小だけに注目することができます。数の多い部分は〇印の数が多いので、数が多いことが「視覚的に」わかる。わざわざ〇印を積み上げなくてもわかるのですが、「視覚的に」わかることが、これ以降の学年でのグラフの学習につながるというわけです。
ここまでが「知識・理解」面での学習です。「思考力…」のほうは、たとえば、どんぐりを拾った数を〇印で表して比べた後、一番数が多いのは誰か、あるいは、どこで拾った人が一番多いかなどを話し合うことになるのでしょう。
正しく数え上げること
最初に示した動物の絵で、4種類の動物が、整理されずに描かれていることは、それなりに重要なことです。たとえばウサギを数える時に、どれかのウサギだけ2度数えてしまったり、どれかのウサギを数え忘れてしまうと、正しく数えられません。そのために、たとえば次のような方法がとられます。
赤いおはじきを、ウサギの上に1つずつおく。
おはじきが置いていないウサギがいないか確かめる。
おはじきを別の場所にきちんと並べて、数を数える。
ゾウ、キリン、シマウマについて同じように数える。(もしおはじきの色が4種類あるなら、同時に4種類置くことも可能ですが、指先の器用ではない子どもにとっては難易度が上がります)
大人の目には、非常にまだるっこしい手続きですが、このような手続きが必要な子どもたちが、実際にいると思います。
演習問題
質問紙調査をして100枚の回答が集まりました。
「最終学歴」に対する回答として、高等学校以下、短大あるいは専門学校、4年制大学以上、の3つから1つ選ぶことになっています。回答を拒否している人もいるかもしれません。どうやって数えたら、重なりや落ちがなく、数えられるでしょう。具体的な方法を考えてください。
今はWebで調査するから、紙の質問紙は扱わないよねえ…と思う気持ちはよくわかりますが、紙で集めたと仮定して考えましょう。
スプレッドシートに100件のデータが集まっています。
「最終学歴」の回答として、C列に、高等学校以下、短大あるいは専門学校、4年制大学以上、のどれかの文字列が入力されています。空欄の行もあるようです。
(1)どうやって数えたら、重なりや落ちがなく、数えられるでしょう。Excelの関数を使って数える方法を考えてください。
(2)今後の分析作業のために、「高等学校以下」を1、「短大あるいは専門学校」を2、「4年制大学以上」を3、空欄を半角ドット(.)に変換し、D列に新しい変数「gakureki」を作って挿入します。Excelの関数などを使って、変換する方法を考えてください。
Rが使える方は、(1)(2)をRで実現する方法を考えてください。
(※必ずしも(1)を先に行う必要はありません。)
なお、演習問題の解答例は掲載しません。