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割合の学習はお好きでしたか?

Cover Photo by Dan Meyers on Unsplash

私はずいぶんな年数、小学校の教員をしていましたが、小学校5年生を担任すると、毎回、割合の指導に四苦八苦していました。この内容は、5年生の子どもたちにとって、本当に「鬼門」なのだと思います。(単に私の指導が下手くそだっただけ、という可能性もあるのですが。)
ところで、割合の学習は、D領域ではありません。しかし、割合をそれなりに理解していないと、D領域もまた難しいだけのものになります。

5年生D領域

ア:知識及び技能
(ア)円グラフや帯グラフの特徴とそれらの用い方を理解すること。
(イ)データの収集や適切な手法の選択など統計的な問題解決の方法を知ること。
イ:思考力,判断力,表現力等
(ア)目的に応じてデータを集めて分類整理し,データの特徴や傾向に着目し,問題を解決するために適切なグラフを選択して判断し,その結論について多面的に捉え考察すること。

「解説」より

D領域には、「円グラフや帯グラフの特徴とそれらの用い方を理解する」としか書かれていませんが、これらのグラフは百分率を用いて表現されることから百分率(%)について理解していないと正しく読み書きできません。その指導については、C領域に書かれています。

5年生C領域

(3)二つの数量の関係に関わる数学的活動を通して,次の事項を身に付ける
 ア:知識及び技能
  (ア)ある二つの数量の関係と別の二つの数量の関係とを比べる場合に割合を用いる場合があることを理解すること。

「解説」より抜粋

類似した学習に「単位当たりの量」というのがあり、速さを「1時間当たりに進んだ距離」に直して比較するとか、部屋の込み具合を「1畳あたり何人」に直して比較するという学習をします。(他には、1haあたりの収穫量の比較など)
これも重要な学習なのですが、「割合」とはやや質が異なります。

「割合」では、「全体と部分」の関係が重要で、「クラス全員のうち、風邪で欠席したのは何%か」のように、全体を100%とすると、部分は何%にあたるかを考えます。%だけでなく、小数で表したり(40%=0.4)、歩合で表したりする(45%=4割5分)ことも学習します。
うわー、こういうの苦手だったあ!と思う大人の皆さんもきっと多いと思います。はい、私も苦手でした。たぶん自分が習った時も、そして、教えていた時も。

度数分布表やクロス集計表の「相対度数」で使います

割合はどこで統計の学習に登場するかと言うと、度数分布表やクロス集計表で「相対度数」を求める時に使います。特にクロス集計表の「相対度数」で苦労した方(している方)も多いのではないでしょうか。行ごとの比率、列ごとの比率、全体に対する比率、と3種類ありましたからね。いずれきちんと取り上げることになると思います。
(5年生では、クロス集計表の相対度数を取り上げていません。はっきり言って、そんな余裕はないと思います。はい。)

帯グラフ・円グラフ

で、D領域、グラフの話に戻ります。帯グラフも円グラフも、グラフの形状が異なるだけで、役割は同じです。読み方・書き方も良く似ています。
どの部分が何%であるかを読み取ることは、慣れれば比較的容易ですが、2つのグラフを比較するとき、比率の差が量の差を反映していないことには注意が必要です。どういう意味かと言うと、

A高校では、全校生徒300人のうち、75%が進学した。
B高校では、全校生徒500人のうち、60%が進学した。

というときに、比率としてはA高校の方が高いのですが、進学した人数(実人数)ではB高校のほうが多くなります。
(A高校:300×0.75=225、B高校:500×0.6=300)
慣れれば何でもないのですが、習いたての小学生には難しい問題でしょう。

注意点として、とくに円グラフでは、半径で区切られた部分の面積の比較がしにくい点があります。帯グラフでは、どの部分も長方形ですが、円グラフではどの部分も扇形になり、しかも向きがばらばらです。どれが最も面積が(つまり比率が)大きいのか、正確な判断ができないことがあるのです。
また、グラフの下半分にある扇形の方が、上半分にある扇形よりも大きく見えやすい、という傾向(錯視?)もあるようです。
そして、3Dグラフにすると、誤った理解を与える可能性があることもよく知られています。たとえば下の2つは同じデータですが、右側のグラフでは、オレンジの部分が強調されて、最も大きく見えてしまいます。

同じデータなのに・・・

「統計的な問題解決」

5~6年生のD領域には、重要な用語が出てきます。それが「統計的な問題解決」です。これは何かというと、次のようなステップを踏んで問題解決をするといいよ、という指針のようなものです。

★「統計的な問題解決」
① 興味・関心や問題意識に基づき,統計的に解決可能な問題を設定すること(P:Problem)
② どのようなデータを,どのように集めるかについて計画を立てること(P:Plan)
③ データを集めて分類整理すること(D:Data)
④ 観点を決めてグラフや表に表し,データの特徴や傾向をつかむこと(A:Analysis)
⑤ 問題に対する結論をまとめるとともに,さらなる問題を見いだすこと(C:Conclusion)

英語の頭文字をとって、「PPDACサイクル」と表記したりします。よく耳にする「PDCA」と似ていて混乱しますね。ちなみに、放送大学の教科書「身近な統計 '18」でも、「PPDACサイクル」は取り上げられています。

「解説」では、学校で起きているけがについて、データを集めて、いろいろな観点から分析してみるといいよ、という活動案が紹介されています。が、総合的な学習の時間を活用するのでもないかぎり、算数の時間内でこうした活動をすることは、時間的にも難しいと思われます。

さて、5年生のD領域にはもう一つ「平均」についての指導があります。これについては、別の記事にしようと思います。

演習問題

ある日の面接授業(合計3クラス)に参加した学生に、所属コースを答えてもらい、棒グラフに表しました。グラフをもとに、各コースの学生の割合を求めてください。(割り切れない時は、適当な位で四捨五入してください。)