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エッセイ『3人を生きる』

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一卵性三つ子として生まれた著者が、三つ子として生まれる腹の中から20歳までの、三つ子の一人の視点から書かれた記録です。特殊な環境、「私」として存在することへの葛藤・焦り、三つ子と…
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2019年3月の記事一覧

3人を生きる-アナタの知らない三つ子の話-vol.21 自分らしくいられたわけ

 自分らしさとは何か。自分の存在意義、存在価値とは何か。  そんな見える気配のない答えを探し求めながらも、周りの目を気にしすぎて、本当の自分を出せないわけではなかった。比較的、ありのままの自分でいられているような気がする。  どう思われていようが、私は私と思うことができている。  何故、そう思うことができ、自分を堂々と見せることができているのか。  要因は複数あるだろうが、その一つには、やはり、三つ子が関わっているような気がする。  どんなに否定する人間がいても、べそをか

3人を生きる-アナタの知らない三つ子の話- vol.22 番外編:オヤジのハサミ

 小学校に入学すると共に、水泳の授業で髪が長いと大変だから、と背中まであった髪をばっさり切ってショートにした。  それ以来ずっと髪は短い。  三つ子ということもあり、色々とお金が掛かるため、小学5年生のときから、未経験ではあったが、父が三つ子の髪を切ってくれるようになった。 ――バリカンで。  頭の形に沿って切られた、いや、刈られた残骸たちを、小学生の私はキャッキャッと楽しそうに眺めながら、肌着とパンツ姿で、父にバリカンで髪を刈ってもらった。男子と同じくらい短かったが、三