第168回芥川賞受賞者インタビュー 佐藤厚志「暗くても救いがなくても書く」
受賞のことば 佐藤厚志
感染症が猛威をふるう中、病気で亡くなった親友の人生を全力で肯定するつもりで「荒地の家族」を書いた。
物語の風景は頭の中のフィルターを通って現れた土地であり、現実とイコールではない。「荒地」と表現した亘理の海辺も決して荒涼としているわけではない。だが、眺めていると自分の中にある「荒地」に気づく。
生は苦しい。その苦しみのひとつに近しい人の死がある。死はつらく、思い出すこともまたつらい。それでも傷口に触るように死を振り返る。共有した時間を繰り返し思い起こすことで痛みが鈍化していき、いつしかその記憶が癒やしになる。そう願う。小説を読んで、一人ひとり違った風景を受け取って欲しい。
——作家と書店員、二足の草鞋を履かれています。
ここから先は
5,361字
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju
文藝春秋digital
¥900 / 月
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…